軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

256 誕生日 6

合図からしばらく経って、邸の外が騒がしくなってきた。

うん、来たな……。よし!

ステージに上がって、マイクを取って、と……。

『皆様、ただいま、当邸の前を「女神の祝福の 山車(だし) 」が通過いたします。ひと目、御覧ください!』

よしよし、みんな、わいわいと門の方へと移動し始めた。

私も、行ってみよう。

……いや、みんなの仕事は信頼しているけどね。

キタキタキタァ!

軽装甲機動車を先頭に、幌を外したトラックが2台続く。

全ての車両が電飾で飾り付けられ、キラキラどころか、ビカビカと光を放って輝いている。

デコトラどころの騒ぎじゃない。

トラックは、自前の発電機とバッテリーだけじゃ足りないからと、別途、発電機とバッテリーを追加搭載している。

乱舞する七色の光の奔流と、光を乱反射するミラーボール。

スピーカーから流れる、派手な音楽。

軽装甲機動車の上部ハッチからは、上半身を乗り出したコレットちゃんとノエルちゃん、リアちゃんの、ヤマノ家メイド少女隊の面々。……全員、天使の羽と輪っかを着けて、夜店で売ってる電飾玩具やら魔法少女の『光るステッキ』やらで完全装備。

それに続く2台のトラックは、幌を外して飾り付け、傭兵ギルドで依頼を出して雇った若手の女性傭兵達による女神や天使のコスプレ軍団。

ゆっくりと進む軽装甲機動車とトラックの周りは、同じく若手の男性傭兵達による着ぐるみ軍団が取り囲むようにして歩いている。

稼ぎが良くなくて苦しい連中を優先して雇ったし、仕事が終わったら、貴族の食い残しで良ければ 無料(ただ) で飲み食いさせてやる、って言ったら、みんな、飛びついてきたよ。

まぁ、食い残しって言っても、別に残飯ってわけじゃないからね。

取り皿に取られずに大皿に残っている料理なので、貴族達が食べたのと同じ状態で残っているわけだから。

つまり、貴族がパーティーで食べる料理が食べられるというわけで、そんな機会、一生に一度もあるもんじゃない。しかも、あのヤマノ料理の新バージョン、出店料理付き。

……そりゃ、食い付くか……。

トラックの荷台からは、女性達の手に握られた玩具から 光線(ビーム) が放たれて観衆たちの身体に当たり、そこに光の星形やハート形が描かれる。

お菓子を入れた小袋を撒くという案もあったけど、それはやめた。

うん、邸の外の道を進んでいるから、普通の見物客が大勢いるんだ。そんなところでそんなのを撒いたら、奪い合いで阿鼻叫喚の地獄になりそうな気がしたから。

クルマの下とかに潜り込まれたら、 人死(ひとじ) にが出ちゃうからねぇ。

外が明るくなって、大きな音や音楽が鳴り響くものだから、どんどん人が集まってきた。

近隣の邸には、前もって『デビュタント・ボールで、少し騒がしくしますので……』って挨拶廻りして記念品を配っておいたし、そもそも近隣の邸の大半は貴族家なので、その多くはパーティーに招かれているから、近所からのクレーム、という点での問題はない。

うむ、なかなか、いやいや、滅茶苦茶好評だなぁ、電飾行進。

着ぐるみ軍団に子供達が群がり、纏い付いてる。そして着ぐるみの若手傭兵さん達が、ノリノリでその相手をしてやり、子供達を抱きかかえてやったり、ぶんぶんと振り回したり……。

これで、ベアトリスちゃんとの約束のふたつめ、『電飾行進』、クリア!

あとは、最後のアレだけだ。

……よし、ウルフファングから出してもらった運転手さん、事前に何度か歩いて覚えてもらったルート……邸をぐるりと一周するだけだから、ゴブリンでも簡単に覚えられる……を正確に辿り、無事、出発点である近くの男爵家の倉庫に帰り着いたな。

そこは、小さな男爵家の邸なんだけど、領地の特産物をここに運んで集積、王都の店に卸すということをやっていて、邸に大きな倉庫が併設されているんだ。

普通の貴族は、王都邸にそんなものを併設するなんてみっともないことをするはずがないけれど、その男爵さんは外聞より実利、領民のために領地産のものを王都で少しでも高く売り捌くことを重視したわけだ。自分達が馬鹿にされることを恐れずに。

……うん、つまり、『立派な領主』ってことだね。

そこに、菓子折を持ってお願いに行った。少しだけ倉庫を使わせて欲しい、って。

で、一発OK。

そりゃ、『雷の姫巫女様』が直々に頭を下げて頼みに来て、しかも内容がボーゼス伯爵家御令嬢のデビュタント・ボールのために必要不可欠のこと。そして自分達にとっては、せいぜい倉庫の中身を一時的に少し移動させるくらいで、大した手間でもない。

派閥的なことや家格の問題で、とてもボーゼス家と対等な交流が持てるような立場ではなく、今回のパーティーにも招かれるようなことのない男爵家にとって、こんなまたとないボーゼス家との接触の機会を逃せるはずがないよねぇ。

そういうわけで、私の手土産とパーティーへの招待は喜んで受けてくれたけれど、礼金として差し出した金貨は固辞されて、無事、倉庫を借り受けたわけだ。

……そりゃまぁ、少しばかりの金貨より、『厚意により、無償で協力した』って事実の方が、後々のためには何千倍も役に立つよねぇ。

うん、しっかりした当主さんだ。

今回使用したのは、トラックと言っても、民間会社が使う輸送用の大型トラックとかじゃない。軍用の小振りなヤツなので、大型の荷馬車用に造られた倉庫の入り口は何とか通れる。なので、前日から借りた倉庫に 電飾(デコレーション) 済みの車両を転移で運び込み、今日は午後からコスプレ軍団にみっちり稽古をつけていたわけだ。

ウルフファングのドライバーには、昨日のうちに行進経路を歩かせて覚えさせておいた。

そして電飾行進の車両が倉庫に入った瞬間から、時計で時間を計る。

「さぁ、皆さん、中庭の会場に戻って、御歓談の続きを……」

うん、お客さん達には、中庭で飲食しながら観てもらう。

集まっていた観衆達も、バラけ始めた。

……でも、それはそれぞれがいい 位置(ポジション) を占めようとしての動きであって、決して自宅に帰るためじゃない。

うん、大騒ぎになって王都中がパニックに陥ることを警戒して、事前に街中にお触れを出しておいたのだ。各ギルド支部、王宮前の 高札場(こうさつば) 、駆け出しの傭兵を雇っての触れ回り、その他諸々の方法で。

よし、そろそろか。

超小型トランシーバーを、ポチッとな……。

「アンリミテッド・ファイアー・ワークス、こちら子爵。発動5分前!」

『了解だ! いつでも行けるぜ! 大きな大会のに較べるとかなりショボいけど、この世界の連中に 中林煙火店(うち) の、いや、日本の花火の何たるかを知らしめるには充分なだけのネタを仕込んだ。我ら花火師の、命の輝きを見せちゃるわい!!』

あ~、職人馬鹿は、世界が異なっても、共通かぁ……。

お客さんはだいたい中庭に戻り、飲み物のグラスを片手に、さっきの電飾行進について興奮した口調で話している。

時計で、時間を確認。

うん、そろそろ電飾行進に雇った傭兵達が大急ぎで私服に着替えて、見物できる場所に移動し終わった頃だ。

……あの連中に見せてあげないというのは悪いし、その中には、コレットちゃんとノエルちゃん、リアちゃんも含まれているわけだからね。

さすがに平民であるメイド少女隊のみんなをパーティー会場に連れてくるわけにはいかないから、傭兵のお姉さん達と一緒に見物してもらって、パーティー終了後の『 残り物賞味会(にじかい) 』においてお腹いっぱい食べてもらう予定なのだ。

……よし、5分経過!

トランシーバーを手にして……。

「アンリミテッド・ファイアー・ワークス、こちら子爵。計画発動、…… 撃ち方始め(ファイエル) !」

『了解! 見てろよ、嬢ちゃん!!』

よし、これで事態は私の手を離れた。

あとは、プロの腕に任せるのみ。

……『ファイエル』はドイツ語としておかしい? 正しくは『フォイアー』か『フォイエル』だ?

ふはは、誰がドイツ語だと言った!

これは、銀河帝国語だ!

……いーんだよ、細けぇこたー!