軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

殴り合いじゃあ!

「やっちまったなぁ……」

「やっちまいましたねぇ……」

あれから調子に乗ってバックパックをメインに製造してみた。

結果的にとんでもないじゃじゃ馬が爆誕したのである。

従来の性能から比べて最高速度は3倍、バックパックとして運用した場合でそれだ。

単体で操縦可能にすることで支援から脱出まで可能にした事により単騎性能だけならば従来の機体より5倍の速度が出るほど。

旋回性能もギアに劣らず、ドッキング中は旋回性能が倍になる。

が、一方で搭乗者の負担を一切考えていないため最低でも7G、最大40Gが襲い掛かってくる。

また接合部の弱さはカバーしきれていないため長時間の戦闘には不向きであり、最悪の場合コックピットごとバックパックが捥げて脱出する羽目になる。

これじゃギアじゃなくこっちが本体だ。

「とりあえずダウングレードしたバージョンを軍に提出、それからギア本体を改造して弱点潰しますか」

「そうだな、流石にこれは上に報告するにしてもあまりにも……なんというか、暴れ馬だ」

「っすね。ただたたき台としちゃ最高だと思いますよ。おやっさんが全力で作った機体のサポートパーツとしちゃこれ以上ない。だからこそ現行機についていけない性能を誇っている」

「よせやい、ケツが痒くなる。だが本気を出したって意味じゃこれ以上は無いな。つーわけで本体の改造もこんくらいやるぞ」

その言葉に手伝っていたメカニック科の連中と、おやっさんが連れてきた本職たちが顔をしかめて苦虫を纏めてかみつぶしたような表情をする。

スパナで殴られるから口に出さないけど、あからさまな反抗と精一杯の抵抗と言った感じだ。

何なら何人か俺に視線を送って手加減しろと言ってきている。

ふっ、お前ら……仮にも血と汗と涙の結晶を共に産み出した仲だぞ。

言わんとすることはわかっているさ。

「なに言ってんだよおやっさん」

「あぁ?」

不機嫌なおやっさんの声、それに気圧されるほど俺は弱くない。

「バックパックとギア、どっちが本命かわからないとか冗談だろ? やっぱ主役はギア、ならこいつ以上に力をいれなけりゃならんだろ!」

言わんとすることはわかるが、俺は妥協しない性格なのだ。

特に命がかかってるからな!

「お前さん……」

「命を預ける機体に妥協とかありえねえ! だからこそ最高、最善、最強を目指し続けるのがメカニックってもんでしょ。たとえ泥水啜ってでも、無茶な徹夜で作業中にぶっ倒れようとも!」

「よく吠えた! やはりお前をパイロット科に置いておくのは損失だが……くっ、そっちでも一流なのが悔やまれるぜ!」

「つーわけで、とりあえずマジで過労死する奴が出る前にシフト組むようにしよう。流石にみんな疲れてるだろうし、全員同時に動員するほどギア本体の改造は極まっちゃいないはずだ。で、シフト組む間はみんな休暇って形にしないか?」

周囲を指さしてみれば死屍累々。

それをおやっさんも見渡して理解した様子で、さっきまで殺意込めた視線向けてた連中が拝むように俺を見ている。

飴と鞭ってやつだ。

「そうだな、この程度でへばってるのは問題だが休みもあった方がいい。てめぇら、三日休ませてやる! その間に寝だめ食いだめしてこい!」

「「「「「おう!」」」」」

ここ数日で現役メカニックも学生も仲良くなった。

意気投合というわけじゃない。

利害の一致が住まされたという事だ。

ちなみに学生はこれで単位が貰えるし、本職は給料上乗せである。

主に残業代だがな。

曰く「最前線でとっかえひっかえ修理している時と変わらない忙しさ」とのことだが、安全な後方でそれに見合った給料がもらえるので頑張ってもらおう。

ちなみに彼等も結構な高給取りらしい。

主に残業代だがな。

「さて、んじゃおやっさん。そっちは任せるぞ」

「おう、お前さんにも任せたぞ」

「「シフトの内容……あ?」」

俺達の声が重なった。

「おいおい、俺が乗る機体だぜ。その設計図となりゃ俺以上に想像できる奴はいねえだろ」

「馬鹿を言うんじゃねえよ。素人が書いた設計図が役に立つわけねえだろ。本職に任せておけ」

「その本職の大半がぶっ倒れてる現場で同等の仕事してた俺はプロ以上かな? おやっさんの部下より使えると思うけど?」

「軟弱な下っ端共ってのは確かにその通りだがお前さんが儂並とは言えんだろ。学生風情は黙って雑務やってろ」

「お?」

「あ?」

グッっと拳を握り……。

「「上等だオラァ!」」

殴り合いになった。

なお散々な言われようだったと、あとになって思い返したメカニックの皆さんには謝罪のケーキを贈呈させていただきました。

ちょっとお高い奴をな。