軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

推測してみました

「そ、そんな!? 自分の部下にそんな命令を出すなんて!」

シシリーが信じられないと叫んでいる。

「俺だって信じられないよ、けど……」

なんの策も持たされず戦場に送り出す。

そんなの、死んでこいって言ってるようなもんじゃないか。

それに、あの魔人の言葉……。

「アイツらも、その命令になんの疑いも持ってないみたいだった……」

死んでこいと言われて、喜んで死んでいく。

その姿はまるで……。

「狂信者……」

シシリーが、俺と全く同じ感想を抱いた。

「ああ、シュトロームのことをまるで神みたいに崇めていやがる」

俺とシシリーがそんな話をしている間も、魔人たちは次々とオーグたちに討伐されていく。

確かに、俺たちの目標は魔人の殲滅……一人残らず討伐することだけど、こんな特攻じみたことをしてくるとは思わなかった。

それに対して、俺は強烈な違和感を覚える。

魔人たちが、ここまでシュトロームのことを、妄信的に支持しているのならなおさらだ。

「シュトロームが、急に全面決戦を挑んできたこともそうだけど、どうにも今までの行動と違うような気がするんだよな」

「今までと違う、ですか?」

「ああ。前の魔人領攻略作戦のときに討伐した魔人は、シュトロームは帝国を滅ぼしたあと何もしようとしなかったって言ってた」

「そうでしたね」

「大国とまで言われていた帝国を、文字通り皆殺しにしたような奴が、そのあと何もしなかったっていうのも不思議だった」

「でも、それはシュトロームの目的が帝国の滅亡だったから。それが終わってしまって、目標がなくなったんじゃないかって、シン君と殿下が話してたじゃないですか」

「そうだよ。だから旧帝都……魔都周辺を取り囲んで監視して終わりだと思ってたけど……」

それまで、平民魔人たちの動向を静観していたと思われていた魔人たちが動いた。

エカテリーナさんを襲撃し、俺をオーグたちから引き離したあと、オーグたちを害そうとした。

そして、この決戦だ。

「なんで急にシュトロームは動いた? 目的がないならそのまま大人しくしていればいいじゃないか」

「それは……魔人だからとしか……」

シシリーは、以前シュトロームの宣言を耳にしている。

『この身体になってから、人間などどうでもいい存在に成り下がった』と。

確かにそう言っていた。

だから、魔人の思考は人間には理解できない。

そういうことを言ってるんだろう。

「今回も、世界を『征服』するのではなく『滅ぼす』と言っていましたし……急に人間を滅ぼしたくなったとしか……」

シシリーがそう考えることも、確かに理解できる。

けど……。

「そうかもしれないけど……俺はちょっと違うんじゃないかなって思ってる」

「それは?」

「シュトロームがそう思うのは……理解はできないけど納得はできる。けど、コイツらは?」

「あ……」

「シュトロームを神のように崇めているのは分かる。けど、これじゃあいずれ俺たちはシュトロームのもとにたどり着く。そんなことをコイツらが許すと思う?」

「……もっと必死に抵抗するはずですよね」

「シュトロームが魔人たちに死んでこいと言う。それは即ち、シュトロームを護る者が少なくなるってことだ」

「ええ」

「そんなことを、シュトロームを神と崇めるコイツらが許容するか?」

「それは……そうは思えません」

「それなのに、コイツらはシュトロームの命令に従っている。ってことは……」

具体的なことはなにも分からない。

けど、この推察はそう的外れじゃないと思っている。

それは……。

「もしかしたら、魔人たちの間でなにか大きな問題が起こったのかもしれない」

そうでないと、この状況が理解できない。

別に、俺たちの苦戦を願っていたわけじゃない。

けど、あまりに拍子抜け過ぎる。

とはいえ、あくまでも推測に過ぎないからどうにかして魔人から証言を引き出せないか?

「もう一度、魔人を取り押さえてみるか……」

「駄目ですよ」

考えが思わず口から出てしまった。

それを聞いたシシリーが即座に却下の返事をした。

さっき、魔人を取り押さえたことを怒っていたからなあ……。

でも、さっきも色々と推測できることを口走っていたし、なにか重要な証言が得られるかもしれない。

そう思ってシシリーを説得しようとしたのだけど……。

「いえ、シン君の話を聞いたら私も魔人を尋問するのは悪い方法じゃないって分かりますけど……」

シシリーはそう言うと、戦場となっている方を見た。

「もう数が……あ、今トニーさんが倒したので全滅ですね」

……。

しまった……もうちょっと早く行動するべきだった……。