軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第343話:砦攻略戦②

魔法部隊が連続して放った魔法により、見事に砦の壁の一部が崩れ落ちた。

最初に崩れ落ちたのは幅約5メートルほど。

けれど最初に崩れ落ちて以降も、魔法部隊による攻撃が続いており、その幅は徐々に広がりつつあって、もはや砦の外壁としての役割を果たせてはいない。

今回の作成における魔法部隊の役割は、砦の壁を破壊すること。もう少し具体的にいえば、マーラたちが牽くビークルが通れるだけの穴を開けること。

それは達成した。

ぶっちゃけてしまえば、マーラなら自分で砦の壁くらいぶち破れる。

魔法で進行方向をめちゃくちゃにしながら進めるし、体当たりだけでもおそらく吹き飛ばせる。

上から矢を撃たれようと、そもそも異常に身体が硬いし、最近は魔鋼製の鎧がお気に入りらしい。

とはいえ、みんなが役割を持つことも大切。

それぞれが役割を果たし、私はそれに見合った褒美を与える。

これが組織を上手く運営していくコツらしい。

そうして役割を与えられた魔法部隊は、見事にその役割を果たした。

「2班は敵の妨害を継続! 1班も余力がある者は加われ。全員、左右に分かれて道を空けろ! アーロン騎士団長、砦の壁を破壊しました」

魔法部隊の隊長アランが指示を出し、報告する。

それを受け、アーロンが指示を出す。

「ビークル突撃開始」

その声と同時、マーラたちの牽くビークルが3台、森から姿を現した。

一瞬でトップスピードに加速し、そのまま壊れた壁に向かい突き進んでいく。

その後ろから、『ユーテ』を駆る『ワーロフ族』の騎士も続く。

「・・・コトハ、あれはとんでもないわね」

「ええ。相対することになる敵兵が気の毒にすら思えます」

サーシャやヤートンさんがいろいろ言っているが、気にしない気にしない。

ビークルの実戦投入は初だけど、その破壊力というか、威力は分かっていたし。

突撃する訓練として、私やキアラが作った石壁を何枚も破壊してきているからね。

加えて、『赤竜』、そして「飛空団」により役割が減っていると感じている様子のマーラたちの張り切り方も尋常ではない。

・・・ビークルには多くの騎士が乗り込んでいるんだけど、乗り心地はお察しだね。

先頭のビークル、マーラが牽くビークルが砦の壁の穴が開いた箇所に突っ込んだ。

一切スピードを緩めないどころか、加速しながらの突撃は、壁の残骸を撒き散らし、壁の上でどうにか魔法部隊や迫り来るビークルを足止めしようと奮闘していた敵兵を蹴散らした。

「展開しろ!」

砦の内側に入ると同時、ビークルの左右、そして後ろの扉が開き、騎士と騎士ゴーレムが次々と降りていく。

作戦の第二フェーズが始まった。

♢ ♢ ♢

〜ヒロヤ視点〜

「ふんっ!」

騎士ゴーレムの持つ盾に剣を弾かれてがら空きになった敵兵の胴体を、袈裟懸けに一振りして切り捨てる。

血しぶきを上げ、声にならない呻き声とともに倒れ伏すその姿を見ても、昔のように吐き気を催すことはない。

この世界で生きていくと決め、騎士になると決めた。クルセイル大公領の玄関口ともいえるクライス砦の守護を任務として、周辺をパトロールしている際に、盗賊と出くわし、流れのままに戦闘、そして盗賊を切り捨てたのが最初だったか。

あのときの感触を忘れることはないと思う。一方で、敵を殺すことも含めて、俺が選んだ道。

カオリとユイハはもちろん、水原先輩・・・、コトハ様やカイト君たち、そして俺なんかの部下になっても一生懸命働いてくれている騎士たち。クルセイル大公領は俺がなんとしても守りたい場所だ。

そのためなら、俺はやるべきことをやる。

倒れた敵兵は死んではいないようだが、もはやこの戦いからは脱落したも同然。

俺はビークルの近くで待機する騎士に合図を送り回収を指示する。

「応急手当と拘束を」

「はっ」

戦争である以上、死人はでる。

最初に砦の壁を魔法部隊が破壊した際に、瓦礫となって崩れ落ちた壁の残骸の中には、敵兵の亡骸らしきものも見える。

俺も必要なら殺すことを躊躇いはしないが、無意味に殺すこともない。

今回の作戦では、敵を無力化した後、まだ息がある者は可能であれば応急手当の上、拘束する。

幸い、俺の周りにいた敵兵は、今ので最後だったので、回収できたに過ぎない。

「よし。次のポイントに向かうぞ」

同行する部下に声をかけ、次の敵へと向かう。

砦の中は混沌としている。

急いで攻める理由になった敵の増援。彼らは砦の中でテントを張っていたが、既に踏み荒らされている。

ビークルから降りたクルセイル大公領の騎士団が、敵の集まる場所をめがけて突撃し、各個撃破している。

また、砦の中は馬ではなく『ユーテ』という魔獣に跨がった『ワーロフ族』が走り回り、敵が集結することや、逃げ出すことを防いでいる。

「行け」

俺たちが次に相対したのは10人ほどの集団。

うち4人は、まともに装備も身に付けていない。

魔法部隊が壁を破壊するまでにはそれなりに時間があったと思うが・・・?

騎士ゴーレムを前に出し、攻撃を防ぐ。

その隙を突いて騎士が攻撃する。うちの騎士団の鉄板の戦い方だ。

1対1や、1対多で切り合う訓練も重ねているがこれは実戦。

可能ならば、被害の少ない方法を選べばいい。

俺が周囲の様子や、他の部隊の様子を確認している間に、ここでの戦闘も呆気なく終了した。

♢ ♢ ♢

〜ムヘル視点〜

騎士団長の「ビークル突撃開始」の合図を聞き、私たちも砦に攻め入ります。

もっとも、ビークルの後を追う『ワーロフ族』とは違い、我々の役割は砦の壁の上です。

魔法部隊が破壊した壁の残骸を足場に、壁の上に上がります。

「っ、て、敵襲!」

壁を上ると、破壊された壁の被害を確認しに来ていた敵兵と遭遇しました。

「・・・っ」

部下の1人が素早く短剣を振るい、目の前の兵士を切り捨てました。

この兵士は・・・、死んだようですね。

必要以上に犠牲を出さないというコトハ様のご意向には従いますが、戦いである以上死人は出ます。コトハ様も、我々の安全を最優先と念押しされていましたし。

私としては、ダーバルド帝国の兵士が死ぬことは、特に気にすることもないですね。

「可能であれば麻痺毒を用いて拘束を。自身と仲間の安全を最優先に。行きなさい」

部下たちは声を出さず頷いて応じました。

私たち『ランサー族』は、木々を用い立体的な機動を活かしたスタイルを得意としています。

森ではそのスタイルで魔獣を狩っていましたが、コトハ様の庇護下に入り、クルセイル大公領に移住したことで、森ではない場所での戦闘も意識する必要が出てきました。

そこで、これまでのスタイルを進化させ、手数の多さに搦め手を用いたスタイルを確立させました。

いくら切りつけても問題のない訓練用のゴーレムに感謝ですね。

搦め手は、コトハ様の従魔にも助力を願いました。

それがリン殿。

私も、森に生息するスライムを見たことはありましたが、リン殿は異質でした。

リン殿の特徴は大きく2つ。1つは今回もその役割で参加しているように、『マジックボックス』を利用した補給部隊としての役割。

そして2つ目は、多種多様な酸や毒を自在に操り、生み出すことのできる能力です。

私たち『ランサー族』の騎士は、人によりますが、5、6本の短剣を身に付けています。

私は6本の短剣を懐や腰、脚に身に付けています。

そのうち、4本の短剣には、リン殿特製の毒が塗りつけてあります。

この毒は、致死性はないものの、体内に取り込むと一瞬で身体が痙攣し、30分から半日ほどの間、麻痺します。

強い魔獣では麻痺が継続する時間は長くないものの、『人間』に過ぎない敵兵であれば、数時間にわたり身動きがとれなくなることでしょう。

部下たちが麻痺毒付きの短剣で敵兵を無力化していきます。

敵兵1人につき、私たちは2、3人で対応していきます。

壁の上に騎士ゴーレムを上げることはできないので、安全マージンを十分にとりつつ、敵の視界の外から、防具に守られていない箇所を1度切りつけるだけで足りるのですから、おそろしいですね。

それができれば、後は毒が効くのを防戦しつつ待つだけのことです。

かなり安全を意識した配置でしたが、それほど時間をかけずに、目に見える範囲の敵兵を無力化することに成功しました。

壁の上から砦の内部を見下ろしてみましたが、他の隊も順調そうです。

騎士が通り過ぎた後には敵兵が転がり、その一部はビークル近くで待機している騎士が回収していきます。

向こうでは、『ワーロフ族』の一団が、奴隷とされていた人たちを一挙に保護したようですね。

既に、この戦いの大勢は決したといえましょう。

最後まで抜かることなく、コトハ様に完全な勝利をお届けするのみですね。