軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「ふむ……魔人側に起こった問題か……」

「ああ、確証はないけどな」

「となると、全滅させてしまったのは早計だったか……」

魔人たちを全滅させて戻ってきたオーグにさっきの推測を話したら、真剣に考え込んでしまった。

「いや、そんなことないよ。俺が気付くのが遅かっただけ」

「しかしな……私は気付きもしなかった……」

「それはしょうがないだろ。戦闘中だったんだし」

オーグは最前線で魔人と戦っていた。

戦いながら考えごとをするなんて無理だろう。

俺は、回復要員であるシシリーの護衛と、なるべく皆が戦えるようにするため戦闘には積極的に参加しなかった。

別に魔人を舐めていたわけじゃなくて、皆が考えてきた対抗策が本当に有効なのかどうか確かめるためだ。

結果として、皆は十分に魔人と戦えることが分かったので、俺は一歩引いて戦局を見ていた。

だから、魔人たちの様子を客観的に見ることができていたんだ。

「だが、言われてみれば確かにおかしかった」

「えー? あたしたちの作戦が当たったんじゃないの?」

「魔人の様子がおかしいなんて、全く気付かなかった」

俺の話に理解を示すオーグと違って、アリスとリンは全く気付いていなかったらしい。

「僕も特訓の成果が出たと思ってたよ」

「自分もそうですよ」

「拙者もで御座る」

トニー、トール、ユリウスもアリスに同調した。

「っていうか、そんなことシンしか気付いてないんじゃないの?」

「マリアの言うとおりだよ。あの戦闘の中でそんなこと気にしてる暇なんてあるわけない。生き残るのに必死で……」

マリアの言葉をミランダが肯定する。

もしかしてと思ってユーリ、マーク、オリビアを見てみるとミランダの言葉に同調するように首を縦に振った。

皆、魔人の様子に気が付かなかったことを気にしている感じだな……。

「そんなに気にしなくていいよ。あくまでも俺個人の感想だし、なんの確証もないんだから」

オーグにも言った通り、命懸けの戦闘中に気付けという方が無理な話なので、気にする必要はないとフォローを入れた。

むしろ、魔人との戦闘中にそんなことを考えてたらやられてしまう可能性だってあったんだから、気付かなくて良かったと思うわ。

「とにかく、ここに現れた魔人は殲滅させたんだ、先へ進もう」

「そうだな、戦闘開始前に聞いた話では、後は幹部たちだけとのことだったからな」

「ああ。終局まであと一歩だ」

俺とオーグの言葉に全員が頷いた。

どうやらうまく頭を切り替えられたらしい。

こうして俺たちは、旧帝都……魔都の門を潜った。

「それにしても……本当になんの気配もしないな」

無人の魔都を進んでいると、オーグがポツリとそう呟いた。

「ああ、こんな大きい都市がこれだけガランとしてると……それだけで異様だな」

「ここって……住民は皆殺しにされたんでしょ……」

大国の首都という馬鹿デカイ都市が、シーンという音が聞こえそうなほど静まり返っている。

しかもその理由が、住民の皆殺しという事実。

それを考えるだけでも不気味な印象を受ける。

マリアも、この雰囲気に呑まれているようで……。

「うー、早くここから出た……」

そう言ったときだった。

ガタン!!

「うきゃああっ!!」

風に煽られた板が倒れて大きな音を立てた。

その音に驚いたのか、マリアが悲鳴をあげてしゃがみこんだ。

「へえ、マリアってこういうの苦手なのか?」

「そ、そそ、そうよ! 悪い!?」

「いや、ただちょっと意外だなって」

「言っとくけど、脅かしたりしたら本気で魔法をぶっ放すからね!! 効かないと分かっててもやるからね!!」

「わ、分かった分かった。っていうかこんなとこでそんなことしないから」

「本当でしょうね?」

「さすがに、この非常時にそんなことしないって。それに……」

ここに住んでいた数万……いや、この規模なら十数万か?

それだけの人が亡くなった場所でそんなことをするのは、不謹慎極まりない。

それくらいの分別はあるよ。

「シン、メッシーナ、おふざけはそこまでだ」

「べ、別にふざけてたわけじゃ……」

「来たぞ」

オーグに窘められて反論しようとしたマリアだったが、オーグの次の言葉でハッと気付き前方を見た。

視線の先は、廃墟になった建物の上。

そこにいたのは……。

「お前……ゼスト!」

あのとき、ゼストと呼ばれていた魔人だった。

それと、もう一人。

こっちは見たことない奴だ。

「とうとうここにまで辿り着いたか」

「あーあ、嫌になっちゃいますよ。此れまでの苦労が水の泡だ」

神妙そうなゼストに比べて、隣の奴は随分と軽薄そうだな。

「初めまして、アルティメット・マジシャンズの皆さん。もっとも、俺は初めましてじゃないけどな」

「なに?」

初めましてじゃないけど、初めまして?

それってどういう……。

「まさか!?」

「お、気付いたか? 今まで、お前たちのことはずっと見てたよ。全く気付いてなかったから楽な仕事だったぜ」

「お前が……」

俺は、ゼストの横でこちらを馬鹿にしたような表情で見ている魔人を睨んだ。

コイツは、俺たちのことをずっと見ていた。

ということは、裏で色々と暗躍していたのはコイツ。

つまり……。

「お前がエカテリーナさんを殺そうとした真犯人か!?」

「まあ、普通気付くよなあ。あーあ、上手くいくと思ったのに。なんだあれ? 長距離通信とか転移魔法とか、ズルいだろ」

「お前っ!」

「お? なに、怒った?」

「当たり前だ!!」

コイツ!!

人一人殺そうとしておいてなんて言い草だ!

「はっ、そんな怒んなよ。怒りたいのはむしろ……こっちの方なんだからよ!」

俺に企みを阻止されたことを思い出したからだろうか、魔人が急に怒り出した。

「落ち着けローレンス。もう過去のことだ。それよりも、今はシュトローム様の願いを叶えることの方が先決だ」

「……分かってますよ」

怒る魔人……ゼストがローレンスと呼んだからそれが名前なんだろう。

そいつをゼストが窘めた。

っていうか、ゼストの奴、今……。

「シュトロームの……願い?」

俺の声が聞こえたんだろう、ゼストが俺を見た。

その顔には……怒りや憎しみなどはなく、まるで全てを諦めたかのような表情が浮かんでいた。

その隣では、ローレンスも辛そうな顔をしている。

一体……なんだ?

「ふう、いかんな。少し喋り過ぎたようだ」

「ちょっと待て! シュトロームの願いとはなんだ!?」

話をやめようとするゼストに向かって、オーグが食い下がる。

だが……。

「言っただろう、喋り過ぎたと。もうこれ以上話すつもりなどない」

「そんなことが聞けるか!」

「ならば……」

ゼストはそう言うと、グッと腰を落とし……。

「力ずくで聞き出してみるがいい!!」

こちらに向かって突進してきた。

「オーグ! コイツは俺が相手をする! お前はローレンスを!」

「分かった!」

こうして、俺とゼスト。

ローレンスとオーグの戦いが始まった。