軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第14話 馬鹿だったからです

「多くの敵将を討ち取った騎士の名前ですね」

いくつかの中隊長の執務室に書類を置いたあとに答えました。

それも教科書に書かれていることをです。

誰が、自分のことをベラベラと話すのですか。

それからいつまでついてくるのです。

「それがどうかしましたか?」

私はこの話を早く切り上げたく、結論を急かせます。

「ファングラン団長と君の父君はその部隊に所属していたのです」

はい、知っていますよ。

「皆が最近のファングラン団長がおかしいと言っていますが、私としてはその時に戻ったと感じているのですよ」

ノーコメントでお願いしたいですわ。

やはり、レクスの奇行は騎士団全体に広まっていると思っていいようです。

「何故、ファングラン公爵家の者が騎士団団長についているか知っていますか?」

「いいえ」

私は弟君と婚約者のご令嬢の件があったからだと思っています。そうではないのですか?

「その氷姫フェリランが馬鹿だったからです」

「は?」

私は思わず足を止めて振り返ります。

馬鹿って何ですか?

「確か英雄と名が残されている方ですよね?」

ええ、あの慰霊碑に何故か英雄フェリランと刻まれていて、イタすぎると思ったのです。

「そうですよ。だから、馬鹿だったのです。君の父君が所属していたフェリラン中隊は特攻部隊でした。激戦区に投入され戦線をひっくり返すのが役目です」

それは間違いありません。

上官に噛みついてしまったために、前線送りになり、成果をあげればこれ幸いと激戦区に投入される日々。

こっちは生き足掻く日々。何度死ぬかと思ったことか。

それで戦場の死神と呼ばれ、レクスのおもりを任されることになったのだ。

はっ。思考が昔に戻ってしまっています。

やはり、ここは私の前世と関わる者が多すぎます。

「その割には部隊の死傷者がほとんどないのです」

ええ、それは部下を鍛え上げましたからね。この技を身につけないと死ぬぞと脅して。

「上層部は最後の戦いも勝ち抜き、いつものように笑いながらフェリラン中隊が戻って来ると考えていたのです。戦後に英雄として祀り上げるためにですね」

はぁ。なんとなく話が見えてきました。そうですか。それでレクスが未だに騎士団に残っているのですか。

「ですが、蓋を開けてみれば中隊のほとんどの者が帰ってこなかったのです。あの馬鹿は放置しておけばいいアディフィール将軍の部隊を全滅させたのです。優先度が違うとわからなかったのですかね」

その言葉にカチンときました。

馬鹿はディレニールです。あれらを放置していいわけないでしょう!

「アディフィール将軍とは、帝国で英雄と謳われた軍人ですよね。その方は大隊を率い戦地を地獄に変えたと聞きましたが?」

「そのとおりだが、アディフィール将軍を討ち取れば烏合の衆。相手にするほどではない」

「英雄となれば、慕う者も多いでしょう。その者たちの戦意を全て引き受けたとみるべきです」

「それは、あの馬鹿と同じ意見ですね。わざわざアディフィール将軍の剣をこれみよがしに振るっていたと聞いていますから。ですが、それがなんだと言うのです」

「遺恨が残ればその分戦争の火種はくすぶり続けます」

「それをどうにかするのが、戦後の交渉です。いち中隊長が気にすることではありません」

「室長。廊下でまた若い子をいじめているんすかぁ?」

相変わらず話が合わないディレニールと言い合っていると、横から声をかけられました。

声をするほうに視線を向けると杖をついた中年の男性が立っています。

あら? この者は……

「ん? シエラメリーナのお嬢ちゃんじゃ……ぐはっ!」

書類を片手に持ち、左手を握り込み相手の脇腹に素早く打ち込みます。

シエラメリーナはここにはいません!

「ラドベルト子爵。お久しぶりです。嫌ですね。似ているからと言って姉と間違わないでくださいよ」

騎士伯だったラドベルトは戦争の功績が認められ、子爵になったと言っていた元部下です。ああ、前世というのをつけておきます。

ということは、何度かマルトレディル伯爵家に来ており、本来の私のことを知っている一人です。

確かに騎士団を辞めたとは聞いていませんでしたが、まさか顔を合わすことになるとは……父よ。事前に口止めぐらいしておいてください。こういうところが昔から抜けているのです。

「いや、この内臓をえぐるようなパンチはシエラメリーナ嬢の……」

「その足の魔工具って高そうですよね?」

私は右の脇腹を押さえながら魔装を展開しているラドベルトに笑みを浮かべながら脅します……間違えました。尋ねます。

「ちょっと待て! これは先日調整したばかりで……」

「そうですか〜」

ラドベルトの左足は義足です。おそらく最新の魔工具で作られていると思われるほど、ほとんど違和感がありません。

ただ、足音が歪なだけです。

その重そうな足音を響かせながらラドベルトは一歩後ろにさがります。

「今度、姉と間違うとその足を破壊しますから」

「わかったから、隊長を思い出させるような笑みを浮かべて殺気を放たないでくれ。でもシエラ……うぉ!」

「黙れ」