作品タイトル不明
第345話 会議
それからクランの言葉通り、私は家臣たちと会議を行った。
アルカンテスには全ての家臣が来ているわけではなかったので、その場にいた家臣たちと話し合いをした。
同行していたのは、リーツ、ロセル、シャーロット、ミレーユの4人である。
「パラダイル攻めには反対ですね。今は内政を行うべきです」
リーツはそう言った。やはりリーツはそう言ったか。予想通りである。
「俺も反対かな。ただ、パラダイル州がどうするかはかなり気になるし、大きな問題なのは事実かも」
ロセルも反対のようだが、パラダイル州には警戒しているようだ。
「皆反対なんだね。アタシはパラダイル攻め大歓迎だね。内政ばかりなのも暇なんでね」
「退屈しのぎに戦をしようとするな」
ミレーユがちょっとふざけ気味に言った。今日は真面目な会議なのにこの女は。
あんまり内政をしたりするのは、ミレーユは好きではないようだ。
「というのは冗談で、実際クランの考えも一理ある。今戦っても勝てるかわからないけど、ゆったり内政していると、今後、勝ち目がなくなる可能性もあり得る。飛行船は今はミーシアンとシューツしか持っていないけど、これからブレインド家も飛行船を使い出すかもしれないしね。優位性があるうちに、パラダイルを取るというのは、間違った考えではないと思う」
今度は真面目にミレーユは語った。
飛行船の優位性か。そこはそうかも知れない。エレノアが飛行船を使って軍を指揮し始めれば、正直勝てる気はしない。
こちらに飛行船があるから、攻めこんではこないだろうが、飛行船を手にした途端、侵攻を始めるかも。
「その点に関しても、内政に力を入れて、新型の飛行船を他国に先んじて開発していけば、常に優位性を保った状態で戦はできます。ここで負けて、人と金を失ってしまえば、飛行船の開発も滞ってしまうかも知れません」
リーツがそう言った。
この前新型の飛行船をシンが開発したが、あれがあれば旧型の飛行船には空中戦で勝利できるだろう。敵が飛行船を使ってきても、すぐに落とせるのなら、優位性は常に保っていられる。
「開発ね。確かに初めて飛行船を開発したから、今は進んでいるけど今後はどうなるか分からないよ。飛行船を持っていない状態で戦うのが確実に空を抑えられるのは間違いない」
ミレーユは反論する。
「アタシも何も今すぐ戦をしようとは思っていない。飛行船をさらに何隻か作ったら、侵攻した方が良さそうとは思っているよ。十隻以上飛行船があれば、エレノアが戦にもし出てきても、対処は難しいだろうね」
「十隻か。そんなに作れるのか?」
「ミーシアンの生産力をフル稼働すれば、二年……いや、一年以内には作れるよ」
私の質問にミレーユが答える。
「でも、飛行船にシャーロットとかムーシャ並みの魔法兵が乗っていないと、そこまで効果はないよ。ミーシアンは現状二人以外に、そこまで強力な魔法兵はいないみたいだし」
「そうかね。少なくとも野戦なら十分脅威的だと思ったよ。半端な将が統率する部隊だと、飛行船が一隻あるだけで、統率が取れなくなるね」
ミレーユは野戦で敵の飛行船と戦っている。飛行船の強さもよく知っているだろう。
全ての部隊をエレノアのような名将が率いているわけではないだろうし、飛行船がいっぱいあれば、勝てるかも知れない。
「問題はパラダイル州を狙うと、シューツ州とかも黙っていないだろうってことだよ。シューツ州は飛行船製造の技術を持っているし、もしかすると技術で追いついてくるかも知れない。相手取るのは厳しいと思う」
今度はロセルが言った。
「私もそこは懸念していた。今パラダイルを攻め込んだら、ほかの州がミーシアンを狙ってくるのではないか? ただでさえ関係は最悪だからな」
「そこは交渉でなんとかするしかないね」
「なんとかできるものか? 少なくともパラダイルを攻め込むから黙っておけと言って、黙っているとはとても思えないが」
「アルス様のいう通りです。ミーシアンは現状、内政をして国力を高める。それから、他州とうまく交渉していき、最悪になっている仲を元に戻す。この二つをするのが重要だと思います」
リーツがそう言った。
「外交は確かに大事だね。でも、果たして元の仲に戻れるかな? クランは独立を宣言するという悪手を最初に犯してしまったし」
「それは……」
リーツは返答できない。
外交に関してはミレーユのいう通り、元の方に戻れるかは分からない。ミーシアンはサマフォース帝国から独立してしまったのだ。ほかの州が同じような動きをするかもと、クランは言っていたが、今のところその動きは見えない。
結局、サマフォース帝国を裏切って独立した以上、他州との関係の改善は難しいかも知れない。
「ま、あんたらの意見もわかるよ。戦になって勝てるとは限らない。クランは一度敗北をした。今度負ければ一巻の終わりになるかも知れない。内政を固めれば少なくとも、すぐにミーシアンは無くならない。ブレインド家が力を手に入れても、簡単に攻め込ませない戦力を作り上げれば、戦は起こらず、むしろ安定する可能性だってある」
ミレーユは譲歩する意見を言った。
「ちなみにシャーロットはどう思っているんだい?」
ミレーユがシャーロットに尋ねた。
「ぐーぐー……ん?」
話し合いが退屈だったのか眠っていたようだ。気づかなかった。
「うーん、戦はしなくてもいいんじゃない? もういっぱい戦ったし、しばらく休んでもいいでしょ」
完全に個人の感情でシャーロットはそう言った。
単純な意見だが、意外とバカにはできない。戦続きで民は疲弊しているだろう。
その状態で戦に踏み切ったら、勝てるものも勝てない。
「ま、そうだね。多数決だしローベント家では反対ってことでいいよ」
ミレーユは少し投げやりでそう言った。
納得したわけではなさそうだった。
全ての意見で一致するわけではないだろう。こういう時もあるか。
ただ、反対の意見を言うと、改めて反対意見をクランにいうことになる。
そこは懸念点だった。
クランは私が援軍に来なかったことを、少し疑っているような気がする。
これ以上、クランの評価を下げたくはないが……ただ、ここで無闇に戦を行うのはやはり止めたい。
ちゃんと反対意見を言おう。
私はそう心に決め、ローベント家内での会議は終わった。