軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第111話 すごく良い!

「団長。一昨日の夜に決められた、ラゼンの件はどういたしますか? 魔導師団長に取り次ぐのであれば、どうにかして動かしますが」

そう言えば手土産はどうしましょう? 言われていた水龍の鱗です。

私は今日の予定を確認しつつ、一昨日決定したことに対してどう動くのかレクスに尋ねました。

すると今までご機嫌だったレクスが、不満そうな表情を浮かべたのです。

「隊長も魔導師団長を頼るべきだとおっしゃるのですか?」

使えるのであれば、使えばいいと思いますよ。ただ、普通に使えないのがグレンバーレルなのです。

「隊長呼びになっていますよ。今回の問題は国をあげて早急に対処すべきだと思います。なので、魔導師団長を動かしたほうが、より確実だということです」

するとレクスは大きくため息を吐き出しました。

「わかりました。今回の襲撃は貴族たちの間でもかなり問題になっているのです。なのでいくつかのパーティーが中止になりました」

パーティーが中止ですか。確かに、あのような者たちが襲撃してくると、普通の者では対処不可能です。

よく国王陛下が騎士たちを集めて叙勲を行うと言ったものです。そうでなければ、ファングラン公爵家に集められていた貴族たちが殺され、王家の闇を担うファングラン公爵家の名は地に落ちていたでしょう。

ん? 確か 彩糸(さいし) のラグレリアがなにか言っていましたよね。

『そもそもファングラン公爵家が落ち目っていう情報が、デマだったってことだよね』と。

レクスは国王陛下が参加することが漏れたのではと言っていましたけど、ファングラン公爵家を狙ったというのであれば、かなりの大打撃になったと思われます。

国を支え王家を守護する一角が、最悪潰されていたのですから……って、どうもファングラン公爵家の役目をレクスが担っているように思えてしまったのですが……これはこの際確認してもいいでしょうか?

「早急に解決するべきと考えを改めます」

何をどう考えていたのか知りませんが、グレンバーレルに同行を依頼するでいいのですね。

「了解しました。書類を各部署に持っていくついでに交渉してきます。それと……個人的に気になったことを聞いてもよろしいでしょうか?」

「何でも聞いてください!」

食い気味に返答されましたが、これは答えてもらえるかわからないことですよね。

「ファングラン公爵家のことをレクスが指示を出していたようですが、あれは大丈夫だったのですか?」

あれとは情報を漏らしたであろう使用人のことや、双子の令嬢のことです。

特に双子の令嬢の件はレクスの一存で行うのは、かなり問題があるように思えるのです。

「大丈夫です」

……無表情で返答されてしまいました。これはやはり聞いてはいけないことだったのでしょう。

「あ、すみません。ファングラン公爵家の内情を聞いてしまって、出来上がった書類を持って行きますね」

失敗しました。今朝、女性騎士の方がおっしゃっていた、レクスはファングラン公爵家を避けていたという言葉を考慮すべきでした。

私は各部署に持っていく書類を両手に抱え、団長室を出ていこうとしました……が、レクスに阻まれてしまいました。

先ほどまで席についていましたよね?

「隊長のご心配もわかります」

「また、隊長呼びになっていますよ」

レクスは私に視線を合わせるように身をかがめてきました。そしてとてもつらそうな表情を私に向けてきたのです。

はぁ、別にこれ以上ファングラン公爵家のことは聞きませんよ。

「姉君のことでご心配なのは、重々承知しております」

……私ですけどね!

「隊長にも隊長の姉君にも迷惑をかけることはありません。一年後には全部始末いたしますので」

「ん? 一年後? 始末?」

何の話なのでしょう?

意味がわからず、首を傾げてしまいます。

「一年後、一緒に暮らしてくれるとおっしゃったではありませんか」

言いましたけど、それは未来の弟に託しました。……はっ! ちょっと待ってください! これは……。

「以前から家人たちからも言われてはいたのです。ですが、得る意味がなかったのですが……」

あのとき、レクスの婚約者になるなど誰が予想できたというのです。

「隊長と暮らしていくには、それ相応の立場が必要だと思いまして、公爵の地位を得ることにしました」

なんということをここで言うのですか! これは御家騒動というものではないのですか!

「この件に関しては、隊長にも隊長の姉君にも、ご迷惑をかけることはありません」

「あ……いや、そういうことではなくて……」

そんな簡単に公爵の地位が手に入るとは思えないのです。いいえ、あの国王陛下であれば、一言で『いいよ』と済ませそうです。

はっ! これはこれで問題ではないですか! それだと、私が公爵夫人という者になってしまうではないですか!

これは避けなければなりません。

「団長。姉は公爵夫人という者には向いていないと思います」

そうです。私は公爵夫人という立場など無理です。

するとレクスは右目を大きく開いて、驚いているのかと思うと、視線をオロオロさせて、片手で顔を覆ってしまいました。

え? 何なのです? この反応は?

「隊長が公爵夫人。すごく良い」

間違ってはいませんけど……どうして、そこを私に置き換えたのですか!