軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第112話 汚部屋が復活している!

私は腐海の汚部屋の中に立っている。

おかしい、数日前は床が見えていたはずです。

各部署に配る書類を配り終えた後、私は隣の敷地にある魔導師団の扉を叩いたのです。

今度は壊しませんでしたよ。

そして最下層にある魔導師団長の研究室に、足を運んだのです。

が! 汚部屋が復活しているのです。

イラッとします。

床に落ちている布の塊を引きずり、隣の部屋にある小部屋に突っ込み、壁から出ているレバーハンドルを捻ります。

天井から降り注ぐ高温の水。

「熱っ! 温度調節がされていない!」

と叫ぶ布から手が伸びてきて、壁のレバーハンドルを調節しています。

「フェリラン! 貴女には適温というものがあるのを知らないのですか!」

天井から降り注ぐシャワーにより、全身ずぶ濡れのグレンバーレルが身を起こして、私に文句を言ってきました。

水も滴るいい男と言いたいですが、腐海の住人です。

「熱湯消毒」

おそらく三日はシャワーはしていないだろうとは思われる汚物を、消毒したほうがいいと思いました。

「熱湯は出ません! しかし毎回熱い湯で起こされる私の身にもなって欲しいものです」

「……取り敢えず、綺麗にして出てきてください」

私はそう言って小部屋の扉を閉めました。

汚部屋を見て、ため息が出ます。

グレンバーレルを普通に起こしても、絶対に起きないのです。

結界を身の回りに張って、侵入を拒否されるのです。

なので、一番起きて動く方法が熱いシャワーで起こすだったのでした。

本当に何故、魔導師団長なんていう者をしているのでしょう。

部屋の空気を入れ替えをし、床に落ちている本を本棚に戻し、よくわからない草や瓶や紙類は風の魔法で部屋の端に追いやり、モップで床を綺麗にしているところに、汚部屋の住人が戻ってきました。

「あっ! 毎回言っていますが! 何故物を移動させるのですか!」

「毎回言いうが、これは人が住む部屋ではない」

「はぁ。それで今日は何ですか?」

グレンバーレルはため息を吐きながら、綺麗になったソファーに腰を下ろしました。

ため息を吐きたいのは私の方です。

私はモップで床の埃を取る作業に戻りながら言います。

「騎士団からの要請です。騎士団団長レクスイヴェールと共に、ゼイエラの亡霊の痕跡を消滅しつつ、敵と遭遇次第始末するようにとの命令です。因みに幹部の方々の満場一致で魔導師団長の名を挙げられていたので、他の魔導師に仕事を渡すのは無しです」

「無駄の極みです」

興味がないグレンバーレルが、そう返すことはわかりきっていました。

「しかしですね。魔導師団長という立場である以上、正式な要請には応えなければなりませんよね?」

私はローテーブルに一枚だけ残してある協力要請書を指し示します。

「これ、私でなくてもいいですよね?」

「だから! 騎士団の幹部の方々のご指名です」

「そもそも、騎士団団長がいれば事足りるでしょう。仮にもファングラン公爵家の嫡男だったのですから」

ん? このグレンバーレルが、個人を特定できているなんて凄く珍しいです。

私はモップを置いて、グレンバーレルの隣に膝をついて、尋ねます。

「何故、レクスをファングラン公爵家と認識できている?」

逃さないぞと言わんばかりに、金色の瞳と視線を合わせます。

「フェリラン、貴女は私を馬鹿にしているのですか?」

偉そうに言い返されましたが、グレンバーレルが名を覚えている自体が異常なのです。だったら……。

「魔導師団の副団長の名前は?」

「……クメイズ? クガル? クゲ?」

『ク』しか合っていません。

グレンバーレルが、今の騎士団団長がファングラン公爵家の者と認識していることは、それなりの何かがあったはずなのです。

そう、グレンバーレルが興味を持つ何かが。

「で、何故ファングラン公爵家の者と認識できた?」

「あれは、戦後処理がまだ終わっていない頃でしたか」

あ、話してくれるようです。

「当時のファングラン公爵が、フェリラン中隊の従騎士を呼び戻したという話が私の耳に入ってきた頃に、国王暗殺未遂事件があったのです」

「ん? 戦後処理中に?」

「そう、帝国の使者が犯人でしたが、当時同席を許されていたファングラン公爵家の嫡男が防いだという話でした」

あれ? この話の流れだと、レクスは後継ぎルートだったということですよね?

それが何故に騎士団に残ることになったのでしょうか?