軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

390 サビーネ第三王女

「ねえ、サビーネちゃん。王位を狙っていたりしない?」

ぶふううぅ〜〜!!

サビーネちゃん、ちい姉様、ルーヘン君の3人が、飲みかけていたジュースを一斉に吹きだした。

「あ〜、汚いなぁ……」

「誰のせいよっ!!」

サビーネちゃんに、本気で怒られた……。

「いや、サビーネちゃんって、国民からの人気が異常に高いじゃん。家臣からも……。

カークさん、……いや、直訴状騒動の時の領主さん、エスノール伯爵とか、もう心酔状態だったじゃないの。

それってもう、サビーネちゃんが女王になればいいんじゃないの?

サビーネちゃんが各領地を視察で一廻りすれば、王太子殿下を蹴落とすのなんか簡単なんじゃないの?」

あ。

いつも私とサビーネちゃんが政治的な話をしていても気にせず、飲食やブルーレイディスク鑑賞、ゲームとかの手を止めないちい姉様とルーヘン君も、さすがに引き攣った顔で固まっている。

「ならないよっ!

貴族と神殿勢力と大商人と一般国民と他国との板挟みになって、宰相にぐちぐちと文句を言われて、多忙で遊ぶ暇もなくて、御飯は毒味役が口を付けた、冷めてマズくなったやつ。

あんなブラックな底辺職、誰が就くもんですかっ!!

それよりは、お兄様が国王になって、色々と我が儘を言ってる方が、ずっと便利で楽ちんだよっ!

お兄様は、私のお願いには絶対逆らえないから……」

「うわぁ!」

ドン引きだよ、サビーネちゃん……。

「それに、私は多分、国外には 嫁(とつ) がないからね」

あ、それは、何となく分かる。

王様夫妻やお兄さん、お姉さん達に溺愛されているだけじゃなくて、その才能が国外に流出しちゃうのが惜しいだろうからね。

貴族や国民達も、サビーネちゃんが国内の貴族に嫁ぐことを望むだろう。

「……ミツハ姉様、私を貰ってくれない?」

「えええええええっっ!!」

「養女にしてもらって婿を取るとか、ヤマノ家が養子にした男性に嫁ぐとか……。

そうすれば、将来何があっても、私と姉様はずっと親子だよ!」

ああ、そっちか……。

……って、ちょっと待て!

「いやいや、どうして私が養女や養子を取るのよ! 普通に結婚して、子供を作るわっ!

私が一生結婚できないという前提で話を進めるなあっ!!

それに、子爵家じゃあ、王女殿下を降嫁させるには格が足りないよっ!」

そう主張したところ……。

「そんなの、姉様が陞爵すれば済む話じゃない。今までの姉様の功績だと、とっくに伯爵、……いえ、侯爵になっていてもおかしくない……、って、そうか!」

「ん? どうかした?」

サビーネちゃんが、何やらポンと手を打った。

「いえ、今までの姉様の功績から考えて、ヤマノ家が子爵のままなのは変だと思っていたのよ。

帝国の侵略から国を守った功績で平民から子爵になったのに、その後のゲゲゲ姫の国……同盟国の防衛、他の大陸から来た侵略艦隊の拿捕、超巨大戦艦の建造に尽力、新兵器の開発協力、そしてこの大陸の国々が同盟を結ぶための原動力になったりと、たくさんの功績を上げたことに対する陞爵の話が全然ないというのは、おかしいと思っていたのよね……。

こんなの、伯爵どころか、侯爵になってもおかしくない、……いえ、 ならないとおかしい(・・・・・・・・・) 功績じゃないの。

なのに、陞爵の話が全く出ていない。ということは……」

「ということは?」

「姉様のことが、あまり他国に知れ渡らないようにしてるのよ。

でもそれは、事情をよく知らない者から見れば、『陞爵しないのは、実は本当はそんな功績は挙げていないから』、『作られた偽の英雄、傀儡の 案山子(かかし) だから』って思われてもおかしくない、ってことだよ」

「ああ!」

なる程!

私は元々、貴族になんかなる気はなかったし、陞爵したいとか考えたこともなかったから、何とも思わなかった。

でもそれは、お家が第一、自分の代で陞爵するなど、何と誇らしく、ご先祖様に胸を張れる偉業であろうか、と考える普通の貴族から見れば、異常な状態なのだろうな。

これだけの功績を挙げておきながら陞爵できないなら、この国の貴族は、誰も陞爵できないだろう。

あ。

もしかすると、帝国が私の力を舐めてかかり、暗殺者を送り込んだりゲゲゲ姫の国への侵略を企んだりしたのは、このせいで私がただの 神輿(みこし) 、何の力もない普通の小娘だと思ったからか?

……うむむ……。

私は別に子爵のままで困らないし、そんなに黒歴史を吹聴したいわけじゃない。

今ですら、姫巫女様とか御使い様とか言われて、閉口しているというのに……。

でもそれが、まさかこういう 弊害(へいがい) を伴うことになろうとは……。

「だから、誰かが正式に『ヤマノ子爵を陞爵させないのはおかしくないか』と言い出せば、それに反論できる者はいないよ。

もし反論すれば、自分達はそれ以上の功績を挙げない限り陞爵できなくなるわけだからね。

長男以外の者のために第二爵位を、とか考えている者も、新規爵位なんか絶望的になるよね、姉様の功績でも陞爵には値しない、と主張した人達は……。

多分、そういう話が出ないように、根回しして話を通しているのだろうけど、状況が変わるとか、誰かが言い出したりすれば、一発だよ、多分。

私が言ってもいいし、兄様に言ってもらってもいいし、ボーゼス侯爵、アイブリンガー侯爵、宰相、……そしておとうさまと、使える駒はいくらでもあるよ」

お兄さんや父親、侯爵達を駒呼ばわり……。

サビーネちゃん、恐ろしい子!!

「……いや、ない! 陞爵してサビーネちゃんを養女にする予定はないから!!」

「……チッ……」

「王女様が、舌打ちしない!」

あ。

でも、私が結婚してヤマノ子爵家の跡取りを、ということは、 私がこの国で結婚する(・・・・・・・・・・) 、ってことじゃん!

地球で結婚しても、子供をヤマノ子爵家の跡取りにするわけにはいかないよねぇ。

夫も子供も自力ではこっちへ来られないから、私に何かあれば、こっちに取り残されてアウト。

そもそも、両親が地球人である子供にこの世界で生きることを強要したりできないよね。

それに、いきなり見知らぬ子供を連れてきて、『私の子供です。子爵家を継がせます』とか言っても、大騒ぎになっちゃうよね。

……じゃあ、やっぱり養子を取るか、こっちで結婚するしかない、と……。

うむむむむ……。

「あ、姉様、私の義母になるのが嫌なら、義妹でもいいよ?」

「え? それって……」

うわぁ、ルーヘン君が赤くなってるぅ!

弟の純情を弄ぶなよ……。

ルーヘン君は、確か今は9歳のはず……。

で、私は日本では16~17歳、欧米諸国やこの世界では12~13歳くらいに見られるから、ま、3~4歳くらいの差はあまり問題ない。貴族は、20歳とか30歳とかの年の差婚も普通だし。

……尤も、普通は男性の方が年上で、その逆は滅多にないけどね、ここでの年の差婚。

でも、問題なのは、私が2年前から既にこの外見だったということだ。

私の実年齢が、最低でも14歳以上であるということは、多分大陸中にバレてる。

……ちょっと、厳しいなぁ。

そして、私の本当の年齢は、20歳だ。

……かなり厳しいなぁ。

いくらこれ以上老化しないとはいえ、本当の年齢を隠して11歳年下のルーヘン君と結婚するのは……、って、何本気で考えてるんだよっ!

……あ。

サビーネちゃんが、ニヤニヤと笑っている……。

ちい姉様が、両手を頬に当てて、瞳を輝かせて、まぁ、まぁ、というような顔をしている。

そして、顔を赤くして私を見詰めるルーヘン君……。

「サビーネちゃん、責任取って、ちゃんと収拾を付けてよっ!」

「知らないよ。最初に、私に王位簒奪を 唆(そそのか) した、姉様がいけないんだよ」

「あれの仕返しかあああぁ〜〜っっ!!」

その後、許してもらうために、『我が儘1回通せる券』を1枚、発行させられた。

……いかん。

我が儘通せる券や貸しポイント、日本の製品1個請求券等、どれくらいサビーネちゃんがストックしているか、既に把握できていない。

何か、いつかマズいことになりそうな気がする……。