軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

341 ソロリティ 6

何とか、『ソロリティ』が安定期に入った。

ま、 第三王女様(サビーネちゃん) と 姫巫女(わたし) に喧嘩を売る奴はいないよね。

問題なのは、自分も加入させろ、うちの娘も加入させろと 煩(うるさ) い人達だけだ。

そろそろ伯爵家以上も解禁するか……。

新大陸の『ソサエティー』では、主宰者のみっちゃんが侯爵家御令嬢だったから、それよりも上は公爵と王族だけなので、切るのは簡単だったんだよなぁ。

でも、『ソロリティ』は主宰者のアデレートちゃんが子爵家だから、『伯爵家と侯爵家はいいけれど、公爵家と王族は駄目』とは言いづらい。

……そもそも、王族であるサビーネちゃんが既に入っているし……。

まぁ、うちの国の王女様は、ちぃ姉様も上姉様も人格的には問題ないみたいなんだけど、まだ幼いサビーネちゃんだけならばともかく、結婚適齢期真っ只中の上のふたりが入って、王女様全員が、なんてことになれば、ある意味、『ソロリティ』が凄い政治的パワーの特異点になっちゃうよねぇ……。

それはマズい。

結婚相手を求める貴族男性達の集魚灯としては、出力が高すぎる……。

それに、獲物を捕らえるための集魚灯ならぬ、寄って来た者を殺す誘蛾灯になってしまうとヤバいし……。

うん、上姉様とちぃ姉様、そしてサビーネちゃんの3人が揃っちゃうと、あまりにも 戦利品(トロフィー) の価値が高すぎて、 不埒(ふらち) な真似をする者が現れないとも限らない。

それでなくとも、これから上位貴族のお嬢様達、それも選び抜かれた性格の良い才女達が集まる予定なのだ。

なので、少女だけのお茶会の場に押し掛けたり、解散の時間帯を見計らってライナー子爵家の門の外で待ち構え、王女達や公爵家御令嬢とかの、普段声を掛けたりお近づきになったりする機会のない格上の少女達との接触を図ったり……。

そして、接触の機会作りと自分を売り込むために、雇った暴漢を仕込んだり……。

……そう、『寄ってくる』だけの集魚灯ではなく、身の破滅となることをしでかす、『誘蛾灯』になっちゃうワケだ。

『ソロリティ』のせいで廃嫡になる貴族家子息が続出。

……そりゃマズい。

なので、上姉様とちぃ姉様は、残念ながら御遠慮いただこう。

化粧品とお菓子はサビーネちゃん経由で渡るから、問題ないだろう。

そもそも、ちぃ姉様はルーヘン王子と共に 雑貨屋ミツハ(うち) に入り浸りだから、あんまり関係ないような気もするけれど……。

サビーネちゃんの、お姉さん達に対する立場が強くなっちゃうだろうけど、さすがにサビーネちゃんもお姉さん達にはそんなに酷いことは要求しないだろう。

ああ見えて、日頃から仲の良さそうなちぃ姉様だけでなく、上姉様のことも大切に想っているみたいなんだよね、サビーネちゃん……。

私が上姉様の年齢をすごく上だと勘違いしていたということが露見した時、本気で怒っていたからなぁ……。

とにかく、『ソロリティ』は、サビーネちゃん以外の王族と、王族の血縁者が多い公爵家の者は入会お断りだ。侯爵家以下の者に限定して、『うちは元々下級貴族の娘達の親睦会です。強い御要望により伯爵家、侯爵家の方までは受け入れることになりましたが、それ以上の高貴な方々と対等にお付き合いするのは、いささか荷が重く……』とでも言えばいいか。

サビーネちゃんが特別扱いなのは、私との関係が広く知れ渡っているから、誰も文句は言わないだろう。

……よし、問題、ないない!

* *

伯爵家・侯爵家の者にも、入会資格を与えた。

そして、早速殺到した入会申し込み書を、まずは私とサビーネちゃんでチェックしているのだけど……。

うん、サビーネちゃんは、割と貴族家やその子女に対して詳しいらしいんだよね……。

「当たり前でしょ! 私の世代で国を背負って立つ者達なんだし、将来私の取り巻きになったり婚約者候補になったりする可能性がある者達なんだから。ちゃんと、排除すべき者、役に立つ者は確認してるに決まってるでしょ!」

いや、 取り巻き連(そういうの) とかは、王様と王妃様、教育係とかが選ぶんじゃあ……。

「まあ、私にはミツハ姉様が付いているから、取り巻きとかはあまり必要ないんだけどね。

あ、アデレートちゃんならいいかな」

いやいや、サビーネちゃんはそろそろ12歳で、アデレートちゃんはもうすぐ17歳だよね、確か。私がこの世界に来てすぐにデビュタント・ボールがあって、それから2年くらい経ったわけだから……。

それで、アデレートちゃんを『ちゃん呼び』かい……。

アデレートちゃんの方は、『サビーネ様』か『王女殿下』呼びだろうなぁ。

まさか、『サビーネちゃん』とか呼べるわけないよね。いくら『ソロリティ』の中では皆対等、といっても、物事、限度というものがある。

いや、元々、貴族同士でも互いに『何々様』って呼んでるか。

ま、仕方ないか。さすがに、幼い王女様が下級貴族の娘を様付けで呼んだりしちゃ駄目か。

「でも、子爵家のアデレートちゃんだけを取り巻きにしたら、色々と困るんじゃあ……。サビーネちゃんじゃなくて、アデレートちゃんの方が……」

そう、取り巻きの座を狙う中級貴族や上級貴族の娘は多いはずだ。本人も、そしてその両親も……。

なのに、下級貴族の娘であるアデレートちゃんただひとりが、取り巻きというか側近というか、そんなのに選ばれて常にサビーネちゃんと一緒にいたりすれば……。

サビーネちゃんも、それに気付いたのか、あ、という顔をしている。

「う~ん……。じゃあ、アデレートちゃんの取り巻きをそのまま吸収して、そこに更に『ソロリティ』のメンバーの中から何人か追加で伯爵家の子を選ぼうかな……。

侯爵家の子はいいや。取り巻きの主導権を握ろうとか、私を足掛かりにして兄様や弟に取り入ろうとか考えそうで、何か 嫌(ヤ) だから」

「そんなトコかなぁ。アデレートちゃんの取り巻きを横取りするみたいになるけど、そのままアデレートちゃんを取り巻き達の纏め役にすれば問題ないか……。

サビーネちゃんの場合は、王太子殿下みたいに、取り巻きが将来の腹心候補ってわけじゃないからね。ただの遊び相手や貴族家との友好関係を醸成するための御学友、という程度に過ぎないわけだから」

「うんうん!」

でも、何か、王女殿下の取り巻きになるためには『ソロリティ』に加入していなければ駄目、とかいう誤解が広まって、ますます入会希望者が殺到しそうな気がするなぁ……。

……と、あれ?

「ん? どうかしたの、姉様」

話しながらも入会申し込み書のチェックを続けていた私が手を止めたため、サビーネちゃんが 怪訝(けげん) そうな顔をしてそう 訊(き) いてきた。

「あ、いや、入会申込者の中に、何か聞いた事があるような名前があって……」

「何て家名?」

「ティノベルク侯爵家の御令嬢……」

「ああ、親も子供達も問題のない、真面目なところだよ。一歩間違えれば『頑固で石頭、そしてプライドが高い連中』という欠点になりそうなところを、『信念を曲げずに貫き通す、誇り高き一族』という長所に昇華させた、立派な家系ね。

確か、ボーゼス侯爵家と同じ派閥だったはず……」

「なら、問題ないか。ありがとね」

「どういたしまして!」

私の役に立てたのが嬉しかったのか、にっこりと微笑むサビーネちゃん。

かわええのぅ……。

……そして、よくそんなことまで覚えてるなぁ……。

さすサビ!

……そして私は、知らなかったのだ。

サビーネちゃんにも、知らないことはあるということを。

そして、ひとつひとつは問題のないことであっても、それらが組み合わさって、とんでもないことになるという場合があるということを……。