軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔境

「差し入れ持ってきたわ……よ?」

「おう、クリス。そこ置いておいてくれ。ありがとな」

エナドリを啜りながら紙に線を書き加えていく。

結局あの後シフトはプロのメカニックと学生が相談して決める事になり、俺とおやっさんは冷静になってから俺が書いた設計図をおやっさんの手直し入れる事で話は落ち着いた。

ようは素人作品にしては悪くないが、あまりにも夢見すぎな内容なので手を加えるという話だ。

そして今日で三日目、明日からはメカニックの皆さんが俺達の設計図通りに作っていく事になるのだが……まぁ山場だな。

あと半分くらい残ってる。

つーか手足しかできてないからコックピット周りやメインカメラの頭なんかはまるで想像できていないし、何より一番重要なバックパックの接続部の強度設定については何もアイデアがない。

ゲームで散々ギアをいじくり倒したとはいえ、単独で完結している機体ばかりだ。

こんなトンチキな機体の設計なんて初めてだからな。

難航もする。

せいぜい普段格闘戦だの移動だので使う手足はどうにかなったが、それ以外が本当にもう……。

「すごい隈よ?」

「あー、徹夜三日目だからな。佳境になればもっと凄いぞ」

「……インベーダーよりも健康で死ぬんじゃない?」

「そりゃ幸せな末路だ」

「ちょっと設計図みせてみなさい。何かアドバイスできるかもしれないから」

「横から勝手に覗き込め」

俺の言葉にクリスが横から設計図を覗き見ている。

見られて困るほどのことは無いのだが……逆に言えばアドバイスが貰えるとも思えない。

クリスは完全にパイロット一筋の人間だからな。

「え、なにこの手足の配線の細かさと数……」

「全部マニュアル操縦だ、このくらい敏感な方がいい」

「で、これに対して断線しないように胴体を作るのよね……」

「そう、そこもそうだしあそこにあるでかいの、あれをバックパックとしてジョイントするから接合部の強度も考えなきゃならん」

「……あれ、新型の爆撃機か何かかと思ったわよ? ギアとほとんどサイズ変わらないじゃない」

そう、バックパックは肥大化した。

俺が求めるスペックに必要な部分を考えるとこのくらいデカくて、ついでにリアクターも追加で乗せて超強化した。

結果的にギアと同等のサイズ、こいつをジョイントした状態で後ろから見ればギアが隠れるほどの巨体になったのである。

でかい=重いので、普段から強度の事を考えなければいけないというのが難点になった。

「あれを……ギアにジョイント……? 無理じゃない?」

「いや、繋げて普通に動かすまでは行ける。シミュレーターである程度頑丈に作った状態で動かしたら問題なかった。変形飛行というか合体飛行か? それも問題なくできた。ただ最高速度で旋回や急停止すると接合部が吹っ飛ぶ」

「まぁ……そりゃそうでしょとしか言えないんだけど。とりあえずこれでも食べて少し寝たらどう? このままだと本当にぶっ倒れるわよ」

「……そうだな」

クリスが差し出してきたカツサンドを手に取り一口齧る。

パンのふわふわがカツの衣のじゅわーっとしたソース味と肉のギシギシとした食感を挟んで楽しい……ん?

挟む?

まてよ……。

「おやっさん!」

「おう、なんだ」

「バックパックの改造とギアの新造、同時進行できるか!」

「そりゃあできるが」

事もなげに言ってくるおやっさん、頼もしい限りだ。

「なんか思いついたのか?」

「おう! まずギアだが背中の一点でジョイントするのはどうやっても接合部に負荷がかかりすぎる! だからこうしたらいいんだ!」

「え、ちょっ」

クリスを掴んで前に出す。

そして肩に手をのせる。

「背中のジョイントはそのまま、肩と脇腹……あと股下もだな。可能なら二の腕や太ももなんかも包む形で保持するんだ! 全身でバックパックを支えるんだよ!」

「そりゃあ……なるほど、おもしれえ!」

サンドイッチから、クローで肩とか挟めばいいじゃんという発想が出てきた。

いやぁ、思わぬところから出てくるな。

それにその程度の改造ならそこまで時間もかからないだろう。

……その分メカニックの皆さんに恨まれる可能性は少しだけ下がる。

「ありがとうクリス! 今度なんか奢るわ!」

「え、あ、うん」

放心しているクリスをその場に残し、バックパックの設計図を取り出して追加の線を書き足していく。

クローを5本、両肩と両脇腹、それに股間を掴んで挟むような形状に飛び出す仕組み。

これなら離着陸で車輪が出てくるのと同じ要領で行ける。

問題はその強度を高める方法だが、いっそクローではなく装甲にしてしまおう。

つまり素のギアそのものは肩とかの装甲を薄く、あるいは取っ払ってもいい。

その状態でドッキングさせて胴体との接合部位を補強する。

いわば外骨格としても使う事になる。

その状態で背中に背負いつつ、コックピットを繋げていざという時は脱出……その場合も小型の方がいいから内部機構を切り離して小型戦闘機としての能力程度にしておくのもありだが後回しだ。

ともあれ難点だった部分のいくつかに光明が見え始めた。

やはり休憩は大事だな!