作品タイトル不明
392 射撃訓練
最後に、私達4人で射撃競技。
得点は、1位サビーネちゃん、2位と3位が、僅差でコレットちゃんとベアトリスちゃん。
そして勿論、大差で私が4位。最下位。ドベ。
いや、何でもそつなくこなすサビーネちゃんと、野生の勘と体力で強引にこなすコレットちゃんはともかく、ベアトリスちゃんはどうしてそんなに的に当たるんだよ……。
隊長さん達も、ちょっと引いてるじゃん……。
しかし、コレットちゃんとサビーネちゃん、手の平、小さいよね?
きちんと 銃把(グリップ) 握れてるの?
まぁ、コレットちゃんは、指が届かなくて握り方がおかしくても、その驚異の握力で銃が微動だにせず固定されているのかもしれないけれど……。
サビーネちゃんは、なぜ当たるの?
まさか、握り方が不完全なのも計算に入れて照準しているとか?
……怖いわっ!!
とにかく、これでベアトリスちゃんも自衛の手段を得た。
……でも、それはただ単に『手段を得た』というだけであって、それが実行できるかどうかとは別物だ。
ベアトリスちゃんは、大切に育てられた箱入りのお嬢様だ。悪意や暴力とは無縁の世界しか知らない、か弱く優しい、貴族の御令嬢……。
「え、殺せるよ、普通に。何か、襲ってきた賊を殺しちゃいけない理由でもあるの?」
「それ、私が こっち(・・・) へ来た数日後に言ったヤツぅ!」
勿論、ベアトリスちゃんがそれを知っていたわけじゃない。
たまたま、同じような台詞を言ったに過ぎないのだろうけど……。
「姉様、何言ってるのよ……。
貴族だろうが平民だろうが、襲ってきた者に抵抗せずに黙って殺される者はいないよ。
特に私達の場合、良くて辱められた後に殺されて、悪くすれば身代金の要求で家族に迷惑を掛けることになるんだからね。勿論、辱められた後で……」
「殺されるのが、良かった場合かいっ!」
サビーネちゃんの言葉に突っ込んだけれど、確かに、ここはそういう世界なんだよなぁ。
……いや、現代の地球でも、そういう国はたくさんあるか……。
「でも、まあ、相手がベアトリスちゃんだと知っていて襲う者はあまりいないとは思うけどね。
その点じゃあ、私よりずっと安全かも。
でも、乗っているのがベアトリスちゃんだとは知らずに馬車を襲う、とかいう場合もあるだろうから、油断しちゃいけないよね……」
え?
「どうしてベアトリスちゃんがサビーネちゃんより安全なの?
普通、侯爵家御令嬢より、王女殿下の方が安全なんじゃあ……」
私のこの疑問は、当然のことだろう。
「王女を襲う者はいても、女神の御寵愛を賜りし愛し子、大聖女様に危害を加えようなんて考える者はいないわよ。
普通の者でもそうなのに、自分の生死が運頼みである連中……、兵士や船乗り、そして犯罪者とかが、女神様の怒りを買うような真似をすると思う?
特に、あの『はなび』のことを知っている連中とかが……」
「あ……」
そうだ。
あの花火が女神の奇跡じゃないと知っているのは、ごく一部の者達だけだ。
そしてその者達は、決してそれを口にしない。
いや、秘密だからというわけじゃない。
そんなことを口にすれば、神殿の連中が怒鳴り込んで来るのはまだ良い方で、下手をすれば民衆に袋叩きにされかねない。
だから、花火のことを知っている者達……王城で打ち上げの見張りをしていた護衛の人達とか……は、絶対に喋らない。
いや、勿論、王様から口止めされているだろうし、護衛の兵士が職務上知り得たことをペラペラと喋るはずがないだろうけどね。
まあ、とにかく、今では『雷の姫巫女様』とか言われている私よりも、『女神の愛し子』、『大聖女』と言われているベアトリスちゃんの方が格上なのだ。貴族としても、宗教的にも、……そして胸……、うるさいわっ!!
そして総合的な立場としては勿論サビーネちゃんの方が上だけど、こと宗教的な方面においては、ダントツでベアトリスちゃんの方が上だ。
……どうしてこうなった……。
って、私のせいか。
ゴメン……。
「この中じゃあ、この子が最年長か……。リーダー役か?」
隊長さんがそんなことを言っているけど、……まぁ、誰であってもそう考えるよねぇ……。
ベアトリスちゃんは童顔だけど落ち着いてるし、身長とかアレとか、色々と総合的に判断して……。
ベアトリスちゃん、最初は『わっ、私が、神兵様がお使いになっている御神器、「雷の杖」の使い手にっ!!』とか言って興奮していたくせに、どうして銃を手にした途端にスッと冷静になるんだよ……。
アレか? イリス様の血筋だからか?
今は可愛らしい顔と眼付きだけど、そのうちイリス様みたいになっちゃうのか?
うむむ……。
「ミツハ、何か失礼なこと考えてない?」
「イエ、何でもアリマセン……」
とにかくこれで、ベアトリスちゃんも自衛の手段を手に入れた。
私達の利点は、『生きたまま捕らえるからこそ、役に立つ』ってことだよね。人質にするにも、身代金を要求するにも、……そして女神の力を利用するにも。
だから、いきなり刺されたり斬り掛かられたり、という可能性が低いということだ。
……いや、いきなり刺されかけたけどね、私は……。
あれは例外だ、例外!
とにかく、武器を隠し持っていれば、非力で戦闘力皆無と 侮(あなど) った敵に反撃できるってことだ。
少女に対して、いきなりガチで全力全開で襲い掛かるような品のない襲撃者は少ないだろうからね。
あと、 地球(こっち) に来ている時はGPS機能付きのスマホを持たせる、と。
ベアトリスちゃんは、まだ 異世界懇談会(イセコン) の連中にも 面(メン) が割れていないから、そこはどうするか……。
いや、あの連中に顔がバレると、何かあった時に助けてもらえるんだよね……。
デメリットもあるけれど、メリットもあるんだ。
現在の 異世界懇談会(イセコン) のメンバーには、私達を捕らえて、なんて考えそうな者はいないだろうし。
そういうのは、既に排除してある。
勿論、今のメンバーも、信用しているわけじゃない。
国や情報組織を信用するような馬鹿じゃないよ。
一個人としてはとてもいい人物であっても、組織の一員としては悪辣で非情、なんて、ごく普通のことだし。
ヤクザの幹部が家庭ではとても優しいお父さんだったり、無実の少女を魔女だと決めつけて火炙りにした男が、とても敬虔な信徒だったり……。
とにかく、人間は嘘を吐いたり演技をしたりしているのではなくても、普段見せているのとは違う顔があるってことだ。
簡単に気を許すことはできないよねぇ。
「……ツハ! ミツハ!
また、妄想の世界に入り込んでる……」
妄想ちゃうわ、思索だよっ!