作品タイトル不明
第343話 クランの動き
ゼツを捕らえてから、私は新しい家臣の募集を早速始めた。
鑑定結果がいい者が現れたら、一旦、ボディーチェックを行い、それから一週間は採用に時間をかけて、再び現れた時再鑑定を行う。
とりあえず、これでゼツのような暗殺者が来るのは防げるはずだ。
まあ、ゼツの口ぶりから言って、めちゃくちゃレアな物なのは間違いないから、持っている者はそう多くはないだろう。
ゼツが嘘を言っている可能性もあるが、もし嘘を付き、私が刺客に再び狙われることがあれば、ゼツは処刑されるだろう。
嘘をつくメリットはないので、本当のことを言っている可能性が高かった。
久しぶりに大々的に家臣を募集したので、大勢の人々が集まっていた。
新しい住民も増えているようだし、鑑定しがいがあるな。
私は鑑定を行う。
今回欲しいのは、とにかく飛行船の操縦士だ。
シンのおかげで、早く動ける飛行船の開発に成功した。
ただ、有能な操縦士がいないと、うまく活かせないだろう。
これからあの新型飛行船も数を増やすとなると、操縦士は重要になってくる。
空軍適性が高いものがいたら、採用したい。
一日鑑定を続け、二人空軍適性が高い者がいた。その二人は今後鑑定結果に問題がなければ、採用するつもりだ。
あとは、単純に知力がそこそこあるものや、政治力がそこそこある人材なども獲得した。
最近、治める領地が多くなった。
純粋に仕事ができる人材が欲しかったので、採用した。
統率や武勇は、戦が起きたら頼りになる能力ではあるが、平時ではあまり必要はない。
今は内政面で働ける人材を増やしたいので、増やしていった。
目立った高ステータス人材は、今回の人材発掘では見つからなかったが、それなりに有能そうな者は見つけられた。
ボディチェックでは問題なかったので、一週間後再鑑定で問題なければ、採用する。
そして、一週間経過し、再鑑定をかけたところ、問題なかった。
飛行船の操縦士、それから内政に使える人材を獲得に成功。
征伐軍との戦は終わったので、しばらくは平和が続くだろう。その間に、領地がどんどん発展していけばいいな。
そう思った矢先だった。
「報告します!! クラン様がアンセルに攻め込んだようです!!」
という報告が舞い込んできた。
○
「また戦が始まりましたね……しかも、アンセルに攻め込むとは……」
リーツが呆れた口調でそう言った。
報告を受け、緊急会議を行うため、家臣たちをカナレ城に集めた。
主要な家臣たちは、ほぼ集まってきている。それだけ重要な用件だった。
クランのアンセル侵攻。
正直、寝耳に水だった。
相談を受けた覚えはない。クランの独断だろうか。
彼は国王だ。絶対的な権限がある。
別に私に相談しなくてはいけないという決まりはもちろんない。
ただ、それでも一言攻め込むなら言って欲しかったと言うのが正直なところだ。
「なんで攻め込んだんだ〜?」
シャーロットがそう質問した。
「恐らくアンセルが脅威だったからだね。ローファイルに帝都が制圧され、アンセルの貴族たちは新しく宰相になった、セドリック・ブレインドの支持を表明した。今は形だけだろうけど、このまま統治する期間が長くなれば長くなるほど、心から忠誠を誓う貴族も出てきて、セドリック・ブレインドの元、アンセル貴族たちが結束するかもしれない」
ロセルがそう答えた。
「そうなると、ミーシアンの北に非常に厄介な勢力が誕生しますな。ローファイル州はアンセル州を手に入れ、二州を治めることとなる」
マイカがそう言った。
単純な勢力の大きさで言うと、今のミーシアンを上回るだろう。
ミーシアンもサイツを属国としているため、二州を統治しているのだが、サイツは正直ミーシアンに忠誠を誓っているとは言い難い。
それにサイツはあまり人口の多い州ではない。それに対し、アンセルは人口面で言うと、全州の中で最大である。
ローファイルはそれほど人口は多くないが、兵の質は高いという話だ。
「それと、場合によっちゃパラダイルもローファイルの味方になるかもしれないね。パラダイルは皇帝家に忠誠を誓っている。ローファイルは皇帝を殺さずに残しているから、パラダイルとしては味方につかざるを得ないかもしれない」
ミレーユがそう言った。
パラダイルの立場がどうなるかは気になるところではある。仮にパラダイルまでローファイル州の味方になれば、三州の戦力を持つことになる。
パラダイルはサマフォース帝国のど真ん中にある州だ。
全州から狙われる位置にはあるが、逆に言えば、ここを味方にすれば全ての州に攻め込むことが可能という意味でもある。
パラダイルの立場は非常に大事であった。
「情報によればパラダイルはどう対応するか、話し合っているらしいぜ。あの州も一枚岩ではなさそうだな」
ファムがそう言った。情報収集も主に彼の役目であった。最近ゼツを捕まえに、パラダイルにいたので、様々な情報が入ってきたようだ。
「ふーん、とにかく放っておくとヤバそうだから、攻撃したってことでいいのか?」
シャーロットがそう話をまとめた。
「うん。そうだね」
リーツが頷いた。
「僕としてはクラン様は焦っているように見えますね。気持ちはわからないではないですが、焦っては勝てる戦も勝てません」
リーツは今攻め込むのは反対なようだ。
「勝てるだろうか?」
「攻め込むのは飛行船があっても難しいですからね。そして、相手はあのエレノアがいる。非常に難しい戦になると思います」
私の質問にリーツが返答した。
勝つのは難しいと言うのは、ミレーユ、ロセルも同じ意見だった。
「ローベント家はどう動けと言われているんだ?」
トーマスがそう質問をした。
「今のところローベント家へ援軍の要請はされていません。シューツへの備えのため、防備を固めておけと指示が来ています」
「そうか……俺たちが出ると勝てるかもしれないがな」
トーマスはそう言った。
それはそうだな。
飛行船も新型のを含めて二隻持っている。まあ、新型は対空軍用ではあるが、別に地上が攻撃できないわけではない。
空軍だけでなく、兵の数も増えてきたし、質も向上してきた。
ブラッハム率いる精鋭部隊は年々、兵の練度が上がっているようだ。まだまだ数は少ないが、それでも大きな戦果を上げられそうな部隊に成長している。
もちろん精鋭部隊以外にも、ローベント家には優秀な家臣たちが多い。
客観的に見ても、我々が戦に参入すれば、勝率は上がるように見えた。
だが……
「そうなると、またエレノアと戦うことになるのか……」
前回のトラウマが蘇る。
次会ったら、本当に連れ去られるかもしれない。
「ま、まあ……命令が来てないんなら、待機でいいんじゃないかな? わ、わざわざ俺たちの判断で動かなくてもいいかも。今は内政に専念して、力を蓄えることが重要だと思う」
ロセルがそう言った。
もっともらしいことを言っているが、多分彼もエレノアと戦いたくないだけだ。ちょっと震えているのが見える。
前回の戦で私とロセルは直接会って、ちょっとだけ会話をした。
エレノアの恐ろしさは理解している。
ロセルの意見に反対は特に出ていなかった。
相手がエレノアじゃなくても、戦に疲れている家臣も多く、休みたいと言うのが本音のところだろう。
今回は出陣は見送って、内政に専念することにした。
それから、しばらく経過。
「クラン様が戦に負け、撤退されました」
あまり聞きたくなかった報告がきた。