軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第323話 空戦

シューツ軍は侵攻を進めて、ローグ砦を攻撃し始めた。

ローグ砦の攻略では、飛行船を飛ばさず、シューツ軍は力押しで攻めてくる。

サイツ側も一旦、飛行船を飛ばさずに様子見をする。

ローグ砦の兵たちは、あまり士気が高くなく、逃亡兵も出始める。

劣勢になるとまともに戦わず、勝手に自己判断で撤退する将たちも見られ、アシュドは戦いにならなそうだと、砦の防衛は諦め、撤退を指示した。

シューツとの戦、序盤戦は大敗に終わった。

そして、砦を奪ったシューツ軍は、その勢いのまま、砦から出陣をして、侵攻を始めた。

「まあ、思った通りになったね」

クーハ城にて戦の準備を進めているミレーユはそう呟いた。

砦が破られたことで、飛行船で敵軍を攻撃することになった。

すでに飛べる状況にはしていたが、飛行船に何か問題がないか、最終チェックを行なっていた。

「確認完了です!! いつでも飛べます!!」

「よし。早速、出陣しな」

「はっ!!」

ミレーユの命令を受けて、飛行戦兵達が、勇ましく返事をする。

「今回は敵も飛行船を持ってるかもしれないから、迎撃に来る可能性もある。もし、やばくなったらすぐに撤退するんだ。一応、緊急脱出用の魔法具も持っているし、もし船自体が落ちそうになったら、これで逃げるんだよ」

ミレーユは兵達にそう言いつけた。

緊急脱出用の魔道具とは、風魔法の力を利用した、着地装置である。落下中に使えば、落下速度を遅くし、無事着地することができる。

もし、落下地点に敵兵がいれば、やられてしまう可能性が高いので、完全に安全とは言い切れない。

「承知しました! それでは行ってまいります!!」

勇ましく兵士はそう言って、飛行船を起動させて出発した。

「おお! これが飛行船か! 凄いな!!」

レングが目を輝かせている。

「なんだ? あんた見たことなかったのかい?」

「ちゃんと飛んだところを見るのは初めてだ! あんな高くまで飛ぶとはな……待て、あんなところから攻撃されては、こちらからは攻撃できないぞ!」

「だから脅威なんだよ」

「そ、そうだったのか……もしや飛行船でしか、飛行船を攻撃できないのでは!? じゃあ、もしこの飛行船が落とされたらかなりやばいではないか!!」

「ちょっと前からそう言ってるだろう。話を聞いていなかったのか?」

今更ながら驚いているレングに、ミレーユは呆れた表情で言った。

「斥候の兵に飛行船を追わせるかね。もし、飛行船同士で戦いが起こった場合、どういう戦闘になったか、報告してもらおう」

「それはいい考えだ! 飛行船の戦闘がどう行われているか、興味がある!」

「まあ、かなり高いからちゃんと見れない可能性も高いけど」

この世界には精度の高い望遠鏡は存在しない。

普通の人間より視力に優れた人間が斥候の役目を務めているが、それでもかなり高い位置でどういう戦闘が行われたかまで見るのは、難易度は高そうだった。

「勝敗が付いたら、それを早く知らせて欲しいし、どっちにしろ斥候は出さねばな! 至急指示を伝えてくるように!!」

レングは近くにいた伝令兵にそう指示を出した。

「さあて、どうなるかね」

飛び去る飛行船を見つめながら、ミレーユはつぶやいた。

それから数日後。

「味方の飛行船に対して、敵軍が飛行船を飛ばしてきて、応戦!! 味方の飛行船が墜落しました!!」

斥候の兵から悲報が舞い込んできた。

その報告を聞いたミレーユは「ありゃー」とあまり深刻じゃなそうな表情で受け止める。トーマスは、無表情である。

「な……なんと!」

レングは衝撃を受けたように目を見開いていた。

「乗組員は?」

トーマスが尋ねる。

「数名怪我を負いましたが、死者はいません」

「そうか。ならいいだろう。今回のことはいい経験になった」

そう言った。

「い、いや、よくないだろ! 勝てるのか? 飛行船なしで!!」

「さぁな」

焦っているレングの言葉に、トーマスは首を振りながら返答した。

「それで、戦闘の様子はどんなだったか聞かせてくれるかい?」

「はい……味方の飛行船が、敵軍の陣地に近づくと、敵軍は飛行船を飛ばして来ました。大きさは味方の飛行船と同じくらいです。速度もほぼ同じ。勝敗を分けたのは、魔法兵の能力で、敵の魔法兵の方が能力が高く、射程距離が長かったです。一気に距離を詰めるのは難しかったようで、勝てないと判断し撤退したのですが、結局一方的に魔法で攻撃されて、墜落してしまいました」

「なるほどね。性能が一緒だったか。そうなると、魔法兵の力で決まっちゃうよねー」

「飛行船は現状それほど早くないし、それなりにサイズもある。魔法兵の射程で負ければ、一方的に攻撃されちまうのは、当然と言えば当然だな。早い飛行船が出たりすれば、操舵技術の差とかも出て面白くなるかもな」

「ちょ、ちょっと何冷静に飛行船の分析をしているんだ」

あまり狼狽えていない様子の二人に、レングはそう言った。

「敵の飛行船は今どこにいるんだ! どこに向かってきている」

「それがどうもこの城に向かってきているようです」

「な、何!? バルット城には向かわないのか!?」

レングは驚いてそう言った。

「なるほど〜こっちの城から陥としに来るか」

「それは俺でもそうする。バルット城は堅牢だ。力で攻めですぐに落とすことは不可能だ。ある程度、長期戦になる。そうなると、この城の兵達は邪魔になる」

ミレーユが呑気そうに言う。トーマスもいつも通り冷静だ。

「ど、どうすればいい?」

まだ若いレングは焦っている様子だった。努力して成長してきたとはいえ、実戦の経験はまだまだ浅い。

「慌てなさんな。乗ってるのがシャーロットじゃないから、そこまで甚大な被害は出ないだろう。この城には一応、魔法攻撃に対する備えもある」

「ほ、本当か?」

「ああ。下手に出陣すると、兵を狙われてしまうから、そっちの方が不味いかもしれないね」

「焦らず待つしかないと言うことか」

「そう言うことだね」

不安そうな表情のレング。

「もう一つ選択肢があるとするなら、撤退することだね」

「て、撤退!?」

「飛行船も落とされたし、戦況も元々有利とはいえない。一回、クアット郡に撤退して、守りを固めると言うのも手だね。サイツが大敗して、そのままの勢いでペンドラまであっさり陥とされれば、クアット郡まで攻め込んでくる可能性もあり得る」

「な、何と……」

レングは考え込む。

「ま、この軍の大将はアンタだ。アンタが決めな」

「……」

口を閉じ、レングは悩む。

数秒悩んで、決心したような目つきをする。

「撤退はない! サイツ防衛は私の役目だ! 戦い抜いてみせるぞ!!」

勇ましい表情でそう言った。

「了解〜」

ニヤリと笑いミレーユはそう言った。