軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

320 アイドル大作戦 1

「……演奏会、ですか?」

ソサエティーのお茶会で、そんな話題が出た。

「はい。毎年王都で開催されておりまして……。その参加受付が、そろそろ始まりますの。

選考は書類審査だけですので、我がソサエティーが申し込めば、まず落とされるようなことはないかと……」

ま、そりゃそうか。 ソサエティー(うち) は有名で、大人気だ。しかも、貴族の御令嬢達の集まりで、見栄えもいいし、権力者とのコネもある。

催し物の主催者側にとっては、こんな美味しい客寄せパンダ、書類選考で落とすわけがない。

うむむむむ……。

何か、面白そう。

私自身には、彫刻も絵画も音楽も、芸術的な才能は一切ない。

でも、創り手や奏者としての才能はなくても、いい物を楽しむことはできるんだよね、幸いなことに……。

これが、いい悪いの見分けもつかず、芸術を鑑賞して楽しむこともできなければ不幸だったよね。

なので、鑑賞することは嫌いじゃないんだよ。

ソサエティーとして申し込んでも、別に全員で演奏するわけじゃないだろうし……。

ソサエティーの名を一般市民の間に更に広め、好印象を与えるのにはいいかもしれない。

……お金が掛からない、というのが、特にいい。

「楽器は、どのようなものを?」

「あ、楽器とかの制限はありません。楽器なしの、歌だけとかでも大丈夫ですわ。

貴族だけでなく、平民の皆さんも参加や鑑賞ができますので、そのあたりの規則はとても 緩(ゆる) いのですわ」

ほほう……。

うむむむむむむ……。

「よし! 朝刊で注目、夕刊で決心! 神戸新聞、アルバイトニュース!!」

「……何ですの、その、意味不明なフレーズは……」

みっちゃんが頭を抱えているけれど、そんなのどうでもいい!

「せっかくだから、私はこの赤い申し込みを選ぶぜ!」

「もう、ワケが分かりませんわよ!」

そういうわけで、ソサエティーから参加申し込みをすることになったのである。

* *

「参加が受け付けられましたわ! 2チームとも……」

「おお!」

待っていた知らせが来た。

これで、準備を始められる。2チームとも。

……そう、『2チーム』だ。

我がソサエティー本体組と、ソサエティー幼年組の……。

* *

この世界の楽器も、地球の物と似たようなものだった。

まぁ、手が2本に、指がそれぞれ5本ずつ。口はひとつで、可聴域もほぼ同じ。そういう共通点があるならば、似たような楽器が作られるのも不思議じゃないだろう。弦の本数が少し違う程度の差異はあっても。

多分、地球でも色々な楽器が考案されて、マイナーなのやトンデモ楽器は淘汰され、現在の有名なものが広まったのだろう。

ならばこの世界でも同じようなモノが多数考案されて、皆が認めた良いものが生き残り、結果として地球のメジャーな楽器に似たものが普及したとしても、何の不思議もない。

地球にも、私達が知らない、どマイナーな楽器があるかもしれないよね、どこかの国に……。

私が知っている中でも、カホン、ケーナ、カリンバ、ゴピチャンドとか、いい音出すよね……。

そういうわけで、似たようなやつには、私の脳内では地球の楽器の名前を当てはめた。

弦の本数が少なくても、『バイオリン』! 黒鍵やフットペダルがなくても、『ピアノ』!!

い~んだよ、細けぇこたー!!

ソサエティー本体は、みんなそこそこの年齢だ。

だから、ゴシップ、流行りのファッション、劇団のお気に入りの男優とか、色々な話で盛り上がれる。

でも、幼年組の子達は、話ばかりでは退屈するし、そもそも、自分達があまりみんなで楽しめるような話題を持っているわけじゃない。まだほんの数年しか生きていないのだから、そんなに豊富な知識や話題を持っているはずがないからね。

なので、何か楽しいイベントを企画してあげて、みんなが仲良くなるための切っ掛けを作ってあげなくちゃならない。

この演奏会というのが、それに最適だと思ったんだよね……。

そして、我がソサエティーが下部組織である幼年組を擁したことを王都民に知らしめるための、絶好の機会だということも……。

演奏会では、本体は普通の演奏をするけれど、幼年組は楽器の演奏はしない。

家でそれぞれ 家庭教師(ガヴァネス) に 扱(しご) かれているというのに、楽しい交流の場でまで楽器の練習を押し付けられては、6~10歳の子供達には辛いだろう。

だから、そういう面倒な部分は 本体(わたしたち) が引き受けて、子供達には伸び伸びと楽しんでもらう。

……そう、歌と踊りで。

楽器演奏だと、ひとりがミスるとみんなに迷惑がかかるけれど、歌と踊りなら、多少間違えても構わない。

ミスをすることなく完璧にやるんじゃなくて、楽しく元気にやらせるのだ。

別に、国営の音楽堂で開かれるクソ真面目な音楽会とかいうわけじゃない。

平民も参加するイベントらしいから、楽しくやってもいいだろう。

……そして幼年組独占ウハウハ計画が水泡に帰した今、可愛い衣装や器材を提供し、見本を見せて指導することにより、私にもっと懐かせるのだ!

勿論私は歌も踊りもできないから、 女神様から借りた神具(ブルーレイディスク) を見せて。

うん、我がソサエティーは『女神にコネがある』と思われているから、これくらいは許容範囲内だ。

そのことを家族に話したところで、幼い子供達が言うことだし、『天使達が歌うのを見た』と言われた両親も、困惑するだけだろう。

金儲けや権力強化に繋がるわけではないし、自分にも見せろと強要するわけにもいかない。

万一それが『本物』であった場合、変にちょっかいを出すと、どのような神罰が下るかも分からないというのに……。

うん、せっかく娘をソサエティーの下部組織に送り込めたというのに、そんな危険を冒す貴族はいないよね!

よし、選曲を始めなきゃ!

みんなの可愛さを最大限に引き出せる曲を……。

「ミツハさん、早速練習を開始しますわよ!」

「え?」

「いえ、 ソサエティー(わたしたち) も出場するのですから、当たり前でしょう。まずはみんなの得意な楽器や実力を確認して、担当パートを決めなければ……。

それさえ決まれば、 各々(おのおの) の自宅でも練習できますからね」

え……。

「えええええええ~~!!」

私には、得意な楽器も、実力もない。……全く。

* *

「「「「「「…………」」」」」」

愕然とした様子の、ソサエティーのメンバー達。

「ミ、ミツハさん。あ、あなた、どうしてそんなに音楽の才能がありませんの?

普通、幼少の頃から色々と練習しているものでしょう、貴族や王族の娘ならば……。

そ、それなのに、歌も楽器も、この壊滅具合。

ありえませんわ。ありえませんわ……」

みっちゃん、呆然。

他のメンバー達も、口をあけて、固まっている。

何人かは、涙を流している……。

……いや、才能がないのは知ってた。

でも、憐れんで泣く程か?