作品タイトル不明
第344話 今後の方針
アルカンテス。
クランの敗退の報告があった後、貴族たちがアルカンテスに集結していた。
到着したら、私はクランに呼ばれる。
「アルス……なぜ援軍に来なかった」
明らかに怒ったような表情で、クランは問い詰めてきた。
援軍に来なかった理由。正直に言うと要請がなかったからだ。
「クラン様から指示がなかったので、シューツ対策で、守りを固めろとの指示かと思い、内政に勤しんでおりました」
「指示がなかった? 私の送った書状は届いていなかったのか?」
「書状ですか? 届いた記憶はございませんが」
クランはもしかすると、援軍を要請する書状を送っていたのだろうか?
それが何らかの事情で届かなかった。
敵の策略か、それとも単なるミスか。
要請をしたのに来なかったのは、不信感を抱いて当然である。これは嫌な状況になったな。
「本当か?」
「はい」
「誓えるか?」
「はい。書状は届いておりませんでした。誓って間違いありません」
「……そうか」
クランはため息を付く。
「すまないな。敗戦で気が滅入っているようだ。お前が裏切るはずはないからな」
肩を落としながらクランはそう言った。
今回の敗戦はクランに取っては、かなり痛いだろう。落ち込むのも無理はない。
「ただ、指示の伝達ミスがあったのは分かったが、お前はアンセルでの戦について情報収集はしていなかったのか? 旗色が悪いというのも知らなかったのか?」
「はい」
私は頷いたが、これは本当ではなかった。
実際旗色が悪いという話は聞いていた。
もしかしたら敗戦する可能性は高いと思ったが、ただ一度劣勢になった状態で再び勝てる状態に持っていくのは、エレノア相手だと分が悪い。
さらに、戦をなるべく避けたかったので、援軍には行かないという判断をした。
「そうか……情報を集めるのが疎かになっていたのではないか?」
「申し訳ありません。シューツ州からの侵攻に警戒していたため、シューツ州の情報を集めることを優先しておりました」
クランが責めるように言ってきたので、私はそう言い訳をした。
不機嫌そうにクランは眉をひそめる。
「今回の敗戦で戦力を失ったが飛行船はそのまま残っている。敵軍も簡単には攻めてこれないだろう。しかし、こちらもアンセルに攻め込むのは難しくなった」
「そうですね……」
クランはエレノアが率いる軍隊と戦い、敗北した。
アンセルはまだひとまとまりではなく、兵を出さず日和見をする貴族も多かった。兵数はミーシアンの方が多かったが、それでもエレノアの前になすすべもなくクランは敗れた。
これによりエレノアの名声はさらに高まり、アンセル貴族もエレノアに忠誠を誓うものが多くなったようだ。
ここまで結束されると、ミーシアンからアンセルを落とすのはかなり難しい。
「私は次はパラダイル州を攻略しようと思う」
「! また戦をなさるのですか?」
負けて懲りているだろうと思っただけに、驚いた。
まだ戦う気だったとは。
しかも、パラダイル州とは。山脈に囲まれたパラダイル州は非常に攻め込みにくい地形をしている。戦力的にはだいぶミーシアンの方が上ではあるが、苦戦は必至だった。
「パラダイル州は現状では、ブレインド家を支持するとは明言はしていない。パラダイル州内でも意見が分かれており、どうするか話し合いを行なっているらしい。しかし、アンセル州内がブレインド家の統治でまとまってくると、パラダイル州はブレインド家につくことになりかねん。そうなると、ブレインド家は強大な力を持つことになる。パラダイル州を起点にほかの州に攻め込み、サマフォースの覇権を取るかもしれない」
クランは苦々しい表情で、今後の展開を語った。
「パラダイル州を攻略することで、それを阻止するということですか?」
「そうだ」
クランは頷いた。
「しかし、もし攻め込んだらブレインド家も黙っていませんよ。シューツ州やキャンシープ州も参戦するかも……」
「そうだな。間違いなく大戦になる。しかし、やらねばならん」
クランは、真剣な目つきでそう言った。意思はだいぶ固いようである。
確かに一理はある。しかし、今から戦をするのは危険すぎる賭けだ。
下手をすれば再び征伐軍ができる。しかも、以前のようにまとまりのない感じではなく、纏った状態でミーシアンを征伐しにくるかもしれない。
流石に今は戦は回避すべきだ。
国内の守りを固め、ブレインド家と交渉を行い、戦の勃発を避ける。
それがいいと思う。
「お前は戦には反対か?」
「正直、反対ですね」
「それはお前個人の意見か? 家臣たちはどう考えると思う?」
「私個人の意見ですね……家臣たちはなんというかはまだ分かりませんが……ただ賛成はしないと思います」
「そうか……」
クランは私の目をじっと見つめる。
「数日後、貴族たちを集めて軍議を行う。それで今後の戦略を決める。もちろんお前にも参加してほしい。それまでに家臣たちと会話をし、ローベント家としてどういう戦略で行くべきと思っているのか、意見を固めてくれ」
「承知しました」
「それでは下がれ」
クランにそう言われたので、私は一礼した後、部屋を後にした。