作品タイトル不明
態度急変
「嬉しい。今まで土魔法なんて……知られたくなくて、仲間なんていなかったから……。こんな風にも土魔法は使えるよって話ができるなんて……」
「……ミサさん……」
私は探索者になったばかりだから、今までの土属性の人たちを取り巻く状況をネットでしか知らない。
ネットで得た情報以上に、差別的な扱いを受けていたのだろうか?
でも、魔法がダンジョンで役に立つレベルで使える人って、百人に1人いるかいないかじゃなかった?そもそも魔法が使えるだけでも珍しい部類だと山本さんが言っていたよね?
「って、ごめんなさいっ!よく見たら、水で濡れているし、草とかゴミとかもついてるし、それに、髪の毛もぼさぼさっ」
あー。バリアの実験したやらだ。
志崎さんが申し訳なさそうな顔をする。
「もう、お兄ちゃんってば気がきかないんだからっ!早く部屋に連れて行ってあげて!あ、着替えも贈ってよ!」
「え、あの、ツナギをもらったので、服は汚れてないですし……」
慌てて手を振る。
「……お前が魔石を数えろって言ったんだろう。数えたぞ、ほら658個」
ミサさんの目が輝いた。
「そんなに?」
本当にたくさんだ。買取価格って1個100円だっけ。658個で……。
ろ、六万っ!
ほんの30分ほどで……。志崎さんとミサさん二人でだけど、頭割りしても一人3万円以上になる!
すごい!
私、勿体ないことしていたのでは?
でも、一人ではどうにもできないし……。1分で穴の中に入って拾い集めるなんてとてもできない。
それに、まるで湖みたいにスライムが大量にいればできるけれど、いつものダンジョンのように、足の踏み場があるくらいまばらにしかいなくて、しかもイモ洗い状態で探索者がいたら、スライムの取り合いだよね。
そんなにうまい話はないか。
「はい、では買取。658個のスライム魔石の代金、どうぞ」
ミサさんが職員の仕事に戻って、志崎さんにお金を全額渡した。
「うん?ミサのお金だろ?スライムを倒したのはミサだし」
「お兄ちゃんが拾ったんだから、お兄ちゃんの分でもある」
志崎さんが頭をかいた。
「だったら半分だろ?まぁ俺はいいから、お前が全部もらっておけ」
受け取りを拒否しようとしたところで、ミサさんが目を吊り上げた。
「お兄ちゃんにとってははした金かもしれないけど」
うっ。6万をはした金……。私にはかなりの大金だよ。
でも志崎さんからしたらはした金なのかな……。
「とにかく、その半分は私のお金、半分はお兄ちゃんのお金、分かった?」
さすがに志崎さんもそれ以上は断れないようで素直に頷いた。
「じゃあ、半分渡す」
志崎さんがお金を数えようとする手をミサさんがとめた。
「そのお金で、有希お姉さまに上のレストランでごちそうしてあげて!」
「へ?え?お姉さま?いや、ごちそうになるわけには……」
「土魔法の可能性を教えてくれた感謝の気持ちです!」
ミサさんがぐっとこぶしを握った。
「それに、はっきり言って、私、とっても態度が悪かったですよね……そのお詫びです」
「いえ、それは志崎さんを思ってのことですよね?別に怒ってないですし……」
というか、妹さんとは知らず、志崎さんのファンかなと勘違いして、こんな子に執着されたら志崎さんも大変そうだなぁなんて失礼なことをちょっと思ったくらいだし……。