軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第341話 捕縛

「ゼツを捕らえただと!?」

城にいるとそう報告が来て、私は驚愕した。

ファムからゼツを追っているという報告は、ちょっと前に聞いていたが、まさかこんな簡単に捕まえられることが出来るとは。

ファムを過小評価していたわけではないが、ゼツはかなり凄腕の暗殺者だと思っていただけにかなり意外だった。

逃げられたという報告が来ても、驚かなかった。というか、そういう報告が来ると思っていた。

とにかく捕まえられたのは、非常に良かった。

鑑定結果を偽装する情報については、大人しく話してくれるとは思えないが、捕まえただけでも大きな前進である。

少なくとも敵の誰かが、ゼツに依頼を出して私を狙ってくるということはなくなった。

一度見たことあるとはいえ、ゼツは変装を得意としているから、分からないうちに近づかれるかもしれない

少なくともゼツに殺される心配はなくなった。

まあ、あとは逃げられないようにすることだな。

暗殺者だし、なんか凄い逃亡術とか持ってそうだ。

シャドーの連中で見張ってもらおう。

それから数日後。

ゼツがカナレ郡に運び込まれた。

地下牢に閉じ込められる。

首の上だけが動かせるよう、徹底的に拘束した後、私はゼツと直接話をした。

となりにはファムとベンもいる。予想外の何かがあっても、対処できる布陣だ。

「久しぶりですねアルス・ローベント」

「久しぶりだな……」

「ここまで縛らなくても、逃げないですけどね」

紐でぐるぐる巻きにされている。

こんな状態でも平常心でゼツはしゃべっていた。

凄まじい精神力である。

私なら1日も耐えられないかもしれない。

「何を聞きに来たんですか?」

少し微笑みながらそう尋ねてきた。

平常心どころか、笑顔を浮かべる余裕もあるとはな。とんでもないやつである。

「単刀直入に聞く。どうやって私の鑑定結果を誤魔化したんだ」

「教えて何か私にメリットがありますか? どうせ話した瞬間、殺されるのでしょう?」

ゼツはそう返答してきた。

実際、彼女の言う通りではある。郡長の命を狙ったのだ。法に当てはめれば、死罪確定である。

「死ぬより痛い目にあうかもしれないぞ?」

ファムが脅すように言った。

「どんな目でしょうか? 子供の頃様々な拷問を受けてきましたが、死んだ方がマシと思うほどのことはなかったですね」

淡々とゼツは答えた。

子供頃から受けてきたとは……

冗談を言っている風でもない。

暗殺者になるような人物は、普通とは言えない幼少期を過ごしていることが多いのだろう。

しかし、この状況で情報を聞き出すのは、正直至難の技かもな。

「わかった。もし話したら処刑は行わない。約束しよう」

信じてくれる可能性は低いと思ったが、それでも私は提案してみた。

処刑なしで牢に閉じ込めるのなら、別にできる。流石に釈放したり、家臣にしたりするのは難しいが。

ゼツの能力値的に家臣にできるならしたいが、流石に一度私を暗殺しようとしたものを家臣にすると言ったら、皆から反対されるだろう。

私個人としては、あくまで暗殺はゼツの意志ではなく、依頼されてやったことだろうから、家臣になるならしても良いと思うが。

「それを信じろと」

「念書を作ってもいい」

「犯罪者との念書など、いつでも破れるでしょう」

疑り深いな。まあ、当然か。

ゼツの状況としては、喋ったら殺される、喋らなければ処刑されるという状況だろう。喋るはずがない。

「ふふふ、必死ですね。それほど知りたいですか」

いきなり笑いながらそう言ってきた。

「知りたいな」

「確かに知っておかないと、スキルが使いにくくなりますからね。知りたいと思うのも当然のことですね」

「お前の言う通りだ。話してくれないか? 処刑を無しにすると言ったのも、本当だ」

通じるか分からないが、私はゼツの目を見て、はっきりと言った。

「そんなにお願いされなくても喋りますよ。結局喋らなくても、殺されるでしょうからね。喋らなければ、処刑するのをずっと待ってくれるということはないでしょうから」

それは確かにそうだ。

ずっとゼツが方法を喋らなかったら、口を割らすのを諦め処刑。

それは間違いないだろう。

「処刑しない以外にも、いくつか条件があるので良いですか?」

「言ってみろ」

「まず、情報を話したらこの拘束を解いてください。流石にずっとこのままだと、私でも気が狂うかもしれません」

「分かった。拘束を解こう」

もしかすると、拘束を解いたら、脱獄されるかもしれないが、まあ、それは仕方ないだろう。

というか、一応ゼツもこの状態は嫌だという感情はあるんだな。ずっと続いたら、流石のゼツでも気が狂うのか。

「もう一つは、読書をさせてください。退屈凌ぎは欲しいので」

「分かった。本を持って来させよう」

二つ目も別に飲めない条件ではなかった。

この城のは結構な蔵書がある。

元々それなりに本が置いてあったが、その後、ロセルの提案で本を集めて増やしている。

ロセルは私欲で本を増やしたかっただけだろうが、情報を入手するため本は増やすべきという意見は、理にかなっていたので増やしている。

「あとはちょこちょこサマフォース帝国の状況がどうなったかも、教えて欲しいです」

「分かった」

読書といい、この要求といい、ゼツは知識欲が高そうでな。

頭もかなり良さそうだ。

これだけ知的好奇心があるんなら、学者としてどこかの貴族に仕えれば良いのにな。

まあ、幼少期から拷問を受けていたと言ったが、もしかしたら暗殺者になるよう、子供の頃から強制的に訓練を受けていたのかもしれない。

暗殺者になる以外の道がなかったのかもな。

「要求はそれだけか?」

「はい。まあ、何かあったらまた言うかもしれません」

「あったらまた何か言ってくれ。飲めない要求もあるだろうが、検討しよう」

要求はこれで終わりのようだった。

話してくれるだろうか。

「アルス・ローベント。あなたは約束を守る人だとお見受けしています。喋ってあげますよ」

少し微笑みながら、ゼツはそう言った。