軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第341話:最後の

サーシャたちに謝り、アーロンに連れられ会議室へ向かうと、既にうちの騎士団や文官組が勢揃いしていた。・・・文官組って呼び方アレだし、いい名称ないかな?

部屋に入り席に着くと、みんなが起立し一斉に頭を下げようとするので手で制し、

「それで、敵の数が3倍になったって?」

本題へ。私の問いかけに応じ、アーロンが1人の騎士に視線を向ける。

彼の名前はムヘル。『ランサー族』で、今ではうちの騎士団、というか領の諜報組織のリーダーのようなポジションにいる、男性の騎士だ。

現在の仕事はダーバルド帝国の砦や研究所などの施設を捜索し、その内情を探り、また監視することが仕事であり、どちらかといえば偵察部隊のような役割に近い。

『ランサー族』は、しなやかな体つきと長い尾を巧みに操り、木々を優雅に、静かに飛び回ることができる。あのバランス感覚はビビったよね。

周囲に大木が立ち並ぶ森の中や周辺に設けられた施設の捜索や監視をする上で、彼らの右に出る者はいない。後は、監視の目をかいくぐり抜けて、砦の外壁にもよじ登り、内情の監視も行っているんだとか。

さらに、都市の内部でも同様に諜報活動ができるよう、レーノと一緒に考えているとかなんとか・・・。ダーバルド帝国を攻める際にも、都市の情報は必要だもんね、うん。任せる。情報は大事。

アーロンに指示され、ムヘルが説明を始める。

「はい。先ほど戻った者によりますと、これまでは無かったテントが、砦内に数多く張られ、また明らかに人員の数も増していると。概算ですが、3倍は下らないとのことでした。多くが戦闘員、兵士であり、また首に輪を嵌められた者も多数見られたとのことでした」

出たよ・・・

奴隷、だよね、最前線に送られる兵士・・・、肉の壁として連れられてきているのか、小間使いとして部隊に付いているのか。

後者であればいい、ということもないけど、ダーバルド帝国の軍隊の練度から推測するに、前に送られる奴隷が生き残れるとは到底・・・

「できれば助けたいところだけど、後だね。その大集団の目的は何?」

奴隷にされている人たちを助けてはあげたいが、そのために大きな目的を逸することはできない。

砦を完全に掌握し、研究所を消し飛ばす。これは絶対だ。

私の質問に答えたのは、アーロンだった。

「考えられるのは2つでしょう。我が領を攻めるか、森を出て北上し、王都を狙うか。ああ、可能性としては、うちの攻撃予定に気づかれたことも考えられはしますが・・・、王都へ伝えた時期を考えても、考慮から外して良いかと」

なるほど。

私も、バレたとは思えない。そうすると2つだけど、普通に考えれば、

「まあ、王都だよね」

今のダーバルド帝国がうちの領を攻める?

攻撃予定はともかく、仮に存在に気づかれていたとしても、わざわざうちを攻めるか?

・・・そんな余裕はなさそうだよね。

ジャームル王国との戦線は硬直し、日々戦力、兵士を失い続けている。搦め手のつもりか、クライスの大森林を通してカーラルド王国に送り込んできた部隊の多くも、うちの騎士団や各地の領で倒されている。うち以外はそれなりの犠牲も出してはいるが。

そして、国内の混乱。カイトが王太子のベイルさんから聞いた話によれば、前に私がホムラやレーベルと襲撃したケーリンという町を筆頭に、皇帝への抵抗勢力が集結しつつあるらしい。それを王国も後押ししている。

ダーバルド帝国は完全に詰みなわけだ。

これを打破するためには・・・、序盤はかなり優勢に進めていた対ジャームル王国戦線は無理矢理停戦。カーラルド王国とはほとんど国境を接してはいない、というか南北に延びるクラリオル山脈のおかげで、簡単には攻められないから後回し。急いで国内を落ち着かせて、場合によっては反旗を翻した一帯は無視して、再起を図るって感じだと思ってたのに・・・

「はい。電撃戦で王都を攻め落とし、カーラルド王国を制圧する魂胆でしょう。カーラルド王国の王家、王宮による貴族掌握が不十分であると踏み、王都を征圧すれば寝返る者が多いと読んだのだと思われます」

レーノによる見解。そんなところだよね。

確かに、カーラルド王国も貴族はまだまだ不安定だけど・・・、高位貴族は結構纏まってた印象だけどなぁ・・・

それに考えたところで、実のところすることは変わらない。

潰すだけ。

「もしかすると、その砦にいる戦力が、ダーバルド帝国の残りの全戦力なのでは?」

1人解決していると、カイトがそんなことを。

「全戦力って?」

「今のダーバルド帝国にとって、カーラルド王国の王都を制圧することが、残された唯一の途だと考えているのなら、ジャームル王国との戦線維持や、帝都の守護に必要な戦力以外は、投入しているんじゃないかなって」

「・・・それが失敗したら終わりだもんね。出せる限りは出すか」

「うん」

「・・・・・・それがたった当初の3倍? いや、少なくはないけど、出せる限りでそれ?」

確か、事前に聞いていた砦の戦力が400弱。

そこに、追加で出せるだけ出して、合計1200届いたかどうか・・・

「どのみち終わってんじゃん」

私のため息交じりの声に、それぞれ頷き、短い返事が返ってきた。

「カイト様のご推測、そしてコトハ様のご意見、その通りかと。万が一を考え、砦の戦力を1500と見積もりますが、それでも全く問題なく、制圧可能です。もちろん、相手の死者は増えますが」

取りまとめるようにアーロンが話す。

それに、それが最後の戦力かどうかにかかわらず、とりあえず倒すだけか。

「分かった。・・・アーロン、作戦の実行を。予定通り、総指揮官はカイト、副官にアーロン。後のことは2人に任せるね」

「はい!」

「はっ」

「みんなもよろしくね」

「「「はっ」」」

♢ ♢ ♢

「って感じで、私たちとしては、ダーバルド帝国の最後の戦力で、起死回生の作戦を決行する予定なんじゃないかなぁと考えてるんだけど・・・、どう思います?」

私の質問に、頭を抱えるヤートンさんと苦笑いのサーシャ。

いやさぁ? ヤートンさんはアーマスさん、宰相のもとで働いているわけでしょ? つまり、カイトが王太子のベイルさんから聞いた対ダーバルド帝国作戦についても知っているのかなぁ・・・と。

そりゃあ、本来は機密情報に該当しそうなことも全て話して、「どう思う?」って聞いたわけだから、頭抱える気持ちも分かるんだけどね。私のせいなんだけどね。

「・・・・・・失礼しました。ここまできたら正直に。・・・その前にコトハ様」

「ん?」

「後で少しお時間をいただきたいのですが・・・」

「ん? 今でもいいけど?」

「・・・その、攻撃の準備が忙しいのでは?」

「忙しいのはカイトと騎士団かな? 私の仕事は、攻撃するって決めたところで終わってるから」

「・・・承知しました。ですが、まずはコトハ様のご質問にお答えいたします」

何やら諦めた様子のヤートンさん。

そして、サーシャは、ますます呆れてない? なんで・・・?

「砦に集結している部隊が、現状ダーバルド帝国が動かせる最後の部隊ではないかとのご指摘は正しいかと思われます」

ヤートンさんが教えてくれたダーバルド帝国の現状は大きく2つ。

カーラルド王国の分断作戦が効き、帝国は帝都、皇帝を中心とする勢力とケーリンの町を中心とする勢力に割れている。ケーリンの町には、皇帝に見切りをつけた有力貴族が私兵を伴い集結しており、それがダーバルド帝国軍の崩壊を引き起こしている。

現状、まともに機能しているのは、帝都を守る部隊と皇帝を守る近衛のみらしい。

2つ目は、ここしばらくの間、対ジャームル王国戦線には追加戦力が投入された様子はなく、また王国に侵入したと思われる部隊の数も激減していること。

要するに、兵が尽きている。

とすると、今、砦に集められている部隊が、最後の戦力であり、後がないのは間違いがなさそうだった。

「ありがとう。じゃあ、この部隊をきっちり片付ければ、ダーバルド帝国の終わりも間近ってことね」

「はい。既に終焉間近ですが、もはや挽回の策も尽きることでしょう。民からの徴兵も強化しているようですが、こちらも芳しくないようですし」

よし!

これは、きっちり片付けて、ダーバルド帝国を終わらせなくては。

その後もヤートンさんに話を聞いて、また王宮に伝えると喜ばれる情報を確認した。

そんなわけで聞きたいことも聞けたので・・・

「それで? ヤートンさんの話って?」

他にも聞きたいことがあるとか?

いや、そんな雰囲気でもなかったか?

「・・・はい。恐れながら、お願い申し上げたいことが」

「お願い? なに?」

・・・なんか怖いんだけど?

「・・・、私を、ヤートン・フォン・バロナムを、クルセイル大公殿下の配下の末席に加えていただくことはできないでしょうか?」

「・・・・・・は?」

はい?

・・・ん? え?

ええっと、サーシャ!?

サーシャの方を振り向いて助けを求めたが、相変わらず、サーシャは苦笑いを続けていた。