軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

321 アイドル大作戦 2

胸がないのは、首がないのと同じ。

それと同じで、芸術センスのない貴族の少女は、致命的とまではいかないものの、かなりそれに近いことになるらしいのだ……。

確かに地球でも、縫い物や織物の腕が良き花嫁かどうかを決めるとか、そういう風習のある部族が今も存在する。

というか、日本ですら比較的最近まで、いいトコのお嬢さんはお茶やお花、日舞やお琴、その他諸々の習い事をするのが普通だったよねぇ、確かに……。

あ、私、お花の 嵯峨(さが) 御流(ごりゅう) だけは見分けられるんだよね。友人がやってて、よく見せられてたから。あそこのは、ちょっと特徴があるんだよね。

「どんなに才能がない者でも、子供の頃から努力すれば、何とか『人並みの範疇の、下の方くらい』にはなれるでしょうが! それなのに、どうして!!」

「あ、今まで、学校の音楽の授業以外では、やったことないから……。観たり聞いたりするのは割と好きなんだけど、自分では全然やらない……」

バンッ!

「ひえっ!」

何だか、みっちゃん、激おこ。

「……とりあえず、ミツハさんは演奏会ではチームの紹介役を担当していただきます……」

あ、戦力外通知、キタ!

いや、助かるけど……。

「そして、演奏会とは関係なく、これから週に1回、 ミッチェル家(うち) に来るように。

私の音楽の先生を紹介しますので、レッスンに通っていただきます」

「え?」

「通っていただきます」

「えええ?」

「か、よ、っ、て、い、た、だ、き、ま、す!!」

ひ~~ん!

* *

「……では、皆さんがこれから練習するものの、最終形態である見本を御覧にいれます。

よく見てくださいね!」

「「「「「「は~い!!」」」」」」

うんうん、かわええのぅ……。

「……本当に大丈夫ですの?」

心配そうに、そう尋ねてくるみっちゃん。

まぁ、私の実力を知っていれば、心配するのは当然か。

あの実力で、子供達に見本となるものを見せることができるのかと……。

だが、心配ない! 演奏するのは、私じゃないから!

今日の幼年組のお茶会会場である、この某伯爵家の小ホール。

ここに、お茶会の開始時刻より少し早めにお邪魔して、器材を持ち込んでおいたのだ。

ノートパソコン、バッテリー、そしてお馴染み、プロジェクターを!!

既にセッティング済みで、白壁に映すよう、ピントも合わせてある。

そして、器材に掛けてあった布を、ばっと取る!

「「「「「「…………」」」」」」

無反応。

まあ、何なのか分からないものを見せられても、反応のしようがないか……。

では、これでどうだ!

スイッチ、オン!!

そして、小ホールの白壁に映る、コンサート会場の映像。

……アニメの。

そう。これから天使達の 演(だ) し物の練習をするというのに、その見本に 現実(3 D) の、 日本人(平たい顔族) の映像なんか見せて、どうする!

ここは、 夢の天使(アニメヒロイン) 達の出番に決まってる!

そして映像の中で始まる、夢のコンサート。

盛り上がる映像の中の観客と違い、静まり返ったままの、 こっち側(・・・・) の観客達。

……だが、呆然としていたみんなの眼に、次第に光が宿り、身体が無意識に動き、リズムを取りだした。

言葉が分からなくても。歌詞の意味が分からなくても。

……そんなの、関係ない!

向こう側(・・・・) の観客と一緒に、腕を振り、叫び始めるみんな。

そう。みんなは今、映像の中のコンサート会場にいる。あの、熱狂の渦の中に……。

* *

ぐったりとしてへばっている幼年組のみんなは、エネルギー補給のため、スイーツを食べている。

ソサエティー本体組の方は、幼年組のように映像に合わせて踊りまくったわけじゃないし、幼年組より体力があるから、そこまでは疲れていない。……スイーツは食べているけど。

「……ミ、ミツハさん、あれはいったい……」

当然のことながら、みっちゃんからの追及が。

でも、ちゃんと説明は考えてあるから、安心だ。

「あ、私の母国の新製品です」

うむ、完璧な回答!

「……」

「「…………」」

「「「「「「………………」」」」」」

「そして、私は譜面が読めませんし、うちの国の楽器はここのとは違いますから、たとえ譜面が読めたところで、そのままでは使えません」

実は、音楽をやってる人と話した時に、譜面は読めるようになったのだ。

……譜面の読み書きはできるように……。

ただ、それだけ。

だからといって、演奏ができるようになったわけじゃない。 読めるだけ(・・・・・) 、だ。

なので……。

「だから、みっちゃん達が耳コピして、それを譜面に書き起こす、つまり採譜してもらわなきゃならないんだ」

カチン……。

みっちゃん達が凍り付いた音が聞こえたような気がする……。

さすがに、みっちゃん達もそんな練習はしたことがないだろう。

そして、自分達の音楽の先生に頼むわけにはいかないであろうことくらい理解できないみんなじゃない。

私にはそういう能力が皆無だということは、みんなよく知っている。だから、私にその作業が振られることはない。

うん、みっちゃん達、ガンバ!

……そして、幼年組、ソサエティー本体共に、演奏会を目指しての、練習の日々が始まった。

別に、部の存続を懸けて優勝を狙わなきゃならないわけでなし、本番でミスっても、何も問題ない。ただ、みんなで一緒に楽しめれば、それでいい。

ガチガチに緊張してのミスのない演奏よりも、ミスはあっても楽しそうで元気いっぱいの方が、平民達の受けがいいだろう。

音楽は、楽しんでナンボ。

ある程度の年齢になれば、渋いのもまたいいんだけど、子供達には、自由で楽しいのが一番だ。