軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

466 色々と…… 3

あの後、休憩時間に、侍女さんから謝罪された。

ハイになっちゃってて、ちょっとおかしくなってたらしい。

……まあ、化粧技術のインパクトに当てられちゃったのだろう。仕方ない、仕方ない!

この技術を見せた時は、みんないつもそんな感じだから気にしないでいいよ、と言ったら、かなり恐縮されて、そして感謝された。私の寛大な態度と、この技術を自分に伝授してくれたということに対して。

確かに、この技術を身につけたら、どこの貴族家でも高給で雇ってくれるだろう。

一生、働き口には困らないよね。

……って、この子、平民のメイドじゃなくて、貴族の娘が行儀見習いという名目でのコネ作り、王族や上級貴族家への売り込みとかのために王女様の侍女をやってるんだった……。

侍女は、メイドとは違うからね。偉い人の身の回りの世話や雑用とかをするけれど、下働きの労働者とかじゃなくて、秘書みたいなものだ。上級貴族家の奥様やお嬢様の侍女どころか、王女様の侍女なんて、憧れの職業なのだろう。

それって、凄い競争率だったのだろうなぁ、多分……。

でも、大丈夫なのかな。こんな技術を会得しちゃったら、王家が絶対に手放してくれないよね。

上姉様が嫁ぐ時には、一緒に連れて行かれちゃうんじゃないの?

上姉様が遠い他国へ嫁ぐんじゃないことを祈った方がいいかも……。

それと、私がソロリティで売っている化粧品は、種類が少ないからね。

今日ここで学んだ技術を使って全能を発揮するためには、私が用意した化粧品や化粧道具が継続して入手できないと難しいだろう。

だから、うちが特別に上姉様のためにそれらを供給している間はいいのだけど、それが途切れるようなことがあれば、どうなることやら……。

ま、この世界にも元々ある程度の化粧品はあったし、うちの化粧品を知れば、似たようなものを作ることも可能だろう。あまりこの世界の技術力と女性達の執念を甘く見ない方がいいよね。

……あ、休憩時間、終わり?

何だか、やけに張り切ってるなぁ、美容部員のお姉さん……。

* *

……終わった……。

今日は、休憩を挟んだとはいえ、朝から夕方までずっと化粧の特訓だった。疲れた……。

化粧をしては落とし、また化粧をしては落とし……。

それはもう、お肌が傷むんじゃないかというくらい……。

上姉様だけでなく、私とサビーネちゃん、そして侍女さんも、練習台として化粧させられた。

美容部員のお姉さん自身も、化粧を落としてスッピンになって再度化粧して見せたり……。

うん、凄かった……。

『平たい顔族』である私でさえ、あの、その……、割といい感じになったりしちゃってたのだ。

なので当然、上姉様、サビーネちゃん、そして侍女さんと来たら、もう……。

あ、侍女さんも伯爵家の三女だから、勿論貴族顔の美人だよ。

それに、王女様の侍女ということは、高倍率の選抜試験を勝ち抜いた人なんだからね。当然のことながら、容姿も選抜の条件に入っているであろう試験を……。

化粧された自分の顔を鏡で見て、『勝った……』とか呟いていたけれど、自分が化粧して、上級貴族の跡取り息子を落とそうとか考えていない? その方が、王女様の侍女をやって地道に地歩を固めるより手っ取り早い、とか思って……。

上姉様用の化粧品を勝手に使ったりすれば、クビになっちゃうよ、侍女のお仕事……。

とにかく、そういうわけで、終わった。

みんな、もうぐったりとしている。

でも、疲れ果てた様子の中でも、やり遂げた感で満足そうな美容部員のお姉さん。

そして、野望に目をギラつかせている侍女さんと、自分が招いたこの事態に、少し反省しているような様子の、サビーネちゃん。

上姉様は、……放心状態だ。

疲れ果てたからか、化粧した自分のあまりの戦闘力に驚いたのか、現状が理解しきれずにオーバーヒートしているのか……。

しかし、とりあえず今、私にはやらねばならないことがある。

「ありがとうございました。これ、お約束の依頼料と買い取り品の代金です」

美容部員のお姉さんは、ゆっくりと手を差し伸ばして封筒を受け取り、バッグに収めると、代わりに別の封筒を取り出して、渡してくれた。

……うん、領収書だ。買い取り品の金額分の……。

依頼料の分は、領収書はない。

ま、貰っても経費にはできないしね。領収書を貰った、買い取り品の分もだけど……。

美容部員のお姉さんは、笑顔で帰っていった。

今回はホテルの部屋をそのまま使ったから、目隠しや転移の必要はなく、そのまま退室して……。

そして、上姉様と侍女さんをドアの前に立たせて、目隠し。

雑貨屋ミツハの室内に転移して、ドアを開け、私が侍女さん、サビーネちゃんが上姉様の手を引いて、室外へ。

ドアを閉めて、目隠しを外し、みっちゃん……、いやいや、ミッション・コンプリート!

そのまま一緒に1階へ下り、待たせていた護衛に受け渡し。

後は、馬車で王宮へお帰りだ。

時間が掛かるから、馬車と護衛の皆さんはいったん王宮に戻って、夕方になったら迎えに来てくれって言ったのだけど、『ここで待つ』と言って、頑として受け入れてもらえなかったんだよねぇ。

……まぁ、よく考えたら、護衛対象を置いたまま護衛の者が帰って、のんびり休んでいるわけにはいかないよねぇ……。そんなのが上官や王様にバレたら大変だよね、確かに……。

ドアには『本日休業』の札を掛けておいたし、商品には触らないこと、そして私達が大声で助けを求めるか大きな音がしない限り階段を上がらないこと、って何度も念を押しておいたから、おとなしく待っていてくれたらしく、問題なし。

お手洗いは……、うちのを使われるのはちょっと嫌だな、と思っていたけれど、使うなと言うわけにも行かず、まだ一度も使ったことのない壺の中の汚物を処理しなきゃならないかと覚悟していたのだけど、使われた形跡はなかった。

別のところへ行ってくれたのか、任務中はお手洗いに行かないよう訓練されているのか……。

いや、私やサビ・コレコンビは、お手洗いの時には日本邸へ行くからね、私の転移能力で……。

その方が、後で壺の中身を処理して、更に壺を洗うことを考えれば、100万倍楽ちんだからね。

そして、上姉様と侍女さんが会得した化粧技術だけど……。

こんなに長時間、プロが付きっきりで指導したのだ。なので、『ソサエティー』のメンバー達より上達している。

……そしてここ、旧大陸のゼグレイウス王国においては、地球の化粧品はあまり出回っていないし、『ソサエティー』のメンバー達もいない。

『ソロリティ』のメンバーは、美容部員のお姉さんから直接指導を受けてはいないので、『ソサエティー』のメンバー程の技術はない。

つまり、上姉様と侍女さんは、剣と槍で戦われている戦場に、自動小銃とロケットランチャーを持って突入するみたいなものだ。

鎧袖一触。

無敵チート。

俺TUEEE!

圧倒的ではないか、我が軍は!

恋愛に関しては弱気だった上姉様が、自分に自信を持って強気に出るようになるのか。

それとも、性格や態度は変わらず、今まで通りで男性側からアプローチをかけてくれるのをただひたすら待ち続けるのか。

……あとは、本人次第だよね……。

「…………」

「ん? 何、その複雑そうな顔は……」

何だか、サビーネちゃんが微妙な顔で私を見ている。

「……いや、何でもないよ。何でも……」

「そう?」

いつもなら、私には男性の気配が 欠片(カケラ) もないことをからかってきそうなパターンなのに、さすがに私に気遣ったのか、突っ込みの気配がない。

サビーネちゃんも、少しは私に対する心遣いというものを覚えてくれたか……。

うむうむ!