作品タイトル不明
第340話 シャドーvsゼツ
ファムはゼツの逃走コースを予想し、そこに待ち伏せをしていた。
メイドの格好をしているが、間違いなく、アルス・ローベントを殺そうとした暗殺者、ゼツである。
「あなたは……アルス・ローベントの……」
「覚えていたか。光栄だな」
ファムは余裕そうな表情でそう言った。
後ろからも気配を感じ、ゼツは目だけで後ろを見る。
地味な顔の男、ベンが後ろに立っていた。
「二人だけですか?」
「ほかの奴らは、多分戦いについていけないからな」
「なるほど……」
ゼツはどこからか短剣を取り出した。
ファムとベンもナイフを握っていた。
ゼツはファムに斬りかかる。
と見せかけて、方向を転換、逃走を図ろうとする。
「……!」
ベンがそれに反応し、ゼツを捕らえようとする。
ゼツは短剣を振り、ベンに斬りかかる。
ナイフで受け止める。それを見て、ファムが後ろから斬りかかった。短剣で受け止める。
「死んでください」
ゼツは小さい針を懐から出し、ファムに向かって飛ばした。
ナイフで針を弾き落とす。
ゼツはさらに追撃。ファムを蹴り飛ばそうとする。
腕でガード。しかし、蹴りの威力が
非常に強く、後ろに下がる。
その隙を突き、ゼツは逃走を図る。
ベンが触媒機を取り出す。魔法を発動。初級の炎魔法だが、魔法の技量が非常に高いベンなので、それも高威力だった。
ゼツの近くで爆発が起きる。
「くっ……」
流石に爆発は完全に避けられず、爆風で体勢を崩す。
ファムはその隙を見逃さず、ゼツに飛びかかった。
背中側に回り込んで羽交い締めにする。
「動くな」
そう言って、羽交い締めにしながら、ゼツの首にナイフを押し当てる。
「これは予想外でしたね。魔法もそこまで使いこなしているとは」
捕まったのにゼツは冷静だった。
「ベン。こいつの体に武器がないか確認しろ」
「はい」
ファムの命令で、ベンはゼツが武器などを隠し持っていないのかを、隈無く確認する。
毒、針、短剣など様々な暗器が出てくる。完全に武装していた。
「これ以上はないようです」
「そうか」
ベンが確認している間も、ファムはずっと羽交い締めを続ける。一瞬たりとも気を抜くことはない。
「なぜ私を狙っているんですか?」
「主のアルス・ローベントから、お前を捕縛せよと指示が出ている」
「私を捕縛ですか……殺されかけたから、制裁でもするつもりですか?」
「アルスは情報を欲している。お前がどうやってアルスの目をあざむいたか、知りたいようだ」
「しゃべるとでも?」
「簡単には話さないだろうな。まあ、話すまで色々試すだけだ」
ファムは淡々とした口調でそういった。
「今からお前をカナレに連行して、牢に閉じ込める」
「情報を聞くだけで良いんではないですか?」
「アルスを殺そうとした暗殺者を野放しには出来ん。来てもらうぞ」
「そうですか。ま、情報はそう簡単に聞けるとは思わないことですね」
ファムは、ゼツを手際よく拘束する。
まずは足を縛り、それから手を縛った。
そして、口も開けられないようにし、全体的に紐でぐるぐる巻きにして、指一本動かせない状態にした。
ここまですれば脱出することはほぼ不可能。
自身の経験則に基づいた拘束だった。
「それでは運ぶぞ」
「承知しました」
ファムはベンにそう指示を出した。
まずは近くの仮アジトに向かう。
そこに置いておいた、大きめの箱にゼツを入れる。
流石に人間をそのまま運んでいたら、パラダイルの憲兵に捕まりかねない。
ここはミーシアンではなく、敵国の領土である。
捕まったら保釈されることはないだろう。
ファムは、箱に入れたゼツをカナレ城へと輸送した。