作品タイトル不明
319 幼年組
「これが、最終選考に残った者達か……」
ミツハの手に握られているのは、1枚の 名簿(リスト) である。
そこに 記(しる) されているのは、先日募集したソサエティー幼年組の応募者のうち、最終選考に残った者達の名であった。
「王族と公爵家、過激な派閥やみっちゃんちに敵対しているところの子は、可哀想だけど一次選考落ち。君はいい幼女であったが、君の父上がいけないのだよ……。
そして、実家の評判、本人や兄弟姉妹に問題がないか、その子を足掛かりにしてソサエティーに食い込もうとするような身内がいないか、その他諸々を調査・検討した結果、残ったのがこのメンバーか……」
写真はないので、容姿とかは選考基準には入っていない。
姿絵など、お金さえ払えばいくらでも美化して描かれるので、何の意味もない。
まあ、元々、そんなもので合否を決めるつもりなど、ミツハにも他のメンバーにも更々なかったが……。
勿論、それはソサエティー本体においても同様である。
ソサエティーには美少女が多いが、それは元々、貴族の子女は見目の良い者が多いためである。遥か昔からの、トップブリーダー達の仕業によって。
……いや、ただ単に、貴族は美人を嫁や側室にしたがるし、そしてそれが可能……結構簡単に……だというだけのことなのであるが。
更に、貴族の娘には美容や化粧に費やすお金も時間もある。これで平民に負けるようでは、お話にもならない。
「後は、最後の仕上げ、みんなに『この子は駄目!』という者は外すよう、無記名投票をしてもらうだけか……」
勿論、皆での検討会は行った。
しかし、その場では言いづらいこと、真偽の確証がない『悪い噂』程度の悪評を聞いているだけの場合、個人的な、もしくは家同士の関係的なこととか、検討会では発言できないことも多いであろう。
なので、無記名での投票は必須なのであった。
……当然ながら、皆は無記名なので匿名投票だと思っているが、誰の投票かはミツハには分かるようになっている。学校や会社で行われるアンケート調査と同様に……。
怪しい企業から郵送されたり、郵便受けに投かんされたりするアンケート用紙とかも、隅の方に小さく通し番号が打たれていたり……。
「よし、幼女はすぐに大きくなるから、クラブリングはやめよう。
ピッタリに作ればすぐに合わなくなるし、大きめに作ればすっぽ抜けてなくしちゃうだろうからね。
ペンダントとかは、身体が小さくて動き回る幼女にはブラブラして邪魔になるだろうし、何かに引っ掛けて首が絞まったりすると大変だ。
となると、幼女の蛮用に耐え、なくしても簡単に代わりが用意できる、たいして手間もお金もかからないものというと、……やっぱり、アレしかないか……。仕方ないよねぇ、うん……」
「……姉様、わざわざ私達を納得させるために理由をこじつけなくてもいいよ……」
「うん、本当はただ、ミツハがそうしたいだけなんだよね? 小さい子達に、アレを付けさせたいだけで……。そう、アレ……、」
「「ネコミミカチューシャ!!」」
* *
やって来ました、ソサエティー幼年組、第1回お茶会!
ドンドンパフパフ!
場所は、幼年組のひとりのおうち。
ソサエティー本体は毎回みっちゃんのおうちで開催しているけれど、それはソサエティー内でのみっちゃんの権威を高めるためだ。侯爵家だから、場所も広いし使用人の数も多いから、あまり負担にはならないし。
でも、幼年組は、開催場所を持ち回りにしている。
その方が各家の負担が分散されるし、特定の者に権力が集まることを防げるからね。
あくまでも、ソサエティーも幼年組も、中心はみっちゃんだ。なので、幼年組の中で突出した権力者が現れるのは困る。幼年組はみんな平等であり、その忠誠心は幼年組の誰かではなくソサエティーに、そしてその中心人物であるみっちゃんに向かわねばならない。
……それと、毎回美味しい飲食物を提供し、珍しい商品の 斡旋(あっせん) をしてくれる私に、ね。
幼年組には、子供向けの 玩具(オモチャ) やコスプレ衣装とかも注文販売する予定だ。
なので、親から頼まれたものだけでなく、自分のお小遣い……多分、このお茶会で私から購入するために親から貰った分……で、色々と買い込むだろう。
玩具の姫騎士セットとか、妖精セットとか、魔法使いセットとか……。
お姫様セットは、まぁ、似たようなのの本物を普通に持っているだろうから、売れないか。
お茶会とはいっても、ここで出すのはジュースが多い。子供は、紅茶より甘い飲み物の方が好きだろうからね。
勿論、紅茶やホットミルク等も出すけれど……。
お菓子は、ソサエティーと殆ど変わらず、日本のお菓子業界の総力を上げた品々。
子供騙しではなく、『子供にも通用する美味しさ』の品々だ。
今日は、入会式、『お迎えイベント』として、ソサエティーの全メンバーが参加している。
次回からは、当番の者と 希望者(わたし) しか来ない。
指導はするけれど、みんなの自主性を育てなきゃなんないからね。あまり先輩が出しゃばるのは良くない。
いや、私はスイーツの提供や、商品の注文を取ったり引き渡したりしなきゃならないからね!
毎回参加せざるを得ないんだよ、仕方なく! ははは!
幼年組は6歳から12歳までだけど、入会するのは10歳まで。
12歳とかで入会して僅か数カ月で卒業、というのはさすがにアレだし、11歳以上だと、既に大半の者が本体の方への入会申請をしていて、既に入会済み、もしくは不合格でお断り済みだからね。
不合格だった子が再度幼年組の方に申し込んで来ても、選考作業が二度手間になるだけだ。
そういうわけで、幼年組は、最低でも2年以上は在籍できる。自分から脱退しない限りは。
洗の……仲良くなるには、充分な期間だね、うん。
そして、この幼年組、何か無理矢理婚約させられそうになっている子の、駆け込み寺になったみたいなんだよねぇ……。
生まれてすぐに婚約、なんてのは貴族の世界じゃ普通のことだけど、それらの大半は家同士の繋がりを強めるためのものだ。
でも、中には立場の強い者が無理矢理、とかいうのもある。
……そこに、先日の『女神様降臨事件』だ。
うん、50過ぎの寄親のジジイが、孫くらいの歳の寄子の娘を10歳にもならないうちからツバを付けて予約、なんてことが通る世界だから、……そういうケースで親が娘を守ろうとして必死な場合は、優先した。
当たり前だろ!
勿論、私の独断ではなく、ちゃんと検討会で審議したよ。
反対意見はゼロだったね。
みんな、貴族の娘としての義務は充分に自覚しているけれど、それでも、守りたいモノは守りたい。……自分達が救われた者は、特に。
現状で、ソサエティーやその下部組織に入会することに表立って反対できる者なんか、いやしないよ。
そういうわけで、 ソサエティー(うち) は、一部の 狒々爺(ひひじじい) に恨まれることになったのであった。
……いや、それくらいのデメリットは、何でもない。
我がソサエティーは、幼女と少女と女性の味方なのだだだ!!
* *
幼年組の、第2回お茶会。
今日は、ソサエティーからは当番であるセルミアちゃん達3人しか来ない。
……それと、参加希望者である、私。
幼年組のみんなも、私がヤマノ子爵領の商品の提供者だということは親から聞かされているだろうから、この国の人らしく見えなくても、気にせず寄って来てくれるはず。
第1回はソサエティーのメンバー全員が来たから、如何にもな貴族顔の美少女タイプ、つまりみっちゃん達に人気が集まって、『平たい顔』の私にはあんまり寄って来てくれなかったのだ。
……しかし、今日は、当番の3人以外は私しかいないだろう。
ならば、お菓子の提供者だということを それとなく強調(・・・・・・・) すれば……。
くふ。
くふふふふ……。
よし、用意してきたネコミミカチューシャを配るか……。
「……って、何でソサエティーのメンバーが全員来とるんじゃ~~い!!」
「だってミツハさん、『希望者は参加してもいい』っておっしゃったじゃないの。だから、妹がいない子、美味しいお菓子を食べられる日が2倍になることを狙った子、他家との繋がりを広げたい子、その他諸々で、こうなることは当たり前ですわよ?」
みっちゃんに、何を言ってるのか、というような呆れた顔でそう言われた。
うがあああああああ~~!!