作品タイトル不明
第333話 帝都にて
それからしばらくの間、クラン達は飛行船で嫌がらせを続けつつ、敵軍の動きを待った。
中々敵軍は動きを見せない。
ゼート城を堅守しているようだった。
クランは再び軍議を開く。
「どうする? このまま待つか、それと攻め込むか」
「今は我慢が必要だと思いますぞ。飛行船の嫌がらせは間違いなく効いとると思いますし」
「うむ……」
クランは悩む。敵軍の狙いはアルカンテスを取ってくることだと思っていたが、ゼート城を手に入れることで、領地を入手したと満足した可能性もなくはない。
当然、ゼート城を盗られっぱなしには、クランとしてもしたくはなかった。
飛行船の嫌がらせも本当に効いているのか、不安にはなってくる。
敵兵をある程度討ち取ってはいるようだが、シャーロットのような規格外の魔法兵でなければ、数隻の飛行船で城を破壊したするような効果は出せない。二十隻くらいは必要だろうが、流石にそこまで量産はできていなかった。
(どうする……?)
クランは悩んでいると、
「報告です!!」
伝令兵が慌てた様子で駆け込んできた。
「敵軍がゼート城を放棄して、撤退を始めたようです!!」
「な、何!?」
衝撃の報告を聞き、クランは驚愕する。
「どういうことだ?」
「わ、分かりませんが、間違いなく撤退をして行ったようです。ゼート城だけでなく、ミーシアンから奪った城を全て放棄して、アンセル領に戻って行ったと……」
「……アンセルで何かが起きたのか?」
クランはそう予想をする。
「これは予想外じゃのう。まあ、敵の策略かも知れませぬし、このままゼート城を取り戻しに行くのではなく、一旦情報を集めた方が良さそうですな」
「私もそう思います」
リーマスは冷静な様子でそう言い、ロビンソンも賛成した。
「そ、そうだな。至急情報を集めるのだ!」
「承知しました!」
クランは密偵や斥候に指示を出し、アンセルの情報を集めさせる。
飛び込んできた情報は信じ難い情報であった。
「帝都が陥落しただと……?」
報告を聞いたクランは、唖然とした表情でそう呟いた。
「はい。ローファイル州が裏切り、アンセルに侵攻。瞬く間に帝都に攻め込み、あっさりとランバス城を占拠したと。そして、実権を握っていたシャクマを処刑。今後は皇帝が直接命令を下し、ローファイル総督は補佐をするとのことですが、恐らくシャクマと同じく実権を握る気でいるでしょう」
ロビンソンが状況を説明した。
「なるほど……兵が撤退して行ったのは、ローファイルに攻め込まれ、慌ててシャクマが撤退命令を出したが、間に合わなかったということか?」
「恐らくは。現在、その兵達は命令を受けて、ランバス城に入り、待機しているようです。皇帝陛下の指揮下にあるとのことですが、実際はローファイル総督が指揮しているでしょう」
「なるほどな……面白い展開になったが……ミーシアンにとって良いのか悪いか……」
「短期的に見れば、取られていた城を取り返せたということで、良いでしょうが……もし、ローファイルがアンセルを何事もなく統治することができれば、厄介な事態になりますね」
ロビンソンが神妙な表情を浮かべてそう言った。
「ローファイルがこのままアンセルを手に入れられると思うか? いくら帝都を陥落させ、皇帝を手中に収めたとはいえ、黙って従うほど、アンセルの貴族達も大人しい連中ばかりではあるまい」
「そうですね……宰相シャクマもアンセルを統治し切れていたとは言えない状態でしたからね。当然苦労するとは思いますよ」
ロビンソンはそう返答した。
「しかし、結局は実力が物言うと思います。ローファイル州には戦女神のエレノアがいる。兵力もある。逆らうことができないとアンセルの貴族達が思えば、従うことになるでしょうね」
「そうなりそうだな」
クランはロビンソンの言葉に頷いた。
「敵が混乱している隙にアンセルに攻め込みたいところではあるが……攻め込むと、ローファイル総督の元、アンセル州内が纏まってしまうかも知れないな……そうなると厄介だ。ここは一旦静観したほうが良いかも知れない」
「私もそう思います。また、攻め込んでくる可能性もゼロではないので、兵はここに残して、警戒をしておいた方が良さそうです」
「そうだな……サイツの防衛は予定通り、アルス達とサイツの者達……それからレングに任せるか」
クランの方針を決める。ロビンソンもその方針に賛同した。
クランは、ミーシアンとアンセルの国境付近の防御を固め、しばらくアンセルがどうなるか動きを見ることにした。