軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

467 スーパー戦隊……じゃない、スーパー銭湯

あの後、王宮と貴族界が大混乱に陥ったらしい。

……上姉様の、大変身に……。

女神の御寵愛を受けただとか、実は女神の生まれ変わりだったのを隠していただとか、色々と大騒ぎになったらしいのだ……。

そして、正体を現したのは、ようやく婚約者を亡くしたことによる心の傷が 癒(い) えて、新たな縁談を受け入れるつもりになったからだと思われたらしい。

……うん、まあ、確かにそういう心境になったらしいのは確かなんだけど……。

とにかく、そういうわけで、婚約話が大量に舞い込んでいるらしいのだ。国内の貴族家からも、国外の上級貴族や王族からも……。

勿論、全部断るか保留にしているらしいけどね。

保留というのは、即答で断るのは無礼に当たる相手だとか、全部断ると後で嫁ぎ先がなくなると困るので条件の良いところをいくつか確保しておこうという、王様の配慮によるものらしい。

……上姉様本人は、勿論 狙っている相手(・・・・・・・) がいるのだから、他の縁談には全く興味がないらしいけれど……。(サビーネちゃん情報による。)

サビーネちゃんは、自分が予想していたよりも遥かに 大事(おおごと) となってしまい、かなり焦っていた。

サビーネちゃんでも、読み違えることがあるんだ……。

まあ、良い方にズレたのだから、問題はないよね。

大好きな上姉様の幸せに繋がるなら、サビーネちゃんも嬉しいだろう。

そして私は、今回のサビーネちゃんの お願い(・・・) を聞くことによって、貯まりまくっているサビーネちゃんの私に対する『ポイント』を少し減らすことができた。

……ほんの少しだけどね。

いや、ポイント数としては、かなり消費させたんだ。

ただ、サビーネちゃんはあまりにもたくさんの、私に対する 貸しポイント(・・・・・・) を蓄えている。

それだけのことなのだ……。ううう……。

何とかしないと、将来、マズいことになりそうだよ……。

……まあ、それはいい。それはいいんだ……。

問題は、こっちだ。

現在領地に戻っているイリス様から届いた、書簡。

『すーぱー銭湯は、いつ頃オープンできるのですか』という、文面は普通なのだけど、行間から『まだですか! 早くしなさい!!』という圧が滲み出ている、書簡……。

いや、実は、かなり進んでいるのだ。催促が来るのは分かっていたから、頑張って進めたから。

……でも、早く作ると、その次を。それをやれば、更にその次を、と、いくらでも要求が続くに決まっているから、準備は進めているけれど、実際の現地作業はあまり進めていなかったのだ。

なので、日本で設計・製作を依頼していた機械類は、概ね完成しているんだよね……。

引き延ばしも、そろそろ限界か……。

仕方ない、現地作業を進めるか……。

* *

「あ、施主様、いらっしゃいませ!」

私が現地に顔を出すと、施工主……工事を受注したところの経営者……が慌てて飛んで来て、挨拶してくれた。

ここはボーゼス領だし、受注会社もボーゼス領の会社だ。そしてお金を出しているのは、ボーゼス侯爵様。

でも、施主……発注者としての権限は、全て私のものになっている。工事の確認も、指導の権限も……。

だから、施工主側は、工事に関してはボーゼス侯爵の言葉より私の指示の方を優先するようにと指示してあるのだ。ボーゼス侯爵から、 直々(じきじき) に……。

「本館の ガワ(・・) は、ほぼ完成しているみたいだね。あとは、内装とお湯回りか……」

現在は、造船業界で言うところの『進水した時点』、つまり 船殻(ドンガラ) ができたばかりの状態みたいなものだ。これから、船で言うと機関部や機器類の取り付け、内装工事とかに相当する作業が始まる。

……具体的に言うと、水やお湯の配管、浴槽関係、ボイラー、濾過装置、内装とかだ。

まあ、その殆どは日本で作ったものを設置するだけなんだけどね。

お客さんが宿泊するところやお食事処とかは、隣接した別の建物になる。

何が起こるか分からないから、銭湯部分は他の施設とは別の、それだけのための建物にしたのだ。

お風呂部分と宿泊部分を同じ建物にすると、湿気が多いとか、夏場に『暑い』とかのクレームが出るかもしれないしね。

なので、ごく普通の建物である他の施設は、普通に建築されているのだ。

そのため、若干の設備は地球のものを採用しているものの、ほぼ全てをここの建設会社へ……というか、ボーゼス侯爵家に丸投げしている。

侯爵様本人だけでなく、次男のテオドール様にも、経験のためにと工事の進捗状況の管理とか、手抜きが行われないように査察するとかの仕事をさせているらしい。

初対面の時は15歳だったテオドール様も、もう17歳だものねぇ……。

アレクシス様が、本人の宣言通りに自分は今の子爵位のままで、ということになれば、テオドール様がボーゼス侯爵家を継ぐことになるのだから、そういう教育も必要か……。

……でも、上姉様が降嫁されるなら、侯爵家を継いだ方がいいんじゃないかなぁ、アレクシス様……。

元々評価が高かったらしい上姉様、今回の『お化粧大作戦』のせいで、とんでもないことになっちゃってるらしいからなぁ。

新興子爵家程度じゃ、荷が重いんじゃないかな?

あ、そうそう、スーパー銭湯の現場査察は、イリス様もやっているらしい。

侯爵様から指示されたわけでもないのに、ほぼ毎日、顔を出しているとか……。

殆ど、苛めだよね、それって……。

イリス様に毎日現場で睨み付けられて、手抜き工事なんかできるはずがないよね。

正規の担当者であるテオドール様の査察と、時たま確認に来る侯爵様。

勿論、私はしょっちゅう指導や確認に来る。

更にそこに、イリス様が毎日のように来て、技術的なことは何も知らないくせに色々と口出しをする。

現場責任者は、胃痛と心労で倒れてもおかしくないよね。

というか、普通、倒れる。

こんなことになると分かっていれば、いくら儲かるとはいえ、この仕事を受注したりはしなかったんじゃないかな。

受注したの、後悔していそう……。

「……イリス様は?」

「先程、お帰りになりました……」

私の質問に、施工主さんがげんなりしたような顔で、そう答えてくれた。

やっぱり、今日も来ていたのか……。

イリス様、どんだけ待ち遠しいんだよ、スーパー銭湯のオープン……。

あんまり毎日来て、そんなに工事しているみんなにプレッシャーを掛けていたら、逆効果だよ。

緊張したり萎縮したりして、却って作業効率が落ちてるよ、多分……。

「進捗状況は、どんな感じかな?」

相手は年配の経営者だけど、私はあまり丁寧な喋り方はせず、フランクな感じにしている。

イリス様の相手で疲れているだろうから、あまり負担を掛けたくないのと、私が丁寧な話し方をすると、向こうは私のことを『貴族家当主』、『救国の大英雄、雷の姫巫女様』として相手しなければならないから、本音での話をしてくれなくなっちゃうだろうからね。

なので、敢えて軽い喋り方にしているのだ。

「はい、ようやく建物本体の工事が終わりまして、内装が始まりました。

排水管の埋設とかは終わっていますから、併行してボイラーや特殊機械とかの設置も始めています」

うむうむ、順調だな……。

あ、『特殊機械』というのは、循環濾過装置だとか、人力による水流発生装置だとかの、地球製の機器のことだ。

ボイラーも地球製だけど、燃料は薪や石炭で、ここの人達で保守整備ができるよう、なるべく単純な造りにしてあるので、『特殊』の範疇には入れていない。

お風呂のシステムは、循環濾過掛け流し併用式だ。

これは、循環濾過と源泉掛け流しを併用する方式で、両者のいいとこ取りを狙ったのである。

ボイラーの燃料節約、水温の安定、水の汚れを抑える、その他諸々……。

湧水が充分な温度であれば良かったのだけど、そう都合良くは行かなかった。

なので加熱せざるを得ず、そうなると燃料が必要となるので、完全掛け流し方式だと厳しくなるのだ……。

燃料代もだけど、木々をどんどん伐採して周りが禿げ山に、というのは嫌だからね。

早く石炭を見つけたい……。