軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

295 切られる少女と切れる少女 4

「おお、集まってる集まってる……」

私がウルフファングの 本拠地(ホームベース) に転移すると、広い訓練場にたくさん置いてあった。

……爆弾とか、砲弾とか、火炎瓶とかが。

爆弾や砲弾は既に安全装置を解除してあるから、種類別に分けた上、それぞれの間隔をすごく広く取ってある。事故ると大変だからね。

これらの一部は、買い付けの時に私も同行して、転移で輸送した。

その時にはまだ安全装置は機能していたけれど、こんなものが買えるのは遠方だから、まともに運ぶには色々と問題があったからねえ。危険度的にとか、法律的にとか、経費的にとか、時間的にとか……。

中には、ウルフファングの知り合いの傭兵組織から買ったものもあるらしい。

砲弾というのは口径20ミリ以上のものを指すらしいけれど、さすがにそれは機関砲から撃ち出したものでないと威力不足だろう。今回の使用には、ちょっと苦しい。

なので、ここにあるのは口径5インチ(127ミリ)くらいのやつ。

戦艦主砲並みの口径15インチ(38センチ)とかのがあればいいけど、そんなのは手に入らないだろうから、仕方ない。

爆弾も、400キロとか500キロとかの大きなのはない。40~50キロくらいの、小さいやつだけ。

まあ、そんなデカい爆弾は売ってくれないよねぇ。マッコイ爺さんでもいなきゃ……。

それに、今回用意された爆弾や砲弾は、全部旧式の安いやつばかりだ。

ウルフファングが先進国の最新武器や高価な特殊砲弾を入手できるはずもなく、手に入れたものの大半は、内戦やら宗教絡みやらでドンパチやってるところからの横流し品とかだからねえ……。

一部は、国際的な武器商人からも買っているらしいけれど、彼らも15インチ砲弾や500キロ爆弾とかはあんまり扱わないよねえ……。

ま、時間もなかったし。

「バンカーバスター、燃料気化爆弾、ナパーム弾、デカい爆弾や大口径の砲弾とかは手に入らなかった。

……というか、最初からそんなのが手に入るとは思っていなかったけどな。

その分、火炎瓶をたくさん揃えてやったぞ。うちの奴らのお手製だ。使う時には、うちの者が 松明(たいまつ) で一気に点火してやる。

……で、本当にいいのか、手伝いを出さなくて……」

「うん、要らない。今回は、私ひとりでやるから」

「…………」

隊長さんがそう言うのは、私の心配が半分で、あとの半分は、また異世界に行きたいだけだな。

それはまあいいんだけど、でも、今回は私ひとりでやる。

ヤマノ子爵家の家長に対する暗殺未遂。

そして家臣が傷付けられた。……私の命の恩人にして、大親友が……。

なので、やるのは私だ。

私が、私の意志で、私にしかできないやり方でケリを付ける。

「……そこを何とか!」

「しつこいなあ……。どんだけ異世界で活躍したいのよ……。

そもそも、私がどういうやり方をするか、見当は付いているんでしょ。手伝いようがないじゃん」

「くっ……」

無念そうな顔をしても駄目だよ。今回は、他の者には手伝ってもらうつもりはないから。

「……まあ、仕方ねぇか……。

あ、約束通り、爆弾や砲弾は全部使い切れよ。安全装置を解除した爆発物なんか、危なくて置いておけねぇからな。

一応、間隔をあけて置いてあるが、そんなの気休めにもならねぇからな。

絶対、触るなよ! いいか、絶対だからな!!」

「ダチョウ倶楽部かな?」

「Ostrich Club? 何だ、それ? Ostrich(ダチョウ) を食べる会か何かか?」

「いや、何でもないよ。気にしないで……」

砲弾については、今回は炸薬や信管が詰まっている弾頭部分さえあれば良く、砲身から撃ち出すのに必要な装薬や雷管が入っている 薬莢(やっきょう) 部分は要らないんだけど、下手に取り外し作業なんかやって暴発させたら大変だし、外した装薬の始末にも困る。

だから、薬莢部分も付けたままで使う。装薬も、少しは威力の足しになるだろうし。

今は、時差的に、アルダー帝国は夕暮れ時。

高札と空中散布のチラシで予告した時間だ。

……よし、攻撃開始だ!

「 作戦開始(ミッション・スタート) ! 火炎瓶、全弾点火! 急降下爆撃機、発進!!」

* *

帝都上空、ほぼ帝都城の真上に出現。

……10発の 5インチ(127ミリ) 砲弾を身体の周りに引き連れて。

攻撃は、如何にして砲弾や爆弾を敵の頭上へと運ぶか、というのが問題なのだ。

撃沈される危険を冒して、艦艇が敵地へと肉薄。

撃墜される危険を冒して、航空機が敵地へ。

大金を掛けて、高価な長距離ミサイルを撃ち込む。

しかし、もし被害を受けることなく、お金も労力も必要とせずに敵の頭上へと砲弾や爆弾を簡単に、かつ正確に送り届けることができるなら?

そして敵には、迎撃機も対空ミサイルも高射砲もないとすれば?

……そう、とても安上がりで簡単に、敵の中枢部へと攻撃を加えることができる。

このように……。

自然落下開始。

5インチ砲弾の群れを引き連れて、夜空を舞う。

連続転移で、位置を少し修正。帝都城の真上へ。

そして、帝都城から少し離れたところにある大きな建物の屋根の上へ、私だけ連続転移。

いや、そのまま一緒に落ちたら、爆発に巻き込まれるからね。

まあ、爆発に巻き込まれなかったとしても、普通に潰れて死ぬ。

それに、成果確認はしなくちゃならないから、安全な場所から弾着確認をする必要がある。

「さん、にい、いち、弾着、今!」

ドンドンドンドンドン!

爆炎と共に、砲弾の炸裂音が響く。

砲からの発射に較べ、弾速が遅いから威力がイマイチ。

それに、何といっても、城攻めに5インチでは口径が小さすぎる。

ここは、せめて12インチは欲しいところだ。

口径が2.4倍ならば、砲弾の重量は約14倍。威力は桁違いだ。

……しかし、無いものは仕方ない。

人は皆、配られた手札で戦うしかないのだ!

……あ、出てきた出てきた。

いくら5インチの砲弾でも、それなりの効果はある。破壊効果も、そして精神的な効果も。

お城からは、わらわらと人が飛び出している。兵士も、非戦闘員も……。

よし、偉い人は秘密の地下室か何かに避難しているだろうし、その他の人達は建物から出ただろう。……多分。

第二次攻撃隊発進の要ありと認む。

連続転移!

今度は、小型航空爆弾数発を伴っての急降下……、じゃない、自然落下爆撃。

石造りっぽい帝都城には大した破壊効果はないだろうけど、心理的なインパクトは大きいだろう。

今回も、効果を確認するためにさっきと同じ場所から観測。

……弾着、今!

よし、次は火炎瓶だ。

既に点火されちゃってるから、嫌でも使わなきゃならない。

連続転移!

火焔直撃弾(かえんびん) の弾着を、 三度(みたび) 、同じ場所から観測。

夕闇の中、燃え上がる帝都城。綺麗だねぇ、絵になるねぇ……。

ま、石造りの建物の外側に火炎瓶をぶつけても簡単に消火されそうだけど、見栄え重視だ。

よし、次は目標を変えよう。

夕暮れ時に貯蔵庫の中にいる者はいないだろうし、こんな大騒ぎの中で兵舎の中にいる兵士もいないだろう。

今度は、砲弾と爆弾を混ぜて、一度で済ませよう。

食料や物資の貯蔵施設と思われるところの上空へ、連続転移!

次に、無人であろう兵舎に、砲弾と爆弾をプレゼント!

そしてあとは、軍に物資や食料を納入しているという大店の倉庫に、火炎瓶の雨!

……イマイチ、物足りないなぁ……。

やはり、石造りのお城相手だと、戦艦の主砲弾や500キロ爆弾とかでないと……。

あ、そうだ!

「帝都城の石材、ついて来い! 連続転移!」

どごおおおおぉん!!

帝都城に、岩石落としをプレゼント!

使ったのは帝都城の建材の一部だから、後で調べても、何をされたのか分からないだろう。

使われたと 覚(おぼ) しき武器の欠片とかも、一切発見できないからねえ。

巨大な質量兵器による、石造りの城の破壊。

そうそう、城攻めは、こうでなくっちゃねぇ……。

あ、商人の倉庫、延焼しそうだ。イカンイカン、さすがに帝都を焼け野原にするわけにはいかないよ。

ダブル連続転移!

どばしゃああああぁ~~!!

よし、海から持ってきた海水で、倉庫の荷を押し流すと共に完全消火!

地球の海水だと何かあるとマズいから、持ってきたのはこの世界の海水だ。

だから、連続転移を2回やって、持ってきた。

今日は、この辺で勘弁しといたろか!

いや、これは負けた方が言うのがセオリーだけど、他にいい台詞が浮かばなかったんだよ!