軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

418 招 待 7

2日目の、王都観光。

今日は、みんな普通の平民の服を着ている。

昨日は、『他国から来た、ちょっと裕福な家の子供達』という感じでチョイスした服だったけれど、今日は『この国の地方都市から来た、ごく普通の平民の娘』という感じだ。

その方が、ここの人達と話しやすいと思ったから。

そして、目論見どおり、食べ物を買った屋台のおじさんとか、公園で暇そうにしていたお年寄りとかに色々なことを聞けた。

……サビーネちゃん、どうしてそんなに初対面の人から情報を聞き出すのが上手いんだよ……。

可愛いからか? 可愛いからかッ!!

……あ、王女教育の中に、会話術とか人心掌握術とか、そういうのもあるのですか、そうですか……。

でも、そういうのの域を超えていると思うんだけどね、サビーネちゃんのそれは……。

まぁ、そういうわけで、昨日は丸々一日、自分達の楽しみのために観光したのだけど、今日は情報収集……この国の 生(なま) の国情調査……が目的だから、半分仕事みたいなものだ。

サビーネちゃんは『ゼグレイウス王国第三王女』としての。そして私は、同じく『ゼグレイウス王国貴族、ヤマノ女子爵』としての……。

でも、仕事半分とは言え、充分楽しんでいる。

で、そろそろ今日はもう引き上げようかと思っていたら……。

「……ひっ、姫巫女様でございますね!!」

二人連れの兵士に声を掛けられた。

私がこの国に来ていることを知っているのは、王宮関係者だけだ。

……ということは、王宮の手の者かな?

いや、こっちから訪ねていったのに、会わずに放置、つまり追い返されたというのに、何を今更……。

「いえ、人違いです」

うん、自分の身元も明かさない、武器を持った知らない人から突然声を掛けられて、正直に答える必要はないよね。

黒髪黒瞳……実際には、瞳は 茶色(ブラウン) だけど……の者は、この世界にもいる。

だから、外見だけで私だと決めつけられはしないはずだ。今は平民っぽい服装をしているし。

『姉様は異国風の顔立ちだし、保護者らしき者の姿が見えない女の子の3人連れだし、キョロキョロしていたから地元民じゃないと思われてるだろうし、……ああそうですか、というわけにはいかないと思うよ……』

サビーネちゃんが、小声で、日本語でそう言ってきた。

勿論、小声とは言え、兵士達には聞こえている。

でも、自分達には理解できない異国の言葉での会話だから、私達がゼグレイウス王国の者ではなく遠い異国から来た、と思ってもらえる確率が、少しは……。

「王城へ、御案内いたします!」

……なかったね、うん。

仕方ない、姫巫女だということは、認めるか……。

否定しても、どうせ絶対に信じてくれないだろうから、時間の無駄だ。

だから……。

「いえ、王城には、一昨日訪問しました。

それで、陛下にはお会いしていただけず、追い返された身。

なのにしつこく何度も訪問するのは、陛下に対するとんでもない無礼になってしまいます。

あなた方は、私に陛下に対して喧嘩を売らせ、我が国との戦争を起こさせようと?

戦争が起きた場合、その全ての責任を、原因となったあなた方おふたりが取ってくださると?

……お名前、お聞きしてもいいですか?」

「「え……」」

とんでもないことを言われ、口を開けたまま固まっている、兵士コンビ。

……そりゃまぁ、ただ命令に従って私達を王城に連れて行こうとしただけなのに、戦争の全責任を負わされるなんて言われれば、フリーズしてもおかしくないか。

いや、フリーズして当然だよね。

こういう、公僕的な立場の人は、何かあっても自分が責任を取ることはないと思っているから、強気に出たり、偉そうな態度を取ったりできるんだよね。

だから、『命令を遂行する、一人の兵士』という名も無きモブとしてではなく、名前を確認して、個人としての責任を追及するぞ、と言えば、途端におとなしくなるんだよね。

「あ……、い、いえ、決してそのようなことは……」

うむうむ、これから、どう出るかな。

まさか、力尽くで無理矢理、というような真似もできないだろうし……。

と思っていたら、今まで黙っていた、もうひとりの方が……。

「お願いします! もし姫巫女様を見つけたのに王城へお連れできなかったとなれば、私共の首が……。解雇、という比喩的表現ではなく、物理的に……。

結婚したばかりなんです、妻のお腹には、子供がいるんですぅ……」

ぎゃあ!

卑怯なああァ〜〜!!

コイツ、卑怯くさいぞ!

サビーネちゃんとコレットちゃんも、顔が引き攣ってる。

これじゃ、隙を見て転移で、というわけにもいかないじゃん!

逃げられないよ……。

コンチキショーめっっ!!

* *

……というわけで、連れてこられました、王城へ……。

先に宿を取っておかないと、と言ったところ、『客室が御用意されますので……』と言って、却下された。

うん、一旦私達を連れて行けば、もうこのふたりの責任じゃなくなるもんね。

だから、宿屋からそのまま姿をくらます、ということは想定済みか……。

まあ、王城の客室からでも姿をくらますことはできるから、問題ないと言えば、問題ないか。

通されたのは、前と同じ、待機室。

椅子とテーブル以外は、何もない。

まぁ、ただ待機するだけの部屋に、他のものは 要(い) らんわなぁ……。

ここで待たされるのは、分かる。

いくら何でも、事前予告なく連れてこられた私に、国王がすぐに会いに来られるわけがない。

まぁ、1時間は待ってあげよう。

……1時間が経っても、来なければ?

うん、そりゃ、帰るよ。

今回は部屋の中に見張り……メイドさんひとり……が付いているけれど、問題はない。

私は『女神の御寵愛を受けし愛し子、雷の姫巫女』なのだから……。

奇跡のひとつくらい見せてあげた方が、以後、偉そうな態度を取られなくなるかもしれないし。

それに、この部屋で消えれば、『お手洗いに案内している時に逃げられた』というわけじゃないし、出入り口から逃げられたというわけでもないから、メイドさんにも見張りの兵士にもお 咎(とが) めはないだろう、多分……。

サビーネちゃんは、そこまで気にしなくても良いだろう、って言っていたけれど、やはり、自分のせいで罪無き人が不幸になるのは嫌だよねぇ。

あ、いくら上司から命令されただけであって本人は悪くない、とは言っても、私達に敵対したり襲い掛かってきたりすれば、話は別だよ。

その場合は、躊躇なく反撃するし、相手がどうなろうと知ったこっちゃない。

世の中、そう甘くはないよね。