軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第107話 隊長の私への愛ですね

今回のパーティーの襲撃事件により、帝国の動向が表沙汰になり、戦場の死神の復活が確定となりました。

それにより、今後の方針を決めたことで、ここに集められた幹部たちは、事情聴取を受けるために解散となったのでした。

途中から副団長さんの意識が朦朧としていたようですが、大丈夫だったのでしょうか?

「あの? そろそろ解放して欲しいのですが?」

誰もいなくなったテーブル席で、私は未だにレクスに捕獲されているのです。

もう、クソジジイはいませんので、殴ることはしませんよ。

それにクソジジイの魔法でできた氷も解けてなくなり、暖房の効力が全開で効いてきたので少し暑いです。

しかし、部屋を温めるはずの魔道具の効力さえ無効化してしまうクソジジイは少し鍛えすぎだと思います。

あれ、ヤバいですわよね。

「隊長。すみませんでした」

何故かレクスから謝られてしまいましたわ。何かされた覚えがないのですが?

どちらかと言うと、私のほうがクソジジイに突っかかって部屋を極寒にしたことを責められてもおかしくないですのに。

あと、また隊長呼びになっています。

「それは何の謝罪でしょうか?」

「隊長がラドベルト輸送部隊長に回した用紙が何か理解できずに、将校アシュメディラを叱咤できず、大将校ハイラディを諌めることもできなかったことです」

……それ、レクスが謝罪することではありません。

私が勝手にやったことですからね。

そして、その用紙というものがテーブルの上にあります。

やはり、クソジジイの手によって大半が埋め尽くされていました。

「これはレクスにと用意したものなので、謝罪は必要ありません」

「え? 私にですか?」

テーブルの上にある用紙を手にとり、見上げながらレクスに差し出します。あの、できれば床に立って渡したかったのですが、レクスが解放してくれないので、仕方がありません。

「報告書には、書かれていないことがたくさんありますからね。こういうのが一番必要なのですよ」

私がドラゴンに噛まれたことも報告書には書いていませんからね。

そんなことを書けば、クソジジイから『ハイラディの血族の者がなんと情けない』とか言われてしまいそうで、イラッとした瞬間に殴っている自分が手に取るように想像できたからです。

「ありがとうございます。隊長」

で、私はいつ解放されるのでしょうか?そろそろ自分で椅子に座ってもいいと思うのです。

「隊長から愛されていて、とても嬉しいです」

「ん? 何がどうなって、そんな話になったのです?」

「まぁまぁ、マルトレディル様。ココアは如何ですか? まだまだ、事情聴取が回ってくるまでお時間がかかりそうですから、お作りいたしましょうか?」

私が首を傾げていると、エリアーナさんがココアを勧めてきました。

ここここココアなんて高級な飲み物、滅多に飲んだことなどありませんのに、飲めるのですか!

「飲みたいです!」

「かしこまりました」

ココアは前世と合わせても二回しか飲んだことがないのです。

チョコレートの風味と砂糖の甘さにミルクを足して、とても幸せな飲み物に変貌するのです。

あれ? 何の話をしていました?

あ、そうそう戦場の死神の特徴を書き出した紙ですね。

「それを読んだら処分してくださいね。戦場の死神の詳細は、閲覧できないものなので」

「それでは、これは問題になるのでは?」

「ふふふ、レクス。これは人の記憶という曖昧な産物の集合体だ。正式文章ではない」

何事も抜け穴という物があるのです。

元々は戦後の裁判に使う予定だったものですので、今はどのように管理されているかは知りません。

ですが、閲覧を希望すると痕跡が残りますからね。その後が面倒だったりするのです。

先ほどの場で、レクスと副団長のみが話についていけていけなかったように、帝国に対する対応は、この情報がなければ厳しいというのが現実でしょう。

「隊長の私への愛ですね」

「ん? いや、それをつかって団長として采配を……」

「マルトレディル様。ココアでございます」

「ふわぁ〜」

ココアが私の目の前に! 普通なら寝る前に飲むなど罪悪感にかられますが、今日は徹夜するつもりなので、いいですわよね!

一口飲むと、ほろ苦さと甘さが口の中に満たされ、ココアの香りが鼻を抜けていきます。

幸せですぅ。

こんな贅沢な物を普通に出してくれるファングラン公爵家って凄いですよね。

それとも今の時代は一般に飲めるようになっているのでしょうか?

「お気に召されたのであれば、ファングラン公爵夫人の貯蔵品をごっそりと持って帰りますがいかがでございますか?」

「え? 人の物を取るのは如何なものかと思います」

「ですが、輸入品なのですぐに手に入れるには、お持ちの方から譲り受けるのが一番いいのです」

はっ! もしかして、私が今飲んでいるのもファングラン公爵夫人が取り寄せたものではないのですか!

もう、飲んでしまったので返せませんわよ。