作品タイトル不明
第325話 策
シューツ軍。
「飛行船のクーハ城攻撃の戦果ですが、魔法防壁は最後は壊しきり、城に損害を与えることに成功しました。ただ、与えた損害は軽微です」
「なるほどな。魔法防壁は一度破壊した。完全修復は出来ないだろう。次の攻撃ではもっと城に損害を与えられるはずだ」
野営地にて一人の男が、報告を聞いていた。
短髪黒髪、中肉中背の男である。
目は鋭く尖っている。
彼はロブ・トリントン。
シューツ軍の軍師、ヴァルトの一番弟子の男だ。
ヴァルトの彼への信頼は非常に厚く、今回はクーハ城攻めを任されている。
「このまま飛行船でクーハ城を攻撃し続けろと、飛行兵に伝えてこい」
「承知しました!」
伝令兵は急いでロブの命令を伝えに行った。
「クーハ城はこのまま飛行船で攻撃を続け、城をある程度破壊した後に、一斉に攻め込む。簡単な戦だ。まあ、最初の飛行船の戦いで勝利できた時点で、勝敗決まったようなものだな」
少し退屈そうにロブは呟いた。
このまま何の苦労もなく、クーハ城は落とせると確信していた。
「ロブ様!! 報告です!!」
クーハ城の様子を探らせていた、斥候兵が慌てた様子で駆け込んできた。
「クーハ城から、ミーシアンの兵たちが撤退しました!!」
「ほう」
予想していたのか、ロブはさほど驚いてはいなかった。
「まあ、この状況だとそれも選択の一つだろう。このままクーハ城を守っても勝ち目はないしな」
「これからどうしますか?」
「ふむ、一旦クーハ城を占拠する。飛行船へ出陣をやめるよう指示をしてくるのだ」
「はっ!」
兵は、ロブの指示を急いで伝えに行った。
(……ここで撤退は予想はしていたが……ただ、本当に撤退か? ふりの可能性もある……慎重に行かねばな)
ロブは考え込む。
その後、ロブは進軍を開始。
ミーシアン軍の動きを見ながら、ゆっくりとクーハ城に向かって、軍隊を進めて行った。
数日経過。
(ミーシアン側は完全に撤退したようだ。兵の動きを見させていたが、敵軍はクーハ城からだいぶ離れた場所まで移動した。撤退したと思って間違いないだろう)
ロブはミーシアン軍の動きを、そう分析していた。
ロブの率いる部隊は、順調に進軍を続け、あと2日ほどでクーハ城に到着するくらいの場所まで到達していた。
「……この地形」
ロブは周囲を見渡して、眉をひそめる。
現在進軍している場所は、岩石地帯だった。
緑がほとんどなく、大きめの岩がそこら中にそびえている。
砂が舞っており、あまり視界も良くない。
(兵を隠すにはうってつけの場所だ……慎重に進軍した方がいいか?)
そう思った瞬間だった。
「うわあああああ!!」
と前方から兵の悲鳴が聞こえた。
「……敵襲!?」
岩石地帯に伏兵が隠れていたようで、魔法や矢が飛び交ってきてた。
(クーハ城を空にしたのは罠か! 狙いは恐らく私……!)
将を討てば軍隊は大混乱を起こす。狙いはそれであるとロブは思った。
(いや…………待て、狙いは本当に私か?)
兵たちに指示を出そうとした直前、ロブは思いなおす。
「違う! 狙いは飛行船だ!」
現在飛行船は空を飛んでおらず、地上で運んでいた。
移動させるのには魔力水を消費するので、戦う時以外は陸から運んだ方がいい。
陸にあると言うことは、狙えば簡単に壊せるということだ。
ミーシアン軍の狙いは、自分ではなく、飛行船を破壊することだとロブは気づいた。
「飛行船を離陸させ、上空まで飛ばせ!! 今すぐ!!」
必死に命令をした。
飛行船が落とされると、戦の優位が少なくなる。
落とされるわけにはいかない。
思った通り、敵の伏兵は飛行船を狙い、魔法を撃ち込んでいた。
何とかロブの指示は間に合い、飛行船を空に逃すことに成功した。
「あ、危なかった……」
飛行船を落とされなかったため、ほっと一安心する。
「!!」
安心していたのもつかの間、今度は魔法が自分の陣に向かって飛んできた。
飛行船を逃がすことに成功した安堵感で、少し油断していたロブは反応が遅れる。
魔法はロブに当たらなかったが、近くの岩に当たって爆発。
岩のかけらがロブの右足に直撃する。
「ぐっぁ!!」
痛みで膝をつく。
「ロブ様!!」
「うろたえるな!! 敵が周辺に潜んでいるはずだ!! 守りを固めろ!!」
急いでロブは指示を出す。
(私と飛行船、どっちが狙いというわけではなくどっちもだったか。ただ、飛行船の方が的がでかく壊しやすいから、私を狙ったのはついでだろうがな)
痛みで汗をかきながらも、ロブは冷静に考える。
(なかなかやるが、どちらも防いでやったぞ……くくく、どうする? ミーシアン軍……)
ロブはにやりと笑みを浮かべた。