軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08妖精たちが使役されてた過去を捨てたいんだって、よかったね元お姉様

町人から罵倒を受けたり、家族からなじられたりしているのは見たけど、あれくらい余裕で受け取っておいて。また三度目の転生をするところだったのだから。

「そ、んな、ことは」

「皆で仲良く土地を分けたり、大国を自分のものにしたいのなら、無くなってからにしてって言ってるだけなんだけど?難しいことじゃないよね?」

「!」

この国に来て嬉々として獣人国の王を国際的な大問題を引き起こしたと、王座から引き摺り下ろしたい大義名分を現在ぶん回す人たちの思惑を言い当てたけど、本気で興味もない。

精霊や妖精のこととはなんの擦りもしない、この世界の一部のこと。生命や営みには影響もないからね。

しかし、精霊の愛し子の気持ちをマイナスに持たれるのは嫌なのか違います!と否定してくる。

「なら、そのまま、据え置きってことでいいね」

「わ、かり、ました」

凄く渋々承認した。この人の許可なんて元々いらないけど。そのついででもなく本命のところへ向かう。彼らがいる部屋へどーんと入っていく。見張りの兵がいるけど獣王には少なすぎる。

「妹殺しと冤罪作りの名人に会いに来ましたよ」

「あ……」

「ノンファン」

ガオンとメーライはぐったりした様子でこちらを見遣る。萎れた花みたいに元気がない。精神的に日々磨耗してるらしいから、元気になる魔法をかけておく。

各地にいる妖精の愛し子は愛されていたりして幸せそうだけど、この人は今現在妖精の愛し子でもなんでもない獣王のツガイなだけだ。

魔法をかけたから健康的になったけど、目からはハイライトが消えている。この目は変化しないだろうから無視しておこう。

ノンファンに目を向ける二人は、何をしにきたのだと言う顔を向けている。二人が咽び泣くところを見にきただけなのでお構いなく。

「二人は結婚することになったらしいから伝えにきた」

「「え」」

本来ならば嬉しいことなのだが、絶望的な背景のせいで最悪なイベントになっていた。二人は震え出す。グスグスとメーライが泣き出した。マリッジブルーかな。

「おめでとうおねー様。お幸せにね。番が獣王様、あらやだ違ったわ。奴隷のわたくしの主人様が花婿なんて羨ましくて微笑ましいですこと」

棒読みで、心にもないことをスラスラ言った。ガオンは泣く姉に抱きしめたいが抱きしめられない、みたいな顔をして拳をキツく握りしめる。

こちらを見て土下座スタイルを披露しようとするがブラーシュのしっぽに弾かれて、部屋の隅に激突した。

「ごはっ!?」

「あ、ガオンっ」

「あらあら、ブラーシュさんいけないわよ〜おねえさまのお婿さんが怪我をしたら式に出られませんことよ?」

ちっとも心配してないし、大怪我しても出てもらうので茶番をやる。

「相手が思ってもないことをしようとしたから、やめさせただけだ」

謝る気もなかったのに精霊の愛し子というだけで即行動に移そうとした、ことなかれ男を当て摩る。ノンファンが本当の年齢より幼いと見抜けなかったのは、ガオンという男が人ではなく獣王だったからで、獣人だからだ。

彼らは見た目より実年齢が上だったり下に見えることは、珍しくない。だから、王も側近も見逃してしまった。いや、あのですね?

姉のメーライぐらいは栄養状態に気づこうよ。実年齢を知らなかったから?

断罪させるんなら、そこも詳しく見ておくべきだった。十二の女の子を連座させる前に。

まさしく、姉のメーライは傾国の悪女に相応しい頭の具合。演者に不足なし。ノンファンは結婚できる二人に早めの指輪を指に装着させて、拍手をする。バルコニーに出させて拡張魔法で二人は夫婦になりました。今日から王と王妃になりましたと宣言してあげた。突然の拡張魔法に城や町の人たちは驚いたけれど、怒りを城の真上に向ける人数が増えるだけ。

今この国は、亡国に向かってひたすら歩みを進めているのだ。

「ふざけるなー!」

「自分たちだけ良ければそれでいいのか!?」

「王座を降りろ!」

「家族殺しの王妃などいらない!」

国民から続々と声が集まる。今の大国は人々の怨嗟で火の海。

黒い輪っかの隷属魔法により夫婦はここから動けないし、国民は本音しか投げつけないように固定しておく。

ブラーシュが新聞紙を見てどうするのかと聞いてきた時は、そろそろ面倒になって飽きてきていたのでまとめて焼き払っておくのもいいかなと、行動に移したのは正解だ。

というより、ブラーシュがこいつ飽きてきたなと察して声をかけたに違いない。

流石は幼馴染兼側近である。やりやすくて助かるよ。本気の本音である。

ブラーシュはブラックドラゴン化を解いており、こちらの隣に並んでいる。笑顔が輝いていて、凄く満足そうだ。二人が壊れる前に己の手で裁きを明確に下せたことが嬉しいのだろう。

「うう、ううう、ううう!」

二人は国民から余すことなく罵倒されて、二人揃って震えている。流石は夫婦だ。共同作業に打ち震えているらしい。仲良いねえ。

姉メーライなんてぼろぼろと瞳から大粒の涙を流している。番と結婚できて感無量かな。

「メーライ」

ガオンが歯を食いしばってメーライに声をかけるが、外の雑音が大き過ぎて伝えられない。

「うう、なんで、なんでこんな目に?何も悪いことはしてないのにっ」

え?

「悪いことしてないんだって」

「夜会で両親を断罪するところまでは悪くはないかもな。お前の名前を名指しした瞬間に被害者から加害者になったんだ、自業自得だろ」

「何もしてないのに連座されるっていうのなら、無実の私を大怪我させた王様の番も連座ってことになるんだよ?わかるかなぁ?」

自分も同じ選択肢のターンを考えていたので、強く頷く。あの時、ガオンの側近が近寄って手を引っ張らなかったら……怪我をさせなかったら。ノンファンをしっかり被害者として同じように保護していたら……引き返すチャンスは何度もあった。

「ひっく、ひぐっ!ううっ、なんでっ、妖精たちもいなくなるし!……いたっ!」

ばちん、とメーライの手首が赤く腫れる。妖精たちが怒りを向けたのだ。まるで友達のように言うなと言っている。ノンファンには彼らの気持ちが理解できるので、要約して何もわかってない姉に教えてあげた。そんなんだから足元を掬われるんだ。

「妖精たちが使役されてた過去を捨てたいんだって」

「え、そ、そんなことないわ?彼らはなんでもしてくれたもの」

本当に、なんでもしたんだろう。今更なにもしてくれなくなったのが認められないっぽい。

「嫌いだってさ。いや、恨んでるって。私を殺そうとして許せないって。愛し子って名乗られたくない、名乗るなって言ってる」

姉は唇をぷるぷるさせて、愛され妖精の愛し子と言われてもおかしくなかった容姿を縮こませた。先ほどのばちん、が余程ショックだったみたい。

妖精からの攻撃は最後の心の砦を崩壊させるに事足りた。

その様子にガオンも、本気で妖精が姉へ怒りを向けていることを察して力無く項垂れる。今察したところで彼らはやりすぎた。やるならば両親の断罪で満足しておけば滅亡しなかったのに。

ノンファンにまで手を伸ばすから。愚か者と皆に知られて良かったのではないか?

今のうちに知れたから、国が二つ無くなる程度に済んだ。

「ううっ。ご、ごめ、んなさっ」

「す、すみませんっ。すみません!」

王族の夫婦が謝り出すが、何に対して?誰に対して?

誰に対して謝っているのかはわからないけれど、そうして自画自賛しておけばいい。こういうのって、自己満足だから。だからこそ自画自賛と断じた。

平謝りし始めた二人を見てからノンファンとブラーシュは別の国に移動した。

魔法を使えば辛気臭い国から、あれよあれよと離れてカラフルな国へ視界が移る。その国は現在祭り中だ。大陸ごとに違うから、あそこの騒動はまだ届いてない。ノンファンも無関係なこの土地へは魔法で知らせたりしてない。

今後、じわじわ解体されていく国は見なくても少しずつ削れていくのだろう。二人はなくなるものに固執などしない。やがて大国獣人国の名は、聞かなくなっていずれ風化していくだろう。

「八段アイスと世界の竜脈を整えるのを目指そうかな」

「アイスが先に目標に入るのか?」

「アイス食べたくないの?好きでしょ?ね?」

揶揄うように言うとブラーシュはやれやれ、といつもの顔を浮かべて仕方ないなとついてきてくれる。一度生まれ変わってよかった。

幼馴染のよそよそしさはなくなるし、お腹が空くということもなくなるし。いい事づくめ。

アイス屋を見つめて早歩きになる同族を今度こそ失わないようにと、すぐ後ろについてくる男の気配が揃うと嬉しさに人間として年相応の笑顔を天は緩やかに見下ろした。