作品タイトル不明
4.次は兵力だな
光熹元年(189年)8月 司隷 河南尹 洛陽
ボンジュール、董卓だよ。(フランス風)
まんまと天子を保護したはいいが、手元の兵力には不安があった。
そこで歴史に語られる策を提案してみたら、意外にも賈詡が乗り気になる。
それならってことで、賈詡と牛輔に小細工を任せてみた。
「天子さまをお守りするため、董将軍の兵が涼州より駆けつけたぞ~!」
「「「ワーワーワー!」」」
屈強な涼州兵が、太鼓を打ち鳴らしながら洛内を練り歩く。
ついでに目的を連呼してやると、洛陽の住民もノリノリで 囃(はや) し立てた。
おかげで我が軍が増強されたように見られ、ぐっと発言力が高まった。
史実では夜間に軍勢を外に出し、それを昼間に再入城させることで、偽装したとある。
しかしこれはこれで、ちょっと無理があると思うのだ。
だって夜間に大軍が移動すれば、衛兵だけでなく、住民にも気づかれるだろ?
それを賈詡に相談してみたら、解決策を出してくれた。
まず2千人ほどの兵が部隊ごとに、演習やら警備の名目で洛外へ出る。
そして各部隊はその日のうちに帰還するが、その人数は半分しかいない。
残りは外で合流して、翌日、援軍の振りをして入城するのだ。
これを何回か繰り返すことで、3千人ほど水増しできた。
もちろんそれだけでなく、洛内には噂をばらまいてある。
”董将軍は天子さまのため、涼州から軍勢を呼び寄せている。 旗幟(きし) を明らかにしていない軍勢は、討伐されるかもしれない”
みたいな話だ。
これに慌てたのが、何進や何苗の配下だった兵たちである。
彼らは両将軍が死んでから、それぞれのしがらみで名家や実力者に囲われていた。
本来は袁紹とか袁術みたいな人間が、まとめるべきだったろう。
しかしあいつらは、宮中への無断立ち入りと宦官虐殺の容疑で、謹慎中なんだ。
え、史実だとすぐに大赦令が出たんじゃないかって?
そんなの、俺が許すわけないじゃん。
もちろんそういう動きはあったんだけど、断固、阻止してやった。
もっとも、あくまで謹慎だけで、いずれうやむやにされそうなんだけどな。
とにかく、ここまでやったうえで、俺は洛内に布告した。
”洛内の兵士たちは、前将軍 董卓の下へ集え”
とね。
もちろん天子にお願いして、勅許は得ているぜ。
こんな感じで手を尽くした結果、洛内に散らばっていた兵士どもが集まってきた。
その数、およそ5千人だ。
これで元の兵と合わせて8千人を掌握した俺は、圧倒的な力を手にした。
しかしそれでも不安要素は尽きない。
「おい、なんか丁原の野郎、兵を集めてるらしいな」
「ああ、執金吾の名の下に、募兵してるって話だ。このままだと、俺たちの兵も寄越せって言ってくるかもしれねえな」
「そうそう。それにあいつの配下にはけっこう猛者がいて、侮れないんすよねぇ」
どうやら丁原の野郎が、俺に張り合って兵力を増強しているらしい。
丁原自身もけっこうな武闘派だし、配下の兵もわりと強いので、侮れない勢力になりつつあった。
そこで俺は例のごとく、賈詡に話を振った。
「なあ、賈詡。なんとか丁原の力を削ぐ手はねえかな?」
「ええ? いや、そう言われましても……」
実際はいろいろと考えてるだろうに、まだ遠慮があるのか、賈詡の態度は煮え切らない。
そこで俺は指針を与えつつ、尻を叩いてやる。
「なんかこう、奴を追い落とす方法はねえかな。悪評を立てて失脚させるとか、弱みをつかんで脅すとか」
「いや、それはあまりに、悪どくないですか?」
「馬鹿野郎。これぐらい普通だぞ。俺たちは今、帝国の中枢にいるんだからな」
「いや、まあ、それはそうなんですけど……」
賈詡はそう言いながら、ようやく考えはじめたようだ。
やがてしばらくして、口を開く。
「嫌ですが、やるしかありませんね。丁原の配下の仲間われを誘って、一部をこちらに取り込むのはどうでしょうか?」
「おお、いいじゃねえか。でもお前だけで、できるのか?」
「正直いって、私だけでは手が足りません。他に協力者を雇えませんか?」
「ん~、そうだな。なんとかしてみるよ」
「お願いします。私はできるところから手を付けます」
賈詡の言うとおり、1人だけじゃ手が足りない。
なんとか使える奴を、リクルートしなきゃな。