作品タイトル不明
367 カテ・ロレコンビの異世界冒険 1
「じゃあ、今日は私達3人で この国(にほん) で行動するから、カティとロレーナは自由行動ね。
ふたり一緒だから大丈夫だとは思うけれど、もし何かあった場合は、迷わず 通信機(スマホ) のワンタッチボタンで私を呼び出すこと! この程度のことで、なんて 躊躇(ちゅうちょ) しない!
すぐに対処すれば大したことなく終わることでも、手遅れになると大変なことになるかもしれないからね。
そうなると、私にとっては 却(かえ) って面倒なことになるっていうことは分かるよね?」
ミツハ様に、もう何度目かも忘れるくらいしつこく、繰り返し言われたその御指導は、私もカティもちゃんと理解しています。
なので……。
「「ハイッ!」」
カティとふたりで、元気よく返事しました。
* *
「というわけで、ミツハ様達はお出掛けになりました。
……さて、どうしましょうか?」
「う〜ん、とりあえず、私達もお出掛けだよね? にほん邸でやれることは、サビーネ様達が学院に行かれている間に嫌というほど時間があるから、その時にできるからね。
やはり、ミツハ様にお勧めいただいた通り、ふたりで街に遊びに……、いやいや、 現地慣熟調査(・・・・・・) に行こうよ!」
そう。自由行動日であっても、こちらの国にいる間は、出張手当の対象なのです。だから私とカティは、一応、それらしい名目を付けるのです。……形だけですけどね。
「じゃあ、あそこへ行きませんか? 前から、名前が気になって仕方ないのです……」
「ああ、あそこね。私も気になってたんだ……」
「「プリンス動物園!!」」
以前ミツハ様が、言葉が分からなくても楽しめる近場の施設や観光場所をリストアップしてくださいました。うちの国の言葉で、メモ用紙に書いて……。
……その中にあったのです、『プリンス動物園』という名の施設が!
しかも、ここから超至近距離です。歩いて数分です!
いえ、敷地までは近いですけど、正門は反対側ですから、ちょっと歩きますけれど……。
「でも、いったいどういう施設なのでしょうか、『プリンス動物園』……。
もしや、各国の王子様達が囚われて、檻の中に……」
「いやいや、それはないよ! 多分、それぞれの動物の王子様が……」
「狼の王子様とか、ウサギの王子様とかですか?」
「「気になるううううゥ〜〜!!」」
* *
「まずは、美術館、というところに行きましょう。すぐそこですし、芸術というものは、その国のことを理解するのに大きく役立ちますからね」
「え〜……」
プリンス動物園に 興味津々(きょうみしんしん) のカティは私の提案に嫌そうな顔をしましたけれど、別にそこへ行かないというわけではありません。
……私は、美味しいものは最後まで取っておく主義なだけです。
「今日は自由時間ですけど、給金支給の対象時間です。なので、 物見遊山(ものみゆさん) だけでなく、ちゃんと勉強もしなければ……」
「分かってるよ……」
どうやらカティも、ヤマノ子爵家の使用人として、そしてその中でも特別に選ばれた『コレットとサビーネ王女殿下の国外留学支援要員』としての自覚はあるようです。
もし 巫山戯(ふざけ) たことを言うようであれば、いくら同僚とはいえ、強く指導するところでした。
いくら同年代とはいえ、お屋敷で働き始めたのは私の方が先。私が先輩なのですからね!
普段は同僚として対等の立場を保ち、決して先輩風を吹かせたりはしませんけれど、ヤマノ子爵家のメイドとしてふさわしくない言動があった場合は、話は別です。
カティは、ミツハ様や上級使用人の方々がおられない時には、少しがさつというか、男の子っぽいというか、貴族家のメイドとしては少しふさわしくない喋り方になりますが、まぁ、上の方々や来客の前ではちゃんとした言葉遣いをしますから、それは許容しているのですが……。
うっかりお客様の前でがさつな言葉が出たりしないよう、普段から丁寧な喋り方をすればいいと思いますのに……。
多分、お休みの日には近所の子供達と遊んであげているのが悪いのでしょう。
……いえ、その行為自体が悪いというわけではないのですが……。
まあ、それはカティの自由です。仕事の時さえきちんとしていてくれれば……。
私としましては、子供達と遊ぶよりは、同年代か少し年上の殿方とお付き合いする方がいいのではないかと思うのですけどね。
……私にもいませんけどね、そういう相手は……。
ええと、こういう時は、ミツハ様ならこう言われるのでしたね。
……うるさいわっ!!
* *
……よし、出発です!
今日は、ふたりとも私服です。なので、美術館や動物園へ行ってもおかしくない服装です。
食料品とかの買い出しはメイドとしてのお仕事ですから、当然仕事着で行きますけれど、休日にそういうところへ仕事着で出かける女の子はいませんよね、普通……。
この服は、カティと一緒に初めてこの国へ連れて来られた時に、ミツハ様、コレット、そして畏れ多くもサビーネ王女殿下に御案内いただき、大きな服屋で選んでいただいたものです。
勿論、『この国であまり目立たない外出用の普段着は必需品だから、経費で落ちるよ』と言われ、全額ミツハ様がお支払いされました。その後の食事代や、家族へのお土産代とかも……。
さすが、ミツハ様です!!
でも、あのような大きな服屋で買っていただくのは申し訳ないと思い、小さなお店のでいいです、と言って近くにあったお店を指差したところ、『あそこにある小さな店は、ブティックやオートクチュールで、ブランド物やオーダーメイドのお店だから、こっちの大きな店に較べると目玉が飛び出るような価格なんだよ……』と言われて、驚きました。
前半の言葉はよく分かりませんでしたけれど、多分、『頑固だけど腕の良い高名な鍛冶師がやっている、個人経営の小さな武器店』みたいなものなのでしょう……。
* *
「ほえ〜〜……」
興味の傾向が、男の子…… 男性(・・) ではなく、 男の子(・・・) ……に近いカティは、美術館に行くことをあまり歓迎しておらず、早くプリンス動物園に行きたがっていたのですが、実際に美術館に来たあとは、すっかり心を奪われてしまったみたいです。
それも、無理はありません。
ここ、コレットとサビーネ王女殿下の留学先である『にほん』という国は、凄すぎます。
建物、移動手段、食べ物、衣服、そして芸術品……。
更に、遠くの者と話ができる スマホ(つうしんき) 、洗濯物を勝手に洗ってくれる洗濯機、その他諸々……。
スマホ(つうしんき) は、領地のお邸にもありますが、あれはミツハ様秘蔵の魔導具だと思っていましたのに、ここではみんなが持っています。それも、ずっと小型で最新式らしいのを。
……私達も持たされています。
いえ、うちの国も、ヤマノ子爵領のような田舎領ではなく王都へ行けば、ここと同じような感じなのかもしれませんけど……。
私もカティも領地から出たことなど一度もないので、田舎町のことしか知りません。
おそらく、我が祖国ゼグレイウス王国も、ミツハ様の母国には敵わぬまでも、この国、 にほん(・・・) に負けない程度の力はあるはずです。
ゼグレイウス王国の ド田舎(ヤマノ領) と にほん(・・・) の王都を較べて、ゼグレイウス王国の方が遅れている、などというのは、不公平です。ミツハ様が言われるところの、ええと、ひ、ろんり……、そうそう、『それは非論理的です』っていうやつですね。
「それでは、そろそろ次へと参りますか!」
「待ってました!」
「「夢と憧れの、『プリンス動物園』へ!!」」