作品タイトル不明
337 ソロリティ 2
アデレートちゃんには、取り巻きがいる。
新興の子爵家の娘に取り巻きがいるというのは、ちょっと珍しい。
そういうのは普通、公爵家や侯爵家、少なくとも有力な伯爵家か辺境伯以上の家格の娘が引き連れるものだろう。
それを、弱小の新興子爵家の娘が、って……。
……まあ、多分、あのデビュタント・ボールのせいなのだろうなぁ……。
あれで貴族家の当主様達に気に入られたか、子供達自身が気に入ったか、……それとも 姫巫女様(わたし) との繋がりが目当てなのか……。
とにかく、アデレートちゃんには 手駒(・・) がある、ということだ。
勿論、伯爵家の御令嬢が子爵家の娘の取り巻きになったりはしないから、アデレートちゃんの手駒は、子爵家か男爵家の令嬢達だ。
上級貴族の令嬢達はアデレートちゃんを自分の取り巻きにしたいと思っているだろうけど、あのデビュタント・ボールの後、一瞬のうちにアデレートちゃんに取り巻きができてしまい、上級貴族の令嬢達が声を掛けようとした時には、もう既に手遅れだったようなのだ。
……うん、アデレートちゃんは、可愛くて聡明で元気で誠実で思い遣りのある子だから、他の御令嬢達から慕われて当然だものね。
確かに、私が仕切ったデビュタント・ボールだとか、 姫巫女(わたし) と仲良しだとかいうことも少しは関係しているだろうけど、そんなのがなくたって、アデレートちゃんは人気者になっていたに違いない。
そして、アデレートちゃん本人に確認したところ、取り巻き連の中には、変なのはいないらしい。
まぁ、親や本人が野望に燃えているなら、いくら 姫巫女(わたし) のお友達とはいえ、新興子爵家の取り巻きにはならんわなぁ……。
そういう連中が取り巻きになるとしたら、侯爵家令嬢にして商会主、アデレートちゃんより私との関係が深いと思われていて、サビーネ第三王女殿下の 学習指導員(チューター) であった……サビーネちゃんが天才であることが発覚し、すぐにお役御免になってしまったそうだけど……、王都絶対防衛戦の英雄のひとりを兄に持つ、今、この国で最もイケてる、抜群のプロポーションの美少女の方だよねぇ……。
あ、おまけに、デビュタント・ボールでの花火による、聖女様認定もあったか……。
うん、ベアトリスちゃん、ガンバ!
なので、親の指示で取り巻きになった者もいないわけではないけれど、それらは『自らの身を護るため、自分達弱者仲間のうちではちょっと強い者にしがみついて群れる』という程度であり、娘にはただ『ライナー子爵家の令嬢と仲良くしなさい』と言っている程度で、おかしな野望やら目当てとかはなく、みんな良い子達らしいのだ。
そして、パーティーとかでは格上の貴族の子息達が寄ってきて一緒に行動するらしいが、普段は令嬢達だけで行動しているようなのである。
……よし、使いやすい!
ただ、問題は……。
* *
「え? 大した問題ではないのでは?」
「えええっ!」
ソロリティ立ち上げの際の、初期メンバー選定について、新大陸での『ソサエティー』の時の事を『こんな感じでどうかと考えている』ということにして説明したのだけど……。
新大陸では、主宰者が侯爵家令嬢のみっちゃん2号だったから色々と裏での調整ができたし、みっちゃん2号の下につくことを嫌がる人達は自動的に排除できた。
でも、主宰者が子爵家のアデレートちゃんで、その後ろ盾が 姫巫女(わたし) だと、辞退する者が出ないよね?
これ、サビーネちゃんを主宰者にできない理由でもあるんだよね。
王女殿下主宰の親睦会なんて、参加しない……、いや、 参加できない(・・・・・・) 令嬢の立場が、大変なことになってしまう。
でも、全ての貴族家令嬢を受け入れることは人数的に不可能だし、中には性格に難がある子もいる。
私とアデレートちゃんにはきちんと接してくれても、他の令嬢、特に自分より格下の令嬢達に横柄な態度をされたら、新大陸のソサエティーのような和気あいあいとした雰囲気にならないだろう。
かといって、初期メンバー募集の招待を出す時に、あからさまな選別をするのも、『親の派閥には関係なく』という理念に反するし……。
そのあたりを説明して、相談したところ、アデレートちゃんから返ってきた言葉が、『大した問題ではないのでは?』である。
「最初から、下級貴族や上層の平民の娘達の集まりだ、って言えばいいのでは? 子爵家の者である私が主宰するのですから、別におかしくはないでしょう?
そして、ミツハが絡んでいるということと、サビーネ王女殿下が加入されることは、招待状を出す段階ではまだ伏せておきます。
……絶対に加入して欲しい人には、こっそり教えてもいいかもしれませんが……。
そして、立ち上がりの初期メンバーは、子爵以下の貴族家の娘と、一部の上層平民の娘達だけにしましょう。
その後、噂が広まって伯爵家や侯爵家の者が入会を希望し始めた時点で、『子爵家以下』という制限を撤廃。しかしその時点では、既に『新規入会者は、メンバーの無記名投票により、全会一致で賛成される必要がある』という規則があるから……」
「私達が望まない者は絶対に入会できない、ってわけか……。
子爵家以下なら、招待者は私達が勝手に選んでも問題ないよね?」
「ないない!」
全員、というのは無理なのだから、人数を絞るのはやむを得ないことだものね。
あとは……。
「サビーネちゃんはマスコット枠の名誉会員だから、問題ないか。サビーネちゃんがいることに対して文句を言う者はいないだろうからね。
……あ、パストゥール伯爵家の次女ちゃんを早めに招待しないとマズいなぁ。
私が王都の滞在届けというもののことを知らなかったために、デビュタント・ボールに行けなくて泣かせちゃった子……。お友達に、って言っておきながら、放置プレイもいいとこだ。この機会にフラグを回収しとかなくちゃ……」
「旗を回収?」
「あ、いや、何でもない!」
この世界に、そんな言い回しが存在するわけないか……。
「あと、ベアトリスちゃんか……。
私がソロリティに大きく関わっているということが知れ渡った時点で、ベアトリスちゃんが加入するのは当然だと思われるだろうけど、『子爵以下』という規則が撤廃されるまで待ってもらうしかないか……。さすがに、サビーネちゃんと同じ扱いにするには無理があるよねぇ……。
うん、それまでベアトリスちゃんには『ベアトリス商会』の方に専念してもらおう……。
アデレートちゃんの方には、伯爵家以上で早く加入させたい人、いる?」
「いえ。何人か良い方を知っていますけど、普通に制限撤廃後で問題ありません」
「……よし、じゃあ、そんな感じで行ってみよう!」
* *
あれから一ヵ月弱。
私、アデレートちゃん、サビーネちゃんの3人で密かに初期会員に招待する令嬢のリストを作り、ボーゼス侯爵様に『この中に、接近されるのは好ましくない貴族家はあるか』と確認してもらった。
侯爵様は、『ミツハにも、ようやく貴族としての自覚が芽生え始めたか!』と喜んでいたけど、……うん、まぁ、その……。
その他のことも、ほぼ準備完了。
やはり、 実戦証明(コンバット・プルーフ) 済みの作戦は、気が楽だよねぇ。
それも、 姫巫女(わたし) とサビーネちゃんによる抑止効果で、敵対者が現れる可能性がとても低いとなると……。
逆に、あまり存在感が強くなりすぎたり、加入できない令嬢達があまり割を食わないように気を付けなくちゃ……。
よし、『条件の良い、魅力的な令嬢達』を 爆発反応装甲(リアクティブアーマー) として私の周囲に貼り付け、敵の攻撃が私に届かない作戦、開始!!