軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

飛行機授業の裏側

そこからは寝食忘れての作業だった。

まずおやっさんが皆を集合させてスケジュールの組み直しをした。

かなりブーイングをくらったが、なんとか納得してもらった。

その上で作業に当たってもらったわけだが……。

「おい、そこの配線間違ってるぞ」

「あぁ? じゃあこのパイプからして位置が違うんじゃねえか?」

「まて、けどこの設計図だとそこにパイプと配線伸ばさねえと変形の時に千切れるぞ」

「ってことは……計算ミスか! 糞が!」

俺の設計図に対する罵倒であふれかえっていた。

うん、まぁ専門家じゃないんでね……専門家連中はトップランカー達がお抱えしてたから話を聞く機会もほとんどなかったんだ。

俺はほら、ゲームクリア諦めて隠居しようとあくせく働いてただけだから。

知識も技能もレベルも全部早期リタイアのために走り回った結果に過ぎないからね。

「すんません、土下座でも何でもしますんで清書お願いします」

「しゃーねえなぁ、今日ラーメンでも奢ってくれ」

「うすっ!」

派遣された正規のメカニックさんが頭を掻きむしりながら机に向かう。

思いっきり頭を下げた俺は礼を言いながらおやっさんともう一枚の設計図に向き合う事にした。

ツクヨミと呼ばれた機体をベースにした改造機、という建前のほぼ新造機。

可変機構に必要だった関節の動きを最小限かつ最低限に抑え込み、更に各関節の強化のためにシリンダーを複数用意。

また装甲は最低でも敵の攻撃を数発受け止められるように選び抜いた素材と技術を使用した一品であり、量産の際には頭を抱えるであろう事を承知の上でちょっとお高い素材を選んだ。

あとはジョイント部分だが、基本的にバックパックと繋がる部位は既存の装甲では強度が足りないのでここだけはという注意書きをいれながらお高い素材を薄い装甲として張り付ける。

こうしないと強度が足りないんだ。

そして自前のスラスターでも推力だけでホバリングできる程度の能力を持たせつつ、耐水性や無重力環境での姿勢制御システムも組み込んだ。

まさにオールラウンダーな機体なのだが、既存の機体に比べて1.5倍くらいのお値段になる。

これ軍に量産してって言ったらぶん殴られるか、その場で銃殺されると思うけどメカニックたちに任せればもうちょい抑えた価格にできるだろうポイントは多い。

そもそもバックパック含めてこのお値段だから破格と言ってもいいとおやっさんは言ってたが、それでもコストは抑えたいよね。

ちなみに安い理由としてはバックパックの方は可動域以外だとジョイントしかお高い装甲を使っていない事。

更に比較的シンプルな構造にしたのでギアよりもかなり値段を抑えられたことにある。

ぶっちゃけた話をするならギア1機とバックパック4基の編成でも並のインベーダー位なら相手取れると言っても過言じゃない。

だが紙装甲なので一撃で沈むので、基本はギアが引き付けてバックパックは遊撃か陽動、あるいは狙撃というのが基本だな。

こいつらもホバリングできる性能しているから。

「で、どうよ。見た限りだと」

「今までの機体と勝手がだいぶ違うからな。最前線に届くには時間がかかるが、上の連中が上手くまとめれば年内には国内の機体を総入れ替えできる」

「そんなに早く?」

「この国は少数精鋭だからな。そこまで数が多くないのもあるが、このバックパックシステムを積むだけなら多少の改造で事が済む。何も全体を弄る必要はない。せいぜいエース連中が欲しがる程度だろう。それもラインで量産できるだろうからな」

「なるほどな。で、今までの高級品はどうなる?」

「あぁ、そっちは変わらずだろ。これはどうあがいても並の兵士じゃ器用貧乏にしかできない。特化させるならそっちのプロに頼むしかねえからな」

「つまり?」

「こいつの機体性能を万全に生かすようなパイロットは早々産まれねえよ。既存のエースは自分のために特化させた機体を欲しがるだろうさ」

なるほど、つまりクリスみたいな奴は何でもできる機体よりも近接戦に持ち込みやすい機体の方がいいという事か。

良平なんかは銃装甲狙撃機って言ってたし、このツクヨミを基にした機体もバックパックも脆いからいらないだろう。

せいぜい脱出機構の一環としてバックパックを一部採用する程度に収まるだろうな。

今のままだとデカいからもっと削って戦闘力の無い脱出用の飛行機がいい所だろうけど。

「この二段脱出機構、このバックパックのちっこい方は民間にも流した方がよくないか? こいつに大型ブースター付けて一般機やエース用のオーダーメイド品にも付けられるように」

「そうだな、だがそれも決めるのは上の連中だ。儂らは提案がせいぜいだな」

「そっか、ちなみに今その上はどんな感じで?」

仮とつくが、設計図の完成した段階で軍の上層部やメカニックにそれらを送信してある。

流石に昨日の今日で返事は来ていないが、おやっさんならその辺詳しそうだ。

「上から下へ大騒ぎさ。なにせ新世代機を完成させようって時期にそれを追い抜く機体が出来上がったんだからな」

「向こうはもう試験機有るだろ?」

「机上とは言えその数字を上回って、コストを抑える方法は山ほどある。バックパックに関しちゃ計算ミス直したら終わりみたいな状況だ。しかも今後の作戦展開を一新させるかもしれないとなりゃ、そりゃどこもかしこも大騒ぎよ。ほれ、パイロット科の授業映像だ」

「どれどれ……うわ、赤とんぼ。旧大戦の遺物みたいなもんじゃねえか。どこから持ってきたよ」

「バックパック用飛行訓練の一環としてすぐに用意できる機体という事で作ったらしい。新しく戦闘機を用意したり配備するより手っ取り早かったんだとよ」

そんな理由でプロペラ機作るか……?

というか練習になるのかアレ。

「言っておくがいきなり音速超える機体を乗り回すのは素人にゃ無理だからな? それをどうにかするためにも飛ぶ感覚を覚えさせるための赤とんぼだ」

なるほど、合理的ではある……のか?

まぁギアで飛ぶのと飛行機で飛ぶのは感覚が違うからな。

そういう理由から可変機を嫌う奴もいるが、俺はむしろ可変機の方が好きだ。

あれ、第三世代機でもトップスピードと加速だけで言えば第五世代機のギア形態を凌駕しているからな。

流石に第六世代機になると負けるが、改造次第で指先が引っかかる程度までは持っていける。

「加えて言うなら、ギアのドッキングシステムを早くよこせと言ってきている。つーわけでお前さんはそっちを完成させろ」

「了解した。現場指揮は任せたよおやっさん」

「おう、最高の仕事の後に乾杯と行こうじゃねえか」

「だな」

ゴッと拳をぶつけ合ってから仕事に移る。

さて、2時間仮眠したしこれであと5徹はできるな!