作品タイトル不明
第326話 劣勢
「うーん、失敗かなこれは」
ミーシアン軍。ミレーユが残念そうに呟いた。
レングとミレーユはクーハ城を出陣し、撤退するふりをして兵を進めていた。
トーマスはこの場にはいない。彼は伏兵部隊の指揮を行っていた。
「しかし、敵将に怪我を負わせたのだろう? 死んではいないとはいえ、敵は統率を乱すはずだ」
「そうだね。まあ、とりあえず、予定通りこの辺りで方向転換して、敵軍に野戦を仕掛けようか」
ミレーユの考えた作戦は、まずは撤退するふりする。そして、敵の油断を誘い、近くの岩場地帯に誘い込む、というものだった。
クーハ城に兵を置いていた場合、敵は飛行船をクーハ城攻めに飛ばしてくるだろうが、撤退したら敵は魔力水の消耗を嫌って、陸路で運んでくるだろうとミレーユは予想していた。
狙いは飛行船だ。ついでに敵将である。飛行船さえ壊してしまえば、勝ち目は出てくる。もちろん敵将を討ち取れたら、敵軍は混乱する、その場で撤退することもあり得るが、敵将を討ち取るのは難易度が高い。
飛行船は的が大きい。場所も分かりやすいし、壊しやすい。
「敵将が狙いに気づくのが早くて、逃げられちゃったね。そううまくはいかないものだね」
ミレーユは少しだけ悔しそうに言った。
「何、敵将にダメージを負わせただけでも、十分だ! それでは早速、敵軍に向かって進軍を始めるぞ! 敵軍は動揺しているだろうから、立て直す時間を与えてはならん!!」
ミーシアン軍はレングの指示で、方向を転換。
シューツ軍へ向かって、進軍を開始した。
(さて、敵軍が動揺してくれていたらいいけど、そう上手くは行かないか)
ミレーユは進軍しながら、そう思っていた。
途中でトーマス率いる奇襲部隊と合流する。
部隊の兵たちは全員生きていた。弓や魔法で遠距離攻撃をして、敵を混乱させた後、魔力水と矢が切れ次第、すぐに戻ってきたようだ。
急いで進軍している最中に、斥候兵から敵軍の情報が入ってくる。
「敵軍は街道のあたりで一旦進軍をやめ、体勢を整えている模様です!」
「無理に進軍せずに一旦やめて、兵たちの動揺を鎮めにきたか。中々敵将は冷静な男らしいね」
「ど、どうする?」
レングが不安そうな表情でミレーユに尋ねる。
「このままいくしかないね。不利になったら撤退したほうがいいだろうけど」
「そ、そうか……いかんな。将の私が不安がっていたら、兵も不安に思うだろう」
レングはそう呟き、表情を変える。不安そうな表情だったが、精悍な表情に変わった。
「皆の者もうすぐシューツ軍のいる場所に到着する! このまま歩を緩めず進軍するのだ!」
「「おおおおお!!!!」」
大声で指示を出す。兵士たちは大声でレングの声にこたえた。
ミーシアン軍は進軍を続け、シューツ軍が布陣している場所へと到着した。
すぐにレングは軍隊に指示を出し、戦闘するための陣形を整える。
前方に盾を持った兵を配置し、その後ろに魔法兵と弓兵を配置。
まずは遠距離からシューツ軍を攻撃する。
「放て!!」
レングの合図で、一斉に魔法兵と弓兵がシューツ軍を攻撃した。
敵軍も同じく遠距離からミーシアン軍を攻撃してくる。
シューツ軍の方が兵数が多かったが、ミーシアン軍の方が兵の質が高く、互角以上の攻防を繰り広げる。
「上空からの攻撃に注意しな!!」
ミレーユが叫ぶ。
飛行船が空に浮かんでいた。
魔法を放ってくる。
必死に防御するが、敵の魔法兵の攻撃と飛行船の攻撃を一気に受ける。
「うわあああああああ!!」「いたぁあああああ!」
兵たちの悲鳴がそこら中から聞こえ始める。
(流石にやばいね……やはり飛行船のある相手に勝つのは厳しいか)
ミレーユは悲鳴を聞きながらそう思った。
「撤退したほうが良さそうだな」
トーマスは冷静に戦況を分析してそう言った。
「て、撤退……そんな……」
「父上からの任務を遂行しなくては……でも、このままだと兵たちの命を無駄に散らせてしまう……」
葛藤している様子だった。
「あ!!」「あれは!!?」
後方の兵士たちがざわざわと騒ぎ始める。
ミレーユは不思議に思って周囲を確認する。
そして、上空を見て目を見開いた。
見覚えのある飛行船が、一隻飛んでいた。
その飛行船から、凄まじい魔法が放たれ、シューツの飛行船に命中。
シューツの飛行船はその一撃であっさりと大爆発し、墜落した。