作品タイトル不明
第339話 作戦
パラダイル州のルパという街で、ファムはゼツを捕縛するための、作戦を練っていた。
「ゼツはこの街にいたんだな?」
「はい。間違いないです」
ファムの質問に、部下の一人ベンが答えた。
部下たちを使い、ファムはゼツの居場所をほぼ特定していた。
元々ベンは人の捜索および情報収集を行うのに長けている。
ベンに加え、新しく同じように捜索と情報収集が上手い部下を採用したので、シャドーの情報収集、人の捜索能力は格段に向上していた。
「奴に暗殺の依頼を頼んだ男も特定し、情報を吐かせました」
「ほう、そこまでもうしていたのか」
ファムは感心したような表情を浮かべる。
「街の商人、ヒャードという男です。暗殺、実行の時間までは特定できませんでした」
「いや十分だ。ここまでわかっていれば、捕縛は容易い」
「対象は捕縛ということで良いでしょうか?」
「そうだ。殺すと情報が取れないから、殺すのはまずい。まあ、逃げられそうになるくらいなら、殺した方がいいだろうが、基本は捕縛する方向で進めていきたい」
ゼツの捕縛は、アルスの鑑定結果をどう誤魔化したのか、その方法を知るためである。
殺すと情報が入手できないので、捕縛する必要があった。
捕縛は殺すのに比べると難易度は高い。捕縛し続けるのも難しく、ゼツほどの能力の高い暗殺者なら、捕縛された後の対処法も持っている可能性が高い。
決して簡単にできる仕事ではなかった。
「ベン、お前はゼツのターゲットとなっている男の張り込みを行え。俺はゼツに顔を知られているから、迂闊には動けん。捕縛作戦を実行するときに動く」
「承知しました」
ファムはベンに指示を送る。
その後、ほかのシャドーのメンバーにも指示を行った。
(さて、やるか)
ゼツの捕縛作戦をファムは実行するため、準備を始めた。
○
パラダイル州、ルパ。
ゼツは暗殺を実行するため、ヒャードの屋敷に潜入していた。
メイドに扮して、潜入していた。
(面白い報酬がもらえそうだったので、受けたのですが、正直少々つまらない仕事ですね)
ゼツは屋敷の下調べを終えた後、そう思った。
彼は暗殺を実行する前に、確実に成功できるように入念に下調べを行う。
今回のターゲットである、ヒャードという男は、年齢は四十歳。
戦争に必要な小型の触媒機を販売することで、大きな儲けを得ている。
ヒャード本人は戦闘力は持たない。むしろ運動神経は悪い方だった。
思ったより頭も切れない。商人として成功できたのも、運が良かっただけのようだ。
手下はそれなりにいるが、戦闘力の高いものはいない。
用心棒は二人。剣士だ。
どちらも単純な腕は高い。
ただ、暗殺者などに対する対応能力は、低そうだとゼツは分析していた。
寝るときはヒャードは寝室で一人になる。寝室前の部屋には用心棒が一人立っている。だが、窓から簡単に侵入が可能で、窓の付近に用心棒はいなかった。
見張りは存在するが、そんなに数は多くない。
あまり暗殺などは警戒していないとしか思えない、手薄さだった。
(金持ち全員が警戒しているわけではありませんからね。こういう人も中にはいますか)
基本金を持っているものは、警備をかなり厳重にするものだが、稀に軽い警備で済ませているものもいた。
ルパの街は比較的治安も良く、日頃から事件などが起こることも少ない。
このくらいで十分だとヒャードは思ったのだろう。
(さて、今夜、実行しましょう)
ゼツはこれ以上調べる必要はないと判断し、今日の深夜ヒャードが寝ている時間に暗殺を実行しようと決意した。
その日の夜。
暗殺を実行するため、ゼツは屋敷の屋上に立っていた。
寝室は二階にあった。窓から侵入する。
ロープを降ろす。ロープを伝って下降した。
素早く、窓を開けて侵入。ロープを回収する。
その間、ほとんど音も立てない。
かなりの技術を持った暗殺者しか、できない芸当であった。
ヒャードの寝ているベッドに近づく。
「!」
ベッドには誰もいなかった。
その直後、部屋のタンスが開く。
ゼツは素早く反応。状況を理解。
自分の作戦が失敗したと悟る。
それと同時に、窓から一目散に逃げ出す。
ゼツは高い暗殺技術を持っているが、失敗することはたまにある。
それでも、今まで一回も捕まったりすることはなかった。
それだけ逃走技術も高いからだ。
窓の外に出る。外には待ち伏せが複数人いた。
ゼツを捕まえるべく、取り囲もうとする。
ゼツは思いっきりジャンプをして、包囲を抜け出す。
地面に着地すると、恐ろしい速さで走り始めた。
(追手の速度は……それほど速くはないみたいですね)
全力で走り続ける。
十分追手の足は早いが、ゼツに比べると遅かった。
距離がどんどん広がっていき、見えなくなる。
逃げ切れたと、ゼツが思ったその時、
「やっぱりあいつらじゃ捕まえられねーか」
前方から中性的な見た目の男が出てきた。