作品タイトル不明
第329話 見破る
時は少し遡り、バルット城内。
「なるほど、裏切り者はこの二人か」
アシュドは自身の密偵からそう報告を受けていた。
シューツ側から調略を受けていると言うことは、アシュドも勘づいていた。
自分の手下の密偵に、家臣たちのことをこっそりと探らせていたのだ。
「いかがしますか? 処刑しますか?」
ラダスがそう質問した。
「馬鹿を言うな。かなり使えるだろ。気付いていないふりをして、敵を誘い込むぞ」
「なるほど……確かにその方が使えますね」
アシュドの考えに、ラダスは賛成した。
「恐らく敵はこいつらを使って、城門を開けようとしてくるはず。どの城門がいつ開くか、それを事前に掴めば、いくらでも罠は張れる。油断して城に入り込んでくる兵どもなど、簡単に討ち取れるだろう」
「そうですね。引き続き、情報を入手しましょう」
「そうだな」
アシュドは密偵に引き続き、裏切り者たちがどう動くか、情報を探らせた。
そして、夜のタイミングで城門を開ける気だという情報を入手。
その情報を裏切り者が敵軍に伝えたと知った後、その裏切り者を捕縛。
開ける予定だった城門付近に、大勢の罠、魔法兵、弓兵など、兵器などを設置。
そして、予定通り夜になったら、城門を開けて、敵軍を一気に討ち取った。
「上手くいきましたね」
「まあな。だが、まだ足りんな。敵は撤退した。もっと兵を討ち取らないとまずい」
不満そうな表情のアシュド。
「やはり予定通り、私が出るか」
「承知しました」
アシュドはそう言って、急いで別の門まで走る。
そこには大勢の騎兵たちが出陣の準備をしていた。
もし、敵の撤退が早く、敵兵を思ったより討ち取れなかった場合は、騎兵での突撃を仕掛けられるよう、アシュドは事前に準備をしていた。
敵軍は作戦が失敗し、味方がやられたことで、大きく動揺している。
統率も完璧に取れない状況だろう。
その状態で騎兵の突撃に対処するのは、難しい。
「それでは出陣する」
門が開く。
アシュドが先頭になり、一斉に騎兵たちが城から飛び出してきた。
撤退するシューツ軍の背後を騎兵たちが襲い掛かる。
「な、なんだぁあああ!?」「うわああああ!!」「騎兵だ!!」
シューツ軍の兵士たちから、叫び声が上がる。
シューツ軍は混乱状態に陥っていた。
統率がうまく取れておらず、一方的に討ち取られている。
逃亡する兵も出てきた。
「はああああ!!」
アシュドは持っていた槍を振り回して、敵兵を討ち取りまくる。
(さて、敵の総大将はどこだ?)
アシュドはこれで敵の総大将をうまく討ち取れれば良いと考えていた。大将さえ討ち取れば、敵軍は統率力を失い、撤退を余儀なくされる。
騎兵で駆け続け、敵軍の中に大将がいないかを、アシュドは探し続ける。
「逃げるな! 食い止めろ! グイス様には近づけさせるな! 敵兵を討ち取れば特別報酬を渡すぞ!!」
と大声が響き渡る。
敵軍の将が兵士たちに必死で指示を送っているようだった。
報酬を出すなどの言葉が聞こえたからか、徐々に逃げず、必死で騎兵たちと戦う敵兵も増えてきた。
(ちっ。これ以上は不味いな)
敵軍が統率を取り戻し始めているのを、アシュドは感じ取った。
「撤退!」
指示を送り、一目散に方向転換し、アシュドはバルット城へと帰還した。
「お見事です」
戻ると戦の様子を見ていたラダスがそう言ってきた。
「全然だ。昔の方が動けていたが。歳は取りたくないものだな」
大勢の敵兵を討ち取ったのにもかかわらず、アシュドは不満そうな表情でそう言った。
「敵将も討ち損ねたしな」
「それはそうですが、ただ、これでたくさんの兵を討ち取れました。敵軍は撤退するかもしれませんね」
「どうだろうな。ミーシアンからの援軍兵たちは来ているのか?」
「はい。兵たちは来るのはまだ先のようですが、飛行船はもうすぐバルット城に到着予定とのことです」
「そうか。飛行船が来てくれるのは心強いな」
「そうですね」
アシュドの言葉にラダスが賛同した。
「さて、どうなるか……」
アシュドは腕を組み呟いた。