軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第108話 ファングラン公爵家の闇

「申し訳ございませんでした!」

初めて会う男性から謝罪されてしまいました。

それも魔導師団のローブを模した隊服を着た方なので、顔見知りでもないと思います。

「クレアラズ。謝罪はいい。先に報告を」

ん? クレアラズ?

私は壁際に控えているエリアーナさんを見ます。

確かエリアーナさんのお名前はエリアーナ・クレアラズでしたわよね?

もしかして、魔導師団の副団長でしたか。

頭を上げた男性は、ダークブラウンの髪をかきあげながらため息を吐いています。そして黒い瞳をレクスのほうに向けました。

「いいえ、今回の情報を得て、使えない団長を送り込んだものの、事が起きる前に戻ってくるなど、何も役に立たなかったことが悔やまれます。私の言い方が悪かったと深く反省しております」

使えない団長?

もしかしてグレンバーレルのことですか?

人に言われてパーティーに参加したのだろうということは理解していましたが、まさか賊の相手をさせるために副魔導師団長が送り込んだのですか。

まぁ、人脈構築とかいいますと、途中で面倒になるだろうということは予想できましたわね。

「あの御仁が、一癖も二癖もあるのは聞き及んでいる。それよりも、手引きをした者がいたのかどうかだ」

招待客の事情聴取を行っていたのは副魔導師団長だったのですか。そんな上の方が動いていたなんて、流石国王陛下が参加されたので、国を上げて対応を迫られているのでしょう。

「はい。公爵夫人付きの侍女と下働きの下男です」

「それで?」

「敵の術にかかる者など不要。即処分をいたしました」

これはもしかして、ファングラン公爵家の内部調査をしていたということですか!

「他にはいなかったと?」

「あの魔導師団長は人としては問題がありますが、魔法に関しては右に出るものはいません。信用できます」

「そうか。あとあの双子は必要か?」

双子? 公爵令嬢のことではないですよね?

使用人に双子がいるのでしょうか?

「と、申しますと?」

「ファングラン公爵家に泥をぬる者は必要ない。家人を使って、暗殺を企てる公私がわからない愚か者もだ」

「……では、事故死と病死ということで」

ふぉ! この場で、どこぞかの双子の死が決まってしまいました! どこの誰ですか!

ファングランの力を私怨に使うなんて……ん?

「あの? 先程の私がいた部屋に侵入してきた方の話ですか?」

「ソレは、エストのほうに任せていますので、安心してください」

エストをあれから見かけないのですが?

レクスが団長として動かないときは、侍従としての役目をこなしているエストがです。

これはこれで、恐ろしいのですけど。

「ソレに指示した者の話です」

あれ? この流れは、私が恨みを買っているということになりますわね。

私は王都のパーティーに参加したのは今回が初めてですわよ。

いったい誰に恨みなど……双子でファングラン公爵家と言えば、あの銀髪の双子の令嬢しかいないのですよね。

でも恨みというほどのことは私は何もしていません。

「あの? 私が話していたのはナファレデル伯爵令嬢なので、殺意をもたれる理由はないと思うのですが」

私が意味がわからないと首を傾げていると、エリアーナさんが声をかけてきました。

「失礼します。マルトレディル様」

神妙な面持ちのエリアーナさんが、一歩前に出て軽く頭を下げてきました。

「以前から、コーネリアヘルデラ様の傲慢さは、他のご令嬢方から恐れられておりました。しかし、マルトレディル様は意に介すことなく対応されたことに、ご不満だったのだと推察されます」

「あの? その前に、話していい許可をいただけなかったのですが?」

「そのようなところもです」

……全く理解できませんわ。

私より高位貴族のご令嬢に、声をかけることは不敬だと言われてしまいますから、話しかけませんでした。

なのに、それが不満だと言われると、どうすれば良かったのでしょうか?

「なんといいますか。無礼を働いた者をメアトリーゼアリス様が責めて、取り巻きにされるというのを行っておられたようで」

うーん? エリアーナさんの説明には何か違和感が……。

これは一応ファングラン公爵家のご令嬢なので、悪く言わないでおこうということなのでしょうか。

「それは、わざと相手の令嬢が悪いということにして、逆らうことができないご令嬢をいいように扱っていたということですか?」

それで自分たちの意に従わない令嬢を暗殺? え? これヤバくないですか?

「あの? そんなことで、暗殺された令嬢がいるとか言いませんわよね」

あ、部屋の中がシーンと静まり返ってしまいました。

「エリアーナ。調べろ」

「かしこまりました。しかし、私が行うと予後に問題が生じますが?」

「そのような者は、ファングラン公爵家に必要ない」

「承知いたしました」

毒ですか!

エリアーナさんが研究していたという毒を使うのですか!

私はこのあと何があったのかは知りません。

後日、パーティーの事件は招待客には何も被害はなかった。

しかし、逃げる賊に遭遇したコーネリアヘルデラ公爵令嬢が大怪我を負わされ、治療のかいもなく亡くなった。それに気を病んでしまったメアトリーゼアリス公爵令嬢が、病死してしまったということを風の噂で聞いたのでした。

ファングラン公爵家、怖いですわ!