作品タイトル不明
第330話 朗報
私たちはそのあと軍議を行い、すぐさま進軍をすることに決めた。
クーハ城を守り切ったが、やはりバルットの近くに陣取っている、シューツ軍の本陣を崩さなければ、戦の勝利はない。
バルット城にいるサイツ州の兵士たちと連携すれば、シューツ軍を打ち負かせるはずだ。
「アシュド殿から書状を持ってまいりました」
伝令兵が書状を持ってきた。
レングがそれを手に取り読む。
「おお! どうやらアシュド殿はうまく敵の策略をかわして、逆に敵軍に痛手を与えることに成功したらしい」
書状を読んだ後、嬉しそうな表情でレングはそういった。策略をうまくかわしたのか。流石はアシュドと言ったところだ。前に鑑定したが、かなり優秀なステータスだったからな。
「今、飛行船でシューツ軍を攻撃すれば、敵軍は大混乱に陥る。その後、ミーシアン軍、サイツ軍とで同時に攻撃をし、シューツ軍を壊滅させたい、と書いてあるが……指示通りに動いた方がよいだろうか?」
レングが尋ねてきた。
ロセル、リーツ、ミレーユが考える。
「俺はその通り動いた方がいいと思います。書状の報告通り、敵軍に痛手を与えたのなら、今が敵軍を崩す大チャンスです」
ロセルが意見を言った。
リーツもミレーユも、同じ考えのようで賛同する。
「それでは飛行船を飛ばそう!」
飛行船を飛ばした。シューツ軍の方へと向かっていく。
我々はシューツ軍がいる場所へと、急いで進軍をした。
その進軍中。
「飛行船の攻撃に成功しました! その後、敵軍は撤退を始めたようです」
という報告が飛び込んできた。
「なんと!」
レングは報告を聞き驚いている。
「劣勢と見るやすぐに引いたようだねぇ。まあ、ここで徹底的に敵兵を減らしたほうが、のちのち良さそうだが、追撃すると逆に罠を張られそうだし、やめた方が良さそうだね」
ミレーユが報告を受けそう呟いた。
正直追撃はしたくない。
ようやくこれで、戦は終わったと見ていいのだろうか。
「つ、つまり、それは勝ったということだろうか!?」
レングも半信半疑でそう言った。
「仕切り直してまた攻めてくる可能性もありますが、一旦勝利と見ていいでしょう」
「そ、そうか。皆のものやったぞ! 我々の勝利だ!」
レングは大声でそう叫ぶ。
「アルス・ローベント! お主には助けられた礼を言うぞ! 改めて礼を言うぞ!!」
「ありがたいお言葉です」
レングに再びお礼を言われ、私は深々と頭を下げた。
勝利の報を聞いた後、我々は一旦バルット城へ向かい進軍した。
○
それから数日でバルット城に到着した。
中々立派な城だった。城壁も非常に高く、簡単には陥落しそうにない。
城に入ると、サイツ元総督のアシュドが出迎えた。
「おお、レング殿よく来られた。敵軍は飛行船の砲撃を受けた後、慌てて撤退していきましたよ。ミーシアンからの援軍のおかげですな」
「ははは、私も何もしておらんよ。飛行船はこのアルス・ローベントが連れてきてくれたのだ!」
アシュドの前で、レングは私を褒める。
前までは自分が一番みたいで、あんまり人の話とかを聞かない男だったようだが、何かだいぶ雰囲気が変わった気がする。
「おお、久しぶりですなアルス殿。あなたが来なければ、今頃どうなっていたことやら、感謝いたします」
アシュドはにこやかな笑みを浮かべて、そう言ってきた。
こうしてみると、ただの良い人に見えるのだが、かなり曲者なのは間違いない。
私が昔、殺されかけたのも、この男が元凶だからな。
まあ、今は味方だし、今の私はこの通り五体満足で元気だ。恨みはしまい。
「いえ。全て私の家臣が優秀だったから成し遂げられたことでございます」
アシュドの言葉を聞き、そう返事をした。
「アルス殿は謙虚ですな! その年齢で、まるで大人のように落ち着いておられる! 私とは大違いですな」
大人のようにと言われてちょっとだけドキッとする。
一応中身は大人であるので、落ち着いているのは当然といえば当然だ。
というか、私とは大違いと言ったが、彼は若いころはだいぶやんちゃだったのだろうか?
まあ、成り上がって総督になるような人物だし、若い頃のすごい逸話があっても不思議ではない。
「お二人に最後にお願いがあるのですが、よろしいですか?」
アシュドがそう言った。
「何だ?」
「何なりと申してください」
レングと私は返答する。
「敵軍は撤退したとはいえ、サイツを狙っていることは変わりません。国境の付近の砦も一度落とされ、少しだけ壊されております。シューツがすぐに攻め込んでこないとも限らないので、防御体制を整えるまでしばらくバルットに駐留してもらっても良いでしょうか?」
「問題ないぞ!」
「私も大丈夫です」
本当は一瞬でも早く帰りたかったが、空気的に頼まれたら断りづらかったので、そう言った。
兵が残って欲しいと言うのもあるだろうが、それより飛行船が欲しいのだろう。シューツ軍は一隻飛行船を作っていたが、もう一隻をすぐに作って攻め込んでくるかもしれない。
飛行船が残っていれば、だいぶ安心だろう。
「ありがとうございます。そう長くはかからないと思いますので、しばらくいてくれると嬉しいです」
「せっかく守ったのに、すぐに奪われては意味がないからな! 私がいるから安心するが良い! はっはっは!」
胸を張ってレングは言った。
だいぶ成長はしたみたいだが、馬鹿っぽいところはそんなに変わっていないな。
「それは誠に安心ですな。今日は祝杯をあげるとしましょう」
「そうであるな!」
祝勝会を上げることが決まったようだ。
しかし、すぐに帰れると思っていたのに、面倒なことになったな。
まあ、そこまで長く滞在するわけではないだろうが、それでも面倒なことには変わりない。
早くリシアの顔が見たいと言うのに……
まあ、滞在すると言ったからには、滞在するしかないか。
これからのことを考えると、サイツとは仲良くしていきたいしな。
私は一旦、用意してもらった客室へと向かった。