作品タイトル不明
第327話 援軍
センプラーを奪還し、カナレ城で準備を終えた後、私たちはシューツ軍の侵攻を受けているサイツに向かって、出陣した。
ミレーユたちに援軍に行くよう命じており、ちゃんと援軍に行ったようだ。
勝手に撤退などもしておらず、まじめに戦っているようである。
また、情報によれば、クランの子供であるレングも、兵を引き連れ援軍に向かったようだ。
レングは最初に会ったとき、鑑定したがあまり有能な人物ではなかった。ただ、ポテンシャルは高いようで、もしかすると私が会っていない間に、それなりに成長して、それを見込んで抜擢されたのかもしれない。
レングとミレーユの部隊は、今は合流して一緒に戦っているようだ。レングが無能でも、ミレーユとトーマスがいれば、サポートするだろうから、何とかなりそうではある。
進軍中、斥候を派遣しており、シューツ軍との戦がどうなっているかの、情報を収集していた。
もし、戦が優勢で全然勝てそうな場合は、援軍に行く必要がないからな。
軍隊は戦わなくても、動かすだけで金や兵糧を使う。
行かなくていいなら、行かずに済ませておきたい。
それにできれば、戦は避けたいしな。
優勢で進んでいることを祈って、報告を待っていたのだが、祈りは虚しく、劣勢のようだ。
単純に数で負けているようで、さらにどうやら、シューツ軍も飛行船の開発に成功しており、こちらの飛行船が落とされてしまったようだ。
飛行船も敵だけが持っている状況で、兵数でも負けている。
これは中々不利な状況である。
なるべく早く援軍に駆けつけるべく、私たちは進軍を急いだ。
クーハ城の近くまで到着し、
「そろそろ飛行船を飛ばしましょう」
リーツからそう提案があった。
「ここで飛行船を?」
「はい。敵軍は飛行船を持っているようですので、こちらも飛行船を使って戦わないと不利になります」
「そうだな」
リーツの意見を聞き私は頷く。
「敵はまだ援軍が来ているのには気づいていないはず。不意打ちできるかもしれない。不意打ちが成功すれば、あっさり飛行船を落とせると思うよ」
今度はロセルがこういった。
確かに飛行船の戦闘において、先に攻撃を仕掛けられたら、ほぼ勝ち確だろう。
飛行船どうしの戦闘経験は、一回だけで経験値は少ない。奇襲にまともに対応はできないはず。
「魔法兵は誰が乗るかだけど……」
「ん? そりゃわたしでしょ」
ロセルの言葉にシャーロットがそう言った。
「シャーロットが乗るのが一番強いけど……でも、万が一落とされるかもしれないし。そうなると、シャーロットも危ないよ」
ロセルが不安そうに言った。
「仮に落とされても、着地できる魔道具があるでしょ?」
「それはそうだけど……危ないことには変わりない」
「まあ、どっちにしろわたしは負けないし、そんな心配いらないよ」
自信満々にシャーロットが言った。
確かにロセルの心配もわかる。
シャーロットは、長く部下として仕えてくれた。失いたくはない。
その上で、シャーロットはローベント家の最高戦力でもあるしな。
「分かった。飛行船にはシャーロットが乗ってくれ」
ただ、それでも私はそう決断した。
シャーロットの負けるわけがないという言葉を信じたからだ。
飛行船同士の戦いは、経験が浅いので何があるかはわからない。
それでも、彼女の魔法なら負けるわけないと思った。
「ア、アルス!?」
ロセルは私の決定を聞いて、動揺する。
「僕はそれでいいと思いますよ。飛行船同士の戦闘は、結局上に乗っている魔法兵で決まるでしょう。シャーロットが乗っている船が負けることはあり得ない」
「そうだけど…」
ロセルは不安そうだ。彼は最悪の事態を考える癖がある。今回は仲間が死んでほしくないという私情もありそうだ。
「……分かった……アルスが決めるなら僕もシャーロットを信じるよ」
少しだけ考えて、ロセルはそう決断を出した。
「じゃあ、シャーロット……ってあれ?」
先ほどまでシャーロットが近くにいたが、いつの間にかいなくなっていた。
「シャーロットはどこに?」
「えーと、飛行船に向かって行きましたよ?」
ムーシャがそう返答した。
「行動が早いな……」
「俺が何言っても結局行くんだろうね」
ロセルとリーツは呆れたような表情を浮かべていた。
「あ、あの、私も行った方がいいでしょうか!?」
ムーシャがそう言った。
「いや、ムーシャはここに残っていてくれ。飛行船にはシャーロット一人で十分だ。飛行船を落とした後、その後、シューツ軍と野戦になるだろうから、そこで君の力は必要になってくる」
リーツがそう言った。
「わ、分かりました。頑張ります!」
やる気に満ちた表情でムーシャはそう言った。
昔に比べると、彼女も中々いい目をするようになった。
まだ、恐怖心はあるようだが、それでも覚悟は決まっているようだった。
その後、シャーロットを乗せた飛行船は出陣し、シューツ軍が布陣している場所へと向かった。
我々も進軍を続ける。
シャーロットが敵の飛行船を撃墜できれば、その後、敵兵に魔法攻撃を浴びせる。
敵軍は大混乱するだろう。その状態で、攻撃すれば壊滅させることが出来るはずだ。
私たちは進軍速度を速める。飛行船が敵軍を攻撃したら、そのあと、なるべく早めに攻撃を仕掛けたい。
時間を与えると、敵軍に立ち直る隙を与えしてしまうかもしれないからな。
しばらく行軍すると、報告が来た。
「我が軍の飛行船が、敵の飛行船を撃墜しました! その後、敵軍に魔法攻撃を浴びせたようです!」
シャーロットが勝ったという報告だった。
まあ、当然そうなるとは思っていたが、ちょっとだけホッとした。
「魔法攻撃を受けた、敵軍の状況は?」
リーツが戦況を尋ねる。
「大混乱しているようです! 混乱する敵軍の様子を見て、レング様率いる部隊が敵軍を攻撃し、優勢になっている模様です!」
最初に援軍に来ていた部隊が、きちんと敵軍を攻め込んでいるようだ。
レングが率いているが、ミレーユとトーマスも参戦している。
隙を見せている敵を見逃すほど、二人は甘くはないだろう。
「このまま我々が参戦すれば、敵は敗走するしかないでしょう。急いで進軍しましょう」
「そうだな」
目的地はもう少し、さらに進軍速度を上げた。
早く進軍すれば、それだけ疲れる。前までならすぐに体力が切れて、もたなかったのだが、最近戦が多く、動くことも多く、さらに年齢を重ねて肉体的にも成長してきたのもあって、全然保つようになってきた。
どれだけ優秀な人材を集めても、自分自身の体力が貧弱すぎれば、そのうち殺されてしまうかもしれない。体力がついてきたのは、良い傾向と言えた。
そのまま勢いよく進軍を続け、シューツ軍が布陣している場所へと到着した。
すでに、レングの部隊が奮戦しており、だいぶ優勢になっていた。
ただ、相手の将もそれなりに優秀なようで、完全に統率は崩れておらず奮戦している。
敵軍の側面に移動。
「魔法部隊! 弓部隊! 配置につけ!」
リーツが素早く兵たちを配置し、一斉に遠距離攻撃を放った。
レングたちを相手にするので精一杯だったのか、敵の部隊は私たちの攻撃を受け、驚愕していた。
大混乱に陥る。
そのまま、魔法を撃ち続け、大勢の敵兵が討ち取られていった。
「撤退! 撤退!!」
敵軍は撤退を指示、急いで撤退していった。
シューツ軍との戦は勝利に終わった。