作品タイトル不明
393 パーティーの開催 1
「パーティーを開催しなさい」
「え?」
いきなり、ボーゼス侯爵様から何か言われた。
「え、え〜と……、もう1回、お願いします」
「パーティーを開催しなさい」
あ、聞き違いじゃなかった……。
「あの、何人かで組んで、魔物退治に……」
「そっちじゃない! 社交界におけるイベントの方だ!」
「……あ、やっぱり……」
どういうことかと、詳しく聞いてみると……。
私は、叙爵してから一度もパーティーを開催していない。
いや、そりゃ当たり前だ。
面倒な準備。
派閥やら序列やらを考慮しての、複雑怪奇な招待客の人選。
苦痛しかないお愛想笑いの数時間。
……そして何より、お金がかかる!!
そりゃ、貴族にとってパーティーは仕事の場だよ?
商談、根回し、顔繋ぎの場。重要な活動の場であり、戦場だ。
……そして、婚活の場でもある、大事なイベントだ。
でも、それ、他の人が開催するパーティーでやればいいじゃん!
私が、自分で開催する必要、ないよね?
幸いにも、私はたくさんのパーティーに招待してもらえる。
招待状が来なくても、ボーゼス家かライナー子爵家のメイドさんに頼んで、主催者である貴族家のメイドさんに『雷の姫巫女様が、ここのパーティーに行きたそうなことを言っていたらしい』という情報を流してもらえば、数時間後には招待状が届く。
そしてその情報を主人にもたらしたメイドさんは、褒賞の金貨と特別休暇を貰えるのだ。
うん、Win-Winの関係だね!
なので、私は今まで一度もパーティーを開催したことがないし、情報収集や根回しに困ったこともない。
何の労力も必要なく、お金はドレスを新調する時しか掛からず、美味しい料理を食べながら営業活動に努める。
うん、何の問題もないじゃん……。
「それは、ただ食いだ!
貴族家は皆、最低限決まった回数のパーティーを開いておる!
いや、別にそういう規則があるわけではないが、その貴族家の創立記念日、家族の誕生日、当主夫妻の結婚記念日とかは、何か事情がない限り、開催するのが普通だ。
開催の名目によって、規模は変わるがな……。
そうやって、皆、負担の持ち回りをやっておるのだ。
それを、ミツハは美味しいところだけ取って、自分では何も負担していない。
そろそろ、それに気付いて不満に思う者が出て来ておるのだ……」
「あ……」
「それに、今までミツハが手伝ったパーティーは、どれも評判が良かっただろう。ライナー家の娘のデビュタント・ボール、うちの陞爵披露パーティーの料理、そしてベアトリスのデビュタント・ボール、その他諸々……。
そのミツハが自分でパーティーを開催するとなると、どのような凄いパーティーになるか。
そのあたりも、ミツハがパーティーを開催することに期待が集まっている理由のひとつだ」
あ〜……。
あ、ちなみに、ボーゼス家の侯爵への陞爵日は、創立記念日と同じ日にしてもらったらしい。
そうしないと、創立記念日と陞爵記念日が別だとパーティーが1回増えて、負担が増えるから。
世知辛いねぇ……。
「何とか、回避する方法は……」
「ない。自分だけ税を納めずに済むと思うな!」
「ですよね〜……」
どうやら、避けられそうにない。
まあ、仕方ないか。貴族は皆が負担していることならば、逃げることはできないよね。
お金は、節約してもいいところと、絶対にケチっちゃ駄目なところがあるよね。
ケチっちゃ駄目なのは、ベッド、椅子、机、パソコンやSSDとか。
それと、当然果たすべき義務の部分だ。
そしてどうやら、パーティーの開催は、これに該当するようだ。
さて、どうするかな……。
まず、パーティーの名目だけど……。
貴族家としての創立記念日は、時期が合わないから駄目。
誕生パーティーは、我が子爵家には私しかいないし、私の誕生パーティーとなると、必ず、 何歳の(・・・) 、かと聞いてくる礼儀知らずの馬鹿が出るから、駄目だ。
いや、嘘を吐くことはできるけれど、私は今まで年齢については言及せずに誤魔化していて、嘘は吐かないようにしていたのだ。
もしいつかバレるようなことがあっても、責められることのないように……。
12~13歳だと思っていた相手が20歳過ぎだったと分かっても、勝手に勘違いしていた自分が悪い。
でも、12~13歳だと嘘を言われて騙されていたとなると、話は違うだろう。
だから、この点に関しては、なるべく嘘は吐きたくないんだよね……。
それに、誕生パーティーを開いてしまうと、『ああ、姫巫女様はひとつ年を取ったのだな』と思われてしまい、これから先、毎年この日に年を取ったとカウントされてしまう。
そうすると、2年後には14~15歳、5年後には17~18歳ということになってしまう。
……この見た目のままで。
……いや。
いやいやいやいやいや!!
それはマズい。
それはイカン!
私の誕生日は秘密にして、いつ年を取ったかが皆の印象に残らないようにしておく必要があるのだだだ!!
……ならば、どうするか。
別の理由、別の理由……。
あ! 政治資金パーティーというのはどうだろうか?
それなら、お金がかかるどころか、逆に儲かる……、
「やめんかっ!」
ボーゼス侯爵様に怒られた……。
「パーティー開催で儲けようとするな、会費を徴収しようとするなっ!
パーティーの開催は、主催者の財力と人脈を示すという意味もあるのだ、招待客からカネを集めてどうする!」
……そういうものなのか……。
じゃあ、他に、どんなパーティーを……、あ!
「レセプションパーティーだ!」
レセプションパーティー。
それは、会社の周年記念だとか、店舗のオープン、そして商品や新商売のお披露目、宣伝を目的としたパーティーだ。
それなら、派閥やらしがらみやらにあまり囚われることなく、比較的自由に招待客を選べる。
話題も、ヤマノ子爵領の生産物や雑貨屋ミツハの商品の売り込みをしても問題ない。
私の婚約話とかをしてくる者にも、今日はそういう話をする場ではありませんので、ということで、 躱(かわ) しやすい。
うん、これだ! マッハ・コレダー!!