軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

318 報 酬

「「…………」」

私もサビーネちゃんも、見詰め合ったまま、無言。

そしてサビーネちゃんは、かなり御機嫌斜め。

……というか、自分の希望が通らなかったということへの失望や腹立ちではなく、私をサビーネちゃんの居場所に縛り付けることができなかったということに対する悲しみ、という感じかな、コレ……。

私が定期的に自分の部屋に来るように。黙って勝手にいなくならないように。そういう『縛り』が目的で、あんな要望にしたのかも……。

あ~、居たたまれねぇ~~!!

「……と、とにかく、食べ物の定期補充以外のは駄目! 食べ物も、2~3カ月だけ!

他に、もうひとつだけ受け付けるから、危険がなくて私の負担が少なくてあまり無茶じゃないものを考えといてね」

「む~……」

サビーネちゃんはあまり納得していないみたいだけど、数日の徹夜仕事の報酬程度に、あまり過大な要求は受けられないよ。

もし、また何かお願いしなきゃならないことができた時、どんどんパワーインフレというか、エスカレートしちゃうから。

そのうち、雑貨屋ミツハと領地邸に自分の個室を用意しろだとか、いつでも私が日本邸に送り迎えする『王宮~日本邸 無期限』の定期券を用意しろだとか言われかねない。

……『 定期(・・) 券』なのに、期間が無期限というのは、いったいどういうことなのか……。

歳を取らない謎の少女ミツハと共に、胸がぺったんこの 奇怪な身体(・・・・・) を手に入れるべく、旅に出る……、って、うるさいわ!

誰が『奇怪な身体』やねん! それは『機械の身体』だろうが!!

はぁはぁはぁ……。

いや、まあ、とにかくサビーネちゃんは良い子なんだけど、私に関することでは、私が一歩引くと二歩踏み込んでくるからなぁ……。

それに対して、コレットちゃんにはそういうところが全くない。

それは、サビーネちゃんが王女様なのに対して、コレットちゃんは平民であり私の家臣だから、という身分的なもののせいじゃなくて、余裕があるからだ。

……そう、もし私がこの地を去ることになった場合、自分は絶対に一緒に連れて行ってもらえる、という自信というか、確信があるから。

それに対して、サビーネちゃんは『その場合には、自分は置いて行かれる』と思っているだろうから、余裕がないんだよね、この件に関してのみは。

……それは事実であり、どうしようもない。

さすがに、一国の王女様を拉致するわけにはいかないだろう。

この国が他国からの侵略やクーデターとかで争乱になり、王族が皆殺しにされるとかいう事態となり、王様からサビーネちゃんの亡命を頼まれた時、もしくはサビーネちゃんが自分の意志で亡命を決心した時とかを除いて……。

まぁ、サビーネちゃんは頭が良くて、王族としての自覚がある立派な王女様だ。

私がいなくなって地球の文明による恩恵を全て失い、ソーラー発電システムや電化製品も全て使えなくなっても、ちゃんとやっていけるだろう。

私と会う前の状態に戻るだけだから、どうということはないはずだ……。

「うおっ!」

何事!

いきなりサビーネちゃんが殴りかかってきたよ!

……って、涙目?

あ、もしかして……。

「……声に出てた?」

あああ、ぽかぽかと殴るのをやめてくれない……。

やめて!

胸部装甲が薄い私には、その攻撃は効く!!

* *

……何とか、脱出に成功。

でも、次に会う時が怖い……。

よし、次にサビーネちゃんと会う時には、コレットちゃんを連れて行こう!

コレットちゃんがいれば、お姉さん振りたいサビーネちゃんは、冷静に振る舞うのだ。色々と痩せ我慢をしてでも。

ルーヘン王子がいる時もそうなんだけど、さすがにこの話の時にはルーヘン王子に同席してもらうわけにはいかない。

コレットちゃんは、自分の報酬については、おそらく貯蓄に回すだろう。

いつか、ここぞという時に使うために。

そしてそれは、絶対に贅沢関係じゃない。

おそらく、コレットちゃんが貯めた報酬ポイントを使う時というのは……。

……怖い考えになってしまった……。

* *

「ミツハ様、ソサエティーに幼年組を作るというのは如何でしょうか?」

「え?」

ソサエティーのお茶会で、メンバーのひとり、ダラツ伯爵家次女のセルミアちゃんがそんなことを言い出した。

「あの、幼年組って……?」

「はい、ソサエティーに加入するにはまだ幼過ぎる、 穢(けが) れを知らない貴族の少女達を集め、私達の下部組織として教え導き、女神様への信仰心と、我がソサエティーへの忠誠を教え込むのです。まだ何も知らぬ真っ白な心に、彫刻刀でゴリゴリと刻み込むように……」

「詳しく!!」

うん、セルミアちゃんは、可愛い顔をしていて、悪魔だったよ……。

セルミアちゃんが言うには、今、ソサエティーから勧誘の声が掛かれば、侯爵家どころか、公爵家、王族からでも幼女が飛んでくるらしい。

……勿論、両親公認で。

だから、ある程度の年齢の者ばかりで、既に定員一杯のソサエティー本体ではなく、その下に幼年組、つまりソサエティーの対象枠外の者を受け入れる組織を作ってはどうか、というわけだ。

まだ世俗の垢にまみれていない、純真で、白いカンバスのような幼女達。

そう、そういう幼女達を、洗脳……支配下……プティ・スール……、と、とにかく、教え導くのだだだ!!

「……ミツハさん、あなた、何だか御自分の欲望と煩悩にまみれていらっしゃらない?」

みっちゃんが、 胡乱(うろん) な眼というか、呆れたような眼で私を見ているけれど、そんなこたー、どうでもいい!

「セルミア様、功績ポイントは期待していただいてもいいですよ!」

「おお! では、みんなで案を出して、もっと煮詰めましょう!」

* *

そして、幼年組は『ソサエティー幼年組』、通称『幼年組』と称することが決まった。

皆が『ソサエティー』という名に憧れているため、他の名称にすると落胆されるだろうという意見が大勢を占めたからである。

対象年齢は、6歳から12歳まで。

13歳の誕生日の前日に、卒業する。

そう、幼年組は、成長すればみんなが自動的にソサエティーに加入できるという、エスカレーター方式ではないのだ。

卒業と同時にソサエティーに入れるのは、選ばれたごく一部の者のみ。

その他の者は、その後、幼年組のOBとして。そしてソサエティーの賛助会員として籍を残し、ソサエティーからの情報提供や、ヤマノ子爵領とレフィリア貿易からの優遇措置を受ける。

いきなり全てを断ち切って放り出したりはしないよ。

そんなことをすると、ソサエティーに対してヘイトが集まる可能性があるからね。

なので、ソサエティーに入れるのがごく一部の例外であり、卒業するのが普通であること。

そして、卒業後も充分なメリットが得られ、みんな仲間であるということを強調するのだ。

幼年組のお茶会は、ソサエティーとは別の日に行い、ソサエティーのメンバーが持ち回りで、あるいは子供好きで出席したい者が数人ずつ参加して、教え導く。

……素敵やん……。

夢がどんどん、広がリング!!

「ミツハさん、あなた、毎回出席するおつもりでしょう……」

みっちゃんが何か言っているけれど、そんなこたー、どうでもいい!

幼年組の子には、お茶会の時にはネコミミカチューシャを付けさせよう!

お揃いの服とか、……あ、ビニールプールで水浴びとか!

スク水は、小学校の指定店で買えばいいか。量が多いと、早めに発注しなきゃ……。

くふ。

くふふふふ……。

「……さん、ミツハさん!

……駄目ですわ、全く聞こえていませんわ……」

* *

ミツハは、自分が末っ子であるため、弟や妹が欲しかったのは分かる。

……しかし、以前、自分にはコレットちゃんとサビーネちゃん、ベアトリスちゃん達がいるから、とか言っていたのは、いったい何だったのであろうか……。