作品タイトル不明
325 アイドル大作戦 6
幼年組の子供達を、平民にも優しい、文字通りの『天使』として育てるのだ!
そうすれば、将来的に、身分制度はあれど貴族と平民とが仲良しの世界に……。
……あ!
『天使』はマズいか。
『天使』とか『御使い』とかは、人間側ではなく、『 女神側(ゴッデスサイダー) 』だ。
それに対して、ソサエティーのメンバー達は『聖女』と呼ばれている。
『聖女』は、女性の聖人や、慈愛に満ちた女性を指す言葉であり、あくまでも『人間』である。
これだと、本体組と幼年組の上下関係が逆転しちゃう。
何か、幼年組を表すいい呼び方を考えなくちゃ……。
「それと、幼年組から要望が来ています。化粧のやり方をレクチャーして欲しい、と……」
「10歳未満で、もう化粧か~い! マセ過ぎ違うんか~~い!!」
「普通ですわよ……。貴族の女性が、何歳くらいで婚約すると思っているのですか……。
さすがに、その年齢だとあまり厚塗りはしませんけど、 口紅や頬紅(ルージュ) とかは普通ですわよ。それに……」
「それに?」
「母親やお姉様からの指示という可能性も……」
「ああ!」
……納得した。
「それと、幼年組と本体組の両方からの要望なのですが……」
「まだあるんか~い!」
「会合……、お茶会の回数を増やしてもらいたい、と……」
「え……」
今まで、ソサエティー本体組は月に2回を原則とし、急な議題が上がった時には緊急集会を開いていた。カーレアちゃんの件、チェリリアちゃんの件、そして演奏会の特訓とかの場合ね。
そして幼年組は、幼い子をあまり頻繁に親元から引き離すのはアレだと思って、月に1回にしていたのだ。……演奏会の練習期間中は、親に断って頻度を上げていたけど……。
まあ、増やして欲しいということは、好評だということであり、みんなが楽しんでくれているということだろう。そして御両親もそれに反対していないということであり、それは良いことだ。
しかし……。
「うちの経費が 嵩(かさ) むわ~い! 飲食物やら色々と無償提供している、うちの被害が増大するわ~~い!!」
「でしょうね……」
いや、会員価格で割引しているとはいえ、みんなが親の指示で注文してくれる商品での儲けはある。
しかし、自分の家で使う分だけという数量制限があるし、かなり割り引いているから、利益は少ないのだ。その分を 余所(よそ) で売った方が儲かるし、お茶会の回数が増えても月当たりの制限量は変わらないから、売れる数も利益も変わらないのだ。
そして、お茶会の回数が2倍になれば、私が払う経費は確実に2倍になる。
しかも、幼年組が創設され、おまけにここのところ、演奏会やら何やらで回数が激増していたというのに……。
これで、定期開催の回数を増やした挙げ句、また何らかのイベントが発生したり、練習が必要な大会とかの話が出れば……。
いや、出る! 絶対に出る!! 今回のことで味をしめた本体組のメンバーや、幼年組から……。
そして、メンバーの親達からも……。
あ、メンバーの両親に、撮ったスチル画を額装して、高値で売りつけたよ。
かなり稼げた。
本体組は、入会時のお見合い用写真があったけど、幼年組の子の両親にとっては、驚異の出来映えである 肖像画(写真) も被写体の表情も、初めて揃いだったからね。可愛い衣装も、以前に肖像画を描かせた時のような作り笑顔ではない、娘の本当の笑顔も……。
とにかく、御両親には ソサエティー(うち) が無料の託児所兼学習塾兼他家とのコネ造りの場兼美味しい輸入製品仕入れの場とでも思われているのか、うちのお茶会の日には、他の用事をキャンセルしてでもお茶会に出席させてくれるらしいのだ。
そして、この回数増加希望には、御両親達も大賛成なのだとか……。
……いや、それはいいんだ。ありがたいことだと思う。しかし……。
「多数決を採れば、1対その他全員で、間違いなく可決しますわね……」
「私のお金と、時間ががが! そしてみっちゃん、あんたも敵側か~~いっ!」
「ご愁傷様……。
そして、もう一件……」
「まだあるんかいっ! くっ、殺せっっ!!」
「王妃殿下や貴族の御婦人方から、問合せが殺到していますわよ……」
「え、問合せ?」
要望やゴリ押しの手紙、使者の訪問とかは、たくさんあった。娘をソサエティーに加入させろとか、もっと化粧品を寄越せとか……。
しかし、問合せというのは珍しい。
「……何て?」
「ソサエティー壮年組を創設する予定はないのか、って……。何なら、世話役を引き受けてもいい、とか……。どうするのよ?」
チベットスナギツネのような顔をしたみっちゃんに、私はポツリと呟いた。
「……知らんがな……」
そして結局、ソサエティー本体組の方は現状維持で、月2回。
但し、急な用件が入った場合は臨時開催があり、今回のように練習とかが必要な場合には、スイーツや飲み物の提供量を減らしての連続した開催もあり得る、ということにした。
幼年組の方は、月4回。
但し、正規の会はそのうちの1回だけで、あとの3回は幼年組が独自に開催する、ということになった。
つまり、私が飲食物その他をサポートするのは1回だけで、あとの3回は幼年組の親……その時の開催場所となる家……が飲食その他の世話をする、ってわけだ。
それでも、引っ込み思案の子供が大勢の友達を作り楽しそうにしている姿を見た親達は大歓迎らしいよ。
演奏会で大人気になったことも大きいらしいけれど、多くの貴族家と懇意になれ、またソサエティー本体組との繋がりもできるしね。
4回中3回は幼年組独自に、とはいっても、私のフォローがなくても、末っ子だったり、弟はいても妹はいない本体メンバーが顔を出すだろうし、一応、世話役として毎回最低でも3人は本体組からお手伝いを出すようにするから、多分大丈夫だろう。
* *
「…………」
演奏会から、数日が経った。
そして今、私はあることを危惧していた。
……それは、演奏会の時の、コレットちゃんの様子だ。
撮影要員として、カメラの使い方を教え込んで演奏会に連れていった、コレットちゃんとサビーネちゃん。
幼年組のダンスを見ていたふたりの眼が、何かキラキラしてたんだよねぇ……。
……多分、自分達もやりたかったのだろう。
でも、ふたりが幼年組に参加するわけにはいかないよねぇ……。
ふたりには、それぞれ『やるべきこと』がある。王女殿下として。ヤマノ子爵家の家臣候補として。
それぞれ、国民から集めた税金や、うちの領民から集めた税金で生活し、教育を受けさせてもらっている身だ。多少のことならいいけれど、毎回お遊びで参加するのは、我が儘が過ぎるだろう。
時間的なこともあるし、毎回私が転移させなきゃならないし。
また、私が眼を離している時に、何かあったら大変だ。
新大陸(こっち) じゃあ、私は『機嫌を損ねると身の破滅を招く、雷の姫巫女様』ではなく、ただの金蔓、異国の金持ちの娘に過ぎない。……つまり、こっちでは私やその身内に手出しする者がいるかもしれない、ってことだ。
なので、いつふたりが『自分達も交ざりたい』って言い出すかと心配していたのだけど、どうもその気配がない。
なので、不思議に思ってコレットちゃんに尋ねてみると……。
「ああ、それなら、もうかなり練習してるから、もうすぐミツハに見せてあげられるよ」
「……え?」
コレットちゃんが何を言っているのか、分からない……。
「そ、それって、どういう意味?」
恐る恐る、そう尋ねると……。
「ヤマノ子爵家メイド少女隊、プラス有志で、アイドルユニット『メイドさんだー』を結成したんだよ」
「……」
「あ、ユニット名は、『メイドさんだ』と『 雷(サンダー) 』を掛けてあって……」
「…………」
「あれ? ミツハ、どうかした?」
「………………」
「……ミツハ?」
「……何じゃ、そりゃあああ~~!!」