軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3.まずはブレーンを

光熹元年(189年)8月 司隷 河南尹 洛陽

グッドイブニング、董卓だぜ。

第13代皇帝である劉弁を保護して洛陽に入城し、一晩経った。

宮中は昨日の混乱が尾を引いていて、まだ騒がしい。

そんな中で俺は今後の備えとして、ある人物を呼び出していた。

「 賈詡(かく) 文和(ぶんわ) 。お呼びと聞き、参上いたしました」

「うむ、よく来てくれた。まずは座ってくれ」

「は、失礼します」

そう、呼び出したのは、三国志で最強の軍師とも呼ばれる賈詡だ。

こいつは 牛輔(ぎゅうほ) (娘婿)の配下として、今回の遠征に同行していたが、まだ無名で重用はされていない。

俺の暗殺後に 張繍(ちょうしゅう) の配下として活躍し、やがて曹操に降伏して重用されるんだよな。

そんな賈詡を見据えて、用件を切り出した。

「知ってのとおり、俺たちは今、天子さまの守護を仰せつかっている」

「はい、畏れ多いことながら、とても名誉なことだと思います」

「ああ、そうだな。しかし宮中はいまだに混乱していて、何が起こるか分からん」

「……はい、不測の事態が起こるやもしれませんね」

「だろう? そこでだ、お前、俺のそばについて、助言をしてくれねえか?」

「ええっ! 私がですか?」

賈詡はひどく驚いているが、俺は平然と切り返した。

「ああ、聞けばお前、かなり 目端(めはし) が利くそうじゃないか。この難事を乗り切るため、その能力を 活(い) かしてほしいんだ」

「いや、私はしがない文官でして、そのような大役は――」

「頼むよ。実は以前からお前の仕事ぶりには、目をつけてたんだ。いつか抜擢しようと思ってたんだが、まさに今がその時だろう」

「は、はあ。そこまで言っていただけるなら、微力を尽くしたいと思います」

「おお、頼むぜ」

ようやく首を縦に振ってくれたが、以前から目をつけてたってのは嘘だ。

この時の董卓が知ってるわけねえからな。

しかし賈詡といえば、打つ手に失策なしと言われたほどの名軍師だ。

これからの苦難を乗り切るには、絶対に必要なブレーンだと考えた。

そこで俺は周りの人間に、”だれか目端の利く奴はいないか?”と聞きまわった。

そしてちょっと強引に彼に結びつけて、呼び出したって寸法だ。

いささか不自然に見えるかもしれないが、なりふり構ってる余裕はない。

まずは最高級のブレーンを得たことを、素直に喜ぼう。

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しかし優秀なブレーンを手に入れただけで、安心してはいられない。

俺は弟の 董旻(とうびん) と娘婿の牛輔、そして賈詡を呼んで今後の方針を打ち合わせた。

「おう、 旻(びん) 。洛陽の軍勢は掌握できたのか?」

「いや、それがなあ。洛内の兵力はあちこちの勢力が抱えこんでいるようで、バラバラなんだ。まとまった軍勢といえば、兄貴の他に 丁原(ていげん) と 橋瑁(きょうぼう) の手勢ぐらいじゃねえかな」

「やっぱりそうか」

まず話を振ったのは董旻だ。

こいつは 奉車都尉(ほうしゃとい) として洛陽で勤めていたので、兵を集めるよう、頼んであった。

しかし大将軍の何進と、車騎将軍の何苗(何進の弟)が殺されて、その兵力を握っていた将軍府が機能していない。

おかげで力の強い家に兵が抱えこまれ、まとまった軍勢は少ないのが実情だった。

それを聞くと、次は賈詡に話を振る。

「丁原と橋瑁はどうしてる?」

「大将軍が亡くなったことで、彼らも混乱しています。しかし朝廷の中に、丁原どのを取り込もうとする動きがあるようですね」

「う~ん、それはまずいな。あいつは俺の次に兵力があるから、力関係が逆転しかねない」

「はい、その可能性はあります」

この頃、丁原は2千人、橋瑁は千人程度の兵を抱えていた。

たしか丁原はこの後、 執金吾(しっきんご) (洛外の警備役)に任命されるから、うかうかしてるとやばい。

「そうなると、将軍府の兵を糾合したいんだが、何かいい手はないかな?」

「う~ん、そうは言ってもな……」

「いや~、無理っす」

「ちょっと私には思いつきませんね」

誰も案を出さないので、ヒントを出してみる。

「例えば、俺の手勢をこっそり城外に出して、翌日にぎやかに入城させるってのはどうだ? そうすりゃ俺の力が増したと思って、兵どもが集まってくるかもしれねえ」

「おいおい、そんな夢みてえな話」

「そうですぜ。まるで子供だましじゃねえですかい」

董旻と牛輔は呆れたように否定するが、賈詡は違った。

「いや、案外いけるかもしれませんね。それなりに工夫をする必要はありますが」

「おっ、そうか! いけそうか。よし、それじゃあ牛輔とお前に任せるから、手配を頼むぜ」

「ええっ、マジすか!」

「はい、微力を尽くします」

この手は史実で語られているんだが、本当に効果があるのかは、ちょっと疑問だった。

しかし賈詡がやれるって言うんなら、なんとかなるだろう。

このまま足元を固められると、いいんだがな。