軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無自覚

コンペまで俺達はスサノオとツクヨミ改のデータ収集と、そして新たなデータ取りに奔走する事になった。

主に対人戦や対インベーダー戦を考えたシミュレーターを用意して……まぁ俺の仕事だったんだが、それで模擬戦やらを繰り返した。

当然パイロット科の連中も駆り出しての話だ。

コンペ落ちしたとしても戦闘機の訓練は可変機を使う際に役に立つので教官達も黙認していた、というより可変機構があるのに使わないのはもったいないという理由で積極的に人員を送り込んできてたな。

ある意味ではこの辺の試験が授業の一環になっていた節もある。

たまにいるんだ、戦闘機形態の方が上手い奴。

逆にギアでの戦闘に特化している奴、例を挙げるならクリスがまさにそれだ。

あいつの機体は可変機構をオミットする事で近接戦特化に仕上げつつ、一般的な武装も積み込める近接向き汎用機と言った感じの仕上がりになっている。

それでもパワーだけで言うなら炉を2個積んでるのと同じツクヨミ改には負けるが、ためしに乗らせてもらった所随分と素直な機体だというのが俺の印象だ。

むしろ良平の機体の方がピーキーだな、可変機構は逃げるための装備と割り切って普段はギア形態で重装甲。

離脱時はそれらをパージして逃げ一徹、狙撃特化の繊細な使用になっていたので俺じゃ乗りこなせなかった。

というか戦い方がそもそも違うから、クリスの機体の方が性に合ってるってところだな。

言うなれば俺は器用貧乏だから完全特化型はきつい。

「しかし、随分と人が増えたもんだ」

「そうね、けど悪い事じゃないでしょ。学生のうちに軍のコンペに参加できて、上手くすればデータ取りのメンバーに名前が載る、上の覚えもよくなるわ」

「だな。特にメカニック科の連中は実際に組み上げたわけだから軍も即戦力で欲しがるんじゃないか?」

「それは流石にどうかしらね。いきなり実戦を経験しただけで未熟なところも多いでしょ。言うなればツクヨミ改とスサノオ専用にチューンされた整備士よ?」

「あぁ、そういう意味じゃ従来の機体の整備は慣れてないか……逆に言えばコンペで勝ち抜いたら即戦力で引っ張られる可能性は残り続けてるわけだ」

「まぁ、それは否定しないわ。少なくとも知識はあるわけだし、実機にも触れている。プロや軍人ほどじゃないにせよ多少なりとも触れるなら現場での授業なんかも増えるかもしれないわね」

「対してパイロット科はすぐにはどうこうならないだろうから、まぁ時間ができるな」

メカニック科は即戦力として引っ張られる可能性はあってもパイロットはどうあがいても命がけだ。

後方勤務なんてのはそれこそ将官になったところでなかなか難しい。

最低でも少将、中将ラインから前線から離れる機会が増える程度か。

そんなところに学生を放り込んでも邪魔になるだけだろうしな。

「なんにせよコンペの結果待ちだな。俺達は自由な時間ができたわけだし」

「え?」

「え?」

クリスの疑問符に俺も疑問符で返す。

「いやいや、設計にシステムの書き換え、テストパイロットもしているあんたがコンペに出なくてどうするのよ」

「ツクヨミ改はそうでもスサノオは汎用機目指してるんだから俺である必要はないだろ。というか2機同時とか不可能だわ」

「それは流石に軍の人がやると思うけど、ツクヨミ改に関してはあんた用にチューンナップされているんだから他に誰が乗るのよ。少なくとも私は空中ドッキングとか無理だからね」

「……先輩とかは?」

「むしろ既存の機体に慣れ過ぎてて無理でしょ。軍の人達も同じ。あそこまでスムーズにできるのはあんただけよ」

「そんなに難しい操作じゃないんだが……」

「できるできないで言うなら、できるわよ? ただあそこまで動き回っている状態でのドッキングは無理、想定内の仕様でもできない物はできないわ」

まじかぁ……いや、ツクヨミ改もちょっと手を加えてギアからバックパックの操作できるようにしたんだよ。

運ぶ人員がいない時の事を考えての改造だったんだけど、戦闘機形態から変形してバックパックだけ外して新しいのに付け替える。

回避運動もしながらってのをやってたわけだが、あれそんなに難しい事じゃないんだよな。

ジャイロやバランサーは外してあるが、オートパイロットの範疇でどうにかなるものだし。

ちょっと衝撃がでかいだけでさ。

「そんなにきついか?」

「先輩が試して気を失ったの忘れた?」

「あったなぁ……あの時は大変だった」

オートパイロットが働いてたおかげで即墜落にはならなかったが、俺と教官で抱えて降りたんだった。

学校で使っている汎用機で止めるのは少し苦労したし、もともとのスペックが高いからリミッター解除して推力あげたうえで止めてから降ろしたんだ。

最悪の場合空中でコックピット乗り換えも視野に入れてたけど、そこまでじゃなくて済んだから大した事故じゃなかったけど……確か先輩は首痛めたとか言ってたな。

一応Sクラスの上位から見繕ってもらった人材だったんだが。

「あの人、ギアの対抗戦で結構いい成績残しているのよ。軍の評価も高くて佐官スタートじゃないかって言われているくらいには」

「あの程度、中型のインベーダーの突進よりはマシだろ」

「そこで中型が基準になってるのがダメなの。普通に考えてみなさい、こんな安全圏でそんな衝撃受けること普通ないわよ。あったとしたらトラックと正面衝突くらいね」

「人間って脆いなぁ……」

「なにを今更……だから拡張機能としてのギアが必要なんでしょ」

確かに……ギアって極論人間の補助機構でしかないからな。

義手義足の延長線にあるようなものだ。

中にはより精密な動きを再現するために腕を義手に交換して、機体と直接リンクさせる人もいるって聞くが……日本じゃその手の話は聞かないな。

倫理的な物もあるのかもしれないけど、それだけ日本のギアは性能がいいという事にしておこう。

じゃないと俺も手足切られそうだし。