軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コンペ

そうこうしている間にコンペの日がやってきた。

合計20機、軍やそいつら御用達の企業がこぞって参戦する次期量産機のコンペティション。

要するにここでいい成績と好感触を得られたら次期量産機やらエース専用機としてまともに売れるようになる。

まともじゃない売り方もあるわけだが、そういうのは基本的に裏社会か自社の護衛のどっちかに振り分けられる。

たまに物好きな軍人が専用にと注文する事はあるが、そんなある種の戦場に俺達は二機も機体を持ち込んだ。

それも名義は学生として、おやっさん曰く最初のインパクトが重要だという話だ。

ただインパクトはあっても信用性に欠ける、だから後ろ盾としておやっさんと准将の名前が並んでいる。

今まさに貴賓席から手を振っているお歴々の一人だ。

お、目が合った。

「どうよ、緊張してる?」

「いや、ぶっちゃけ他のコンペ機体見てがっかりしてる。第七世代の模造品だ。それもどいつもこいつも装甲削ったり、動力パイプを取り換えてコストダウンはかっただけのものだ。面白みがない」

「可愛くない事言うわねぇ」

クリスがウザがらみしてくるのは理由がある。

こいつこそが緊張しているのだ。

なにせ今回のパイロットだからな。

流石にツクヨミ改の方は俺が乗る事になったが、スサノオは学生でも扱えるという事を示すためにちょっと名の知れた一族の人間程度でしかないクリスが適任となった。

ついでに量産性とかも見せるために良平の機体もあるが、そっちは乱入に近い形で見せる事になっている。

こう、ブルーインパルスみたいにパフォーマンスを見せてから変形合体してギアとして着陸する手はずだ。

もちろん軍の許可を取って、コンペを楽しませるための物として登録しているから一部の人間は知っている。

同じ機体を基にどこまで違いを見せられるかという勝負でもあるからな。

まぁ結果は見るまでもなくスサノオに票が傾くだろう。

間違ってもツクヨミ改にはいかない、行くとしてもそれはバックパックにだ。

「言ってくれるじゃねえか小僧」

「……あんたは?」

「重道重工の重道義春、次期社長だ」

「そうか、あんたの所の機体はあれか?」

ドックに置かれている機体の一つを指さす。

確か重道重工は重装甲が売りだったな。

装甲の厚さはもちろんの事、シールドと盾でさらに頑丈になる機体だ。

鈍足というほどじゃないが、比較すれば足の遅い機体なので俺好みじゃないが良平は狙撃手として高く評価していた。

たしか戦艦の爆発に巻き込まれても無事な機体、が売りだったな。

「おうよ、重道重工初の格闘機だ! その重量を生かしつつパワーを上げて敵をひき潰す! 旧来の狙撃分野の繊細さもそのままに近接戦闘もできるようにした新型だ! どうだ、かっこいいだろ」

「そうだなぁ……足回りの遅さがネックだったがそれが解消されたなら嬉しい限りだ。ただ小回りの問題がありそうだな」

装甲でがちがちに固められた機体を見る限り、メインの戦い方は隊列を組んで射撃しながらの突撃だろうか。

軍が好みそうな機体ではあるが、機体的にも作戦的にも小回りが利かないように見える。

その辺は好き嫌いがあるから俺が口出しする分野じゃないけど。

「あー、確かにその通りだ。だが最前線で戦うならあのくらいの硬さは欲しい。誰もがエース様みたくビームの回避ができるわけじゃないからな」

「それはそうだ。ってことは数で勝負か? その割には値段も問題になりそうだぞ」

「ふふふっ、聞いて驚け! なんと従来以上の装甲性能を誇りつつ値段は2割引きだ!」

「赤字にならないのか? それとも新素材の開発に成功したか?」

「新素材だけじゃねえ、一部のシステムを簡略化させたことでソフトウェアの面でも値段を抑えられるようにした! そういうお前の方は……何か変わった機体だな。片方は戦闘機形態のままか?」

「その辺は見てからのお楽しみってな。度肝抜いてやるよ」

「はははははっ! そいつは楽しみだ! 気に入った! お前名前は!」

「雨傘幸助、学園のパイロット科所属だ」

「学生か! 若いとは思っていたが……そっちは恋人か?」

おい、恐ろしい事を言わないでくれ……。

視線が背中に突き刺さってる。

「ガールフレンドを言葉通りに和訳した、まさに女友達だ。今後戦友になるかどうかは進路次第ってところだな。恋人は……美人で気立てもいいけど、俺じゃ釣り合わないな」

とりあえず褒め殺しにしておく。

最近分かった事だが、クリスはおだてると木に登るくらいちょろい。

何度か訓練を一緒にしたけどダメな部分を指摘するより褒めた方が伸びる。

指摘に関しても「こうした方が上手くいくんじゃないか」って提案風に言うと結構素直に聞いてくれる。

教官とかが頭ごなしにダメ出ししてくるとちょっと反抗しようとする節があるけど、そこは理性で押さえてるんだよな。

ただ渋々やるのと、本人に改善の意志があってやるのじゃ大違いってだけで。

「なぁ義春さん。他に面白そうな機体持ってきた奴っているか?」

「あぁ? ダントツで面白そうなもん持ってきてるのに何言ってやがる」

「いや、素人目だと第七世代機の互換にしか見えなくてな。プロの視点が欲しい」

「そういう事なら教えてやるが……そうだな、あっちのクリスタルメカニック社の機体はなかなか面白い。採算度外視でビームに対する耐久性を極限と言っていいラインまでぶち上げてる。アレを抜くのは戦艦の主砲でも難しいな」

「そんなにか」

指差された機体は銀色に光っているが、そんな装甲があるのか……いや、採算度外視って言うだけあって高いんだろうけど、次期量産機じゃなくエース用の専用機狙いか。

「それからエレクトロニクスブレード社は機体はそのままに追加装備のブレードの類をいくつか用意してきた。あそこの作る近接装備はどれも高性能だが癖が強かったからな。それを伸ばしたのか、あるいは汎用性を高めたのかわからんが見ごたえはあるだろうな」

「エレクトロニクスブレードか、あそこの装備は俺も結構好きだ」

際物扱いされているけど、使ってみると案外わかりやすいんだよな。

でかい剣でぶった切るとか、刀みたいなのでなで斬りにするとか。

ちなみにクリスが愛用している機体のナイフなんかを作ってる会社だったはずだ。

講習はブレードでどんな装甲でもぶった切るのが売りだったはず。

「他にもテックランチャーの新型はハリネズミみたいに銃口くっつけてるし、スピードフライトはまた速度重視の機体を持ってきた。どこもかしこも自社の強みを生かしている。そういう意味じゃ前例も無けりゃ見た目は普通の機体持ってきてるお前らの方がよくわからねえな」

「そいつは見てからのお楽しみだ。まずは機体のお披露目をしてから、性能試験だろ」

「そうだな、自前で用意したテストパイロットと、軍の人間がそれぞれ乗ってみせて評価する形式だ。最後に予算とかの問題を考えながら必要なら対戦形式になる」

「どうなると思う」

「さぁな。正直親父の言うとおりに作った機体だ、悪い評価は受けねえと思うが未知数なお前らを前にすると自信が無くなる」

「ははっ、じゃあ俺達がコンペで勝ちあがったら飯でも奢ってくれよ、次期社長?」

「……うちの経営もそんなにいい方じゃねえんだけど?」

「俺より稼いでるだろ」

「そりゃ学生よりはな」

「この近くにうまいラーメン屋があるらしい。ビールもあるってよ」

「そりゃあいいお誘いだ。負けた方が勝った方に奢り、どうだ」

「学生からとるのかよ。いいけどな」

ゴッと拳を合わせる。

この人はいい人だ、わかりやすい。

腹の奥に抱えてる物はあっても、それは野心の類だ。

周りを蹴落とすタイプのものじゃなくて自分で成り上がろうと考えているタイプ。

直感だけどね、そういうのは伸びるか折れるかだ。

どっちになるにせよ、コネは持っておいて損はないからな。