軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

468 狼は狼を呼ぶ 1

スーパー銭湯の方は、順調に進んでいる。

人力の水流発生装置とか、お食事処のメニューとかも、製作が進んでいる。

あとは、まあ、工事の人達任せだ。

……そして今、潰れた新大陸の方ではなく、我が新たなる母国であるゼグレイウス王国の方の『ソロリティ』で、ちょっと心配事が……。

私、サビーネちゃん、ベアトリスちゃんの3人は、まぁ、『名誉会員』みたいな感じで、お茶会にはたまにしか参加しないのだ。

私達が出ると、みんなが私達にばかり話し掛けてきて、楽しいお茶会として機能しなくなっちゃうから……。

それじゃあ、会長であるアデレートちゃんや、副会長であるティーテリーザちゃん達がやりにくいだろうしね。

だから、お茶会の様子は毎回アデレートちゃんから報告を受けているのだけど……。

「では、それが可決してしまった、と……」

「遺憾ながら……」

アデレートちゃんの説明によると、前回のお茶会で、メンバーのひとりから出された動議……構成員が提出する、議論と採決を経るべき提案……が、賛成多数で通ってしまったというのだ。

「それがその、『 目安箱(めやすばこ) 計画』だと……」

「遺憾ながら……」

多分、ここの言葉では違うニュアンスの言葉なのだろうけど、私の頭の中の自動翻訳システムが『目安箱』って翻訳しているんだよ……。

アデレートちゃんの説明によると、どうやらその『目安箱計画』というのは、助けを求める者がその箱の中に書状を入れれば、 謎の(・・) 、 正義の味方(・・・・・) が何とかしてくれる、というものらしい。

「妖怪ポストかッ!

……あ、いや、目安箱だったよね……」

妖怪ポストのことを知らないアデレートちゃんは、ぽかんとしている。

そりゃ、反応のしようがないか……。

「そんなモノを設置したら、どうなるか分かってるよね?

上級貴族の御令嬢達と交流する機会を求めたり、金儲けのタネにしようとしたり、自分勝手な欲望で他者を悪者に仕立てようとしたりする連中が、どんどん投書するよね?」

「……い、一応、そういうのの対策を考えてはいるのよ……」

アデレートちゃんはそう言うけれど、面倒事ホイホイとしか思えないよ。

……というか、それって、面倒事を『ソロリティ』に丸投げするためのシステムじゃん……。

「誰も反対しなかったの?」

「私と補佐のカトルナちゃん、副会長のティーテリーザ様とその補佐のラステナ様は反対で、懸命に説得はしたのですが、……投票の結果、満場一致で……」

「……え?

どうしてそれで、 満場一致(・・・・) になるの?」

最低でも、4票は反対票があるはずでは……。

「いえ、私達4人は、 役職者としての義務(・・・・・・・・・) で反対し、説得に回りましたけれど、ひとりの『ソロリティ』メンバーとしましては、あの、その……」

「あんたも そっち側(・・・・) か~い! 賛成票を投じたんか〜〜いっ!!」

アカン……。

これはもう、私達……私、サビーネちゃん、ベアトリスちゃん……が強権を発動して中止命令を出さない限り、止められない。

そして、私達3人以外が全員賛成だということは、強権発動は完全に私達が皆の意思を押さえつけ、ねじ曲げるということになる。

……それは、『楽しい親睦団体』としては、やるべきじゃない。

でも、明らかに『厄介事のタネ』なんだよなぁ……。

よし、ひとりで考えるのはやめて、ちゃんと相談しよう!

* *

「ミツハ、そんな面白そうなコト、勿論私も参加するわよ!」

「姉様、人生は楽しんでナンボ、だよ!」

「あああああああ〜〜!!

ベアトリスちゃんとサビーネちゃんは、こういう性格だったあぁ~!!」

「ミツハ、何を今更……」

コレットちゃんに、 止(とど) めを刺された……。

「命令で無理矢理、というのが嫌なら、もう止められないよね?」

「その通りでゴザイマス……」

サビーネちゃんに、分かってはいたけれど認めたくなかったことを、ズバリ指摘された。

うん、そうなんだよね……。

「……で、その『考えている対策』というのは?」

「うん、それなんだけどね……。

投書した者の方に、絶対的な正義があること。内容に一切の虚偽がないこと。

自力ではどうしようもないこと。……面倒事を押し付ける、という形ではないこと。

金銭関係の 縺(もつ) れではないこと。……但し、詐欺行為や暴力、強要、違法行為等による場合を除く。

『ソロリティ』を利用しようとしたり、利益目当て等ではないこと。

……一応、このあたりは押さえているみたいなんだけど……」

「駄目だね」

「駄目よね」

「駄目だよね~」

全員に、一蹴された。

うん、まぁ、私もそう思うよ。

そんなの、投函が殺到して収拾がつかなくなるし、嘘や偽装が 蔓延(まんえん) するに決まってる。

お金で雇った者に投函させたりね。

お金に困っている少女に小銭を握らせたり、強制して訴状を書かせたりするのは、簡単だ。

それに、10人の悪党を懲らしめても、ひとりの無実の人を誤って弾劾すれば、台無しだ。

……そもそも、お嬢様達には捜査権も逮捕権もないし、いくら護衛が付いているとはいえ、複数の者に本気で襲われれば、どうしようもない。

貴族に危害を加えれば大変なことに、とは言っても、証拠がなく犯人が分からなければどうしようもないし、小娘ひとりを殺すくらい、金貨1枚出せば依頼を受けるゴロツキくらいいくらでもいるだろう。

……余計な敵を作る必要はない。

それに、依頼されて受けるなら、それはもうお嬢様達のボランティアの域を超えている。

アイツの依頼は受けたのに、どうして俺の依頼は受けてくれない。

投函すればちゃんと助けてくれるんじゃなかったのか。

直接会って、話を聞いてくれ。

アイツに金を払わせてくれ。

そんなのが湧いて出るに決まってるよ。

だから……。

「やっぱり、そういうのは自分達で見つけないと駄目だよねぇ……」

「うん。みんな、『やりたいこと』は、もう我慢できないと思うよ。

だから、一般募集はやめさせて、 事件は(・・・) 、 自分達で見つける(・・・・・・・・) 、ってことにすれば……」

「それと、あまり本格的なヤツ……王宮の査察官とか兵士とかが 出張(でば) るような事件とか、有力貴族が本気で反撃してくるようなヤツとかは、避けるようにしなきゃね。

所詮はお嬢様達のお遊びなんだから、政治的にも身体的にも、危ないことはさせられないよね」

サビーネちゃんに続き、ベアトリスちゃんからも意見が。

……そうなんだよね……。

みんな、有力貴族のお嬢様達なんだ。あの子達みんなが大変なことになっちゃえば、貴族界が大混乱に陥る。

そしてそれだけではなく、実家や派閥を巻き込んだ、血みどろの復讐劇が起こる可能性も……。

下手をすると、貴族領同士の争いががが!!

新大陸の『ソサエティー』なら、女神の御加護だとか聖女だとかで、表立って敵対したり危害を加えようとしたりする貴族はいないけれど、 旧大陸(こっち) じゃ、『ソロリティ』にはそんなネームバリューがないからねぇ……。

一応、私達……私、サビーネちゃん、ベアトリスちゃん……がいるけれど、ただの名誉会員みたいな感じだから、『ソロリティ』の箔付けのための名義貸しみたいに思われている可能性があるんだよね。

だから、『ソロリティ』のメンバーに何かあっても、別に私達は気にもしないだろう、と……。

なので、あまり無茶をさせるわけにはいかないんだよ。

さすがに、 旧大陸(こっち) じゃあ、『御使い様降臨作戦』は使えないからねぇ……。