軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

204 ソサエティー大作戦 1

「チェリリア様、どうかなさいましたの?」

『ソサエティー』のお茶会で、元気がなさそうなひとりの令嬢に、みっちゃんが心配そうに声を掛けた。

うん、さすがみっちゃん、心配りが……、って、今回はちょっと違う。

チェリリアちゃんは、 この会(ソサエティー) では珍しい、男爵家令嬢だ。

この会は、大半が伯爵家令嬢で構成されている。設立の『本当の目的』に沿ってね。

侯爵家は元々数が少ないし、ミッチェル侯爵家とは対等の関係だったりライバル派閥を率いていたりして、ミッチェル侯爵家の下につくみたいなことはしたくなかったのか、大半は招待を辞退してきたし、『ソサエティー』創設後は、規約により、誰も加入できていない。

公爵家や王族は、下手に口出しされたり主導権を取ろうとされては堪らないから、初めから招待していない。ま、『侯爵家以下の、下級の者達の集まりですので』ということで。

そして、一応は『身分差など関係ない、親睦会』という建前上、爵位の割には羽振りの良いところや、親も本人も高潔な人格である男爵家令嬢と子爵家令嬢を数名、加えてあるのだ。

いや、子爵以下なのは私だけ、というのもアレだしね。

勿論、子爵というのは私本人の爵位であって、みんなが想像しているであろう、私の親の爵位、もしくは王位継承順位とかとは別ではあるけどね。ここにいる令嬢達は、みんな、本人が爵位を持っているというわけじゃないんだから。

そういうわけで、声を掛けられた男爵家、子爵家の令嬢達は、喜んで参加してくれたわけだ。

そりゃまぁ、伯爵家や侯爵家の令嬢主体の会に招かれたなど、とんでもない名誉だし、上級貴族の令嬢と仲良くなれれば、お家にとって計り知れないメリットとなる。本人がどう思おうと、親が参加させるに決まっている。

……そして今、その成果が表れようとしているのであった。

「……い、いえ、何でもありませんわ……」

やや陰のある顔でそう言って、少し身を引くチェリリア・ド・ウェンナール男爵令嬢。

しかし、それくらいで引き下がるみっちゃんではなかった。

「嘘! 誓ったのではなかったのですか、我ら『ソサエティー』は、困った者を見捨てない、共に助け合う仲間だと!」

お~、みっちゃん、役者やのぅ……。

「で、でも、個人的な色恋沙汰とかであればともかく、いくら貴族の娘とはいえ、自分自身には何の力もない、ただの小娘である私達になど、どうしようも……」

よし、今だ!

「お待ち下さい!」

話に割り込んで、ずいっと進み出た。

そして、これに備えて肩に提げていたショルダーバッグから、あるものを取り出して、チェリリアちゃんに差し出した。

「……矢?」

そう、それは、弓で射る、矢であった。それも、小さい弓用のやつである。大弓の矢なんか、ショルダーバッグには入らない。

「はい。それを、折ってみてください」

「……え? は、はい、分かりました……」

ばきっ!

よく分からないながらも、私に何か考えがあってのことであろうと思って、素直に矢を受け取り、折ってくれたチェリリアちゃん。そして……。

「次に、これを纏めて折ってください」

そう言って、今度はショルダーバッグから3本の矢を取り出して、チェリリアちゃんに渡す。

「はい……」

そしてチェリリアちゃんは再び矢を受け取り、纏めて折ろうとして力を入れた。

ばきっ!

折れるんか~い!

身体、鍛えすぎと違うんか~~い!!

「「「「「「……」」」」」」

愕然とした私の様子から、何か手違いがあったらしいと察したみんなと、どうやらやらかしてしまったらしいと悟ったチェリリアちゃん。

「「「「「「…………」」」」」」

だが、心配ない! こんなこともあろうかと……。

「次に、これを纏めて折ってください」

そう言って、ショルダーバッグから残りの6本の矢を全部取り出した、私。

4本や5本では万一のことがあるかもしれないので、念の為、10本持ってきた矢の残り全部を一気に出したのである。

戦力の逐次投入は愚の骨頂、各個撃破の絶好の獲物である!!

予備の矢をたくさん入れておいて、よかったよ……。

ずいっ!

そして、差し出した6本の矢を受け取った、チェリリアちゃん。

「これを纏めて折ってください」

そう、先程の3本の矢のことは、なかったことにした。

「は、はい……」

そう言って、腕に力を入れたチェリリアちゃんであるが、今度は折れなかった。

「このように、1本1本は弱い矢でも、6本集まれば強くなります。そして私達『ソサエティー』の仲間は、6人以上います。ならば、ひとりでは無力であっても、みんなが力を合わせれば、私達の力は無敵です!」

「「「「「「おおおおおおお!!」」」」」」

よし、チョロい!

そして、さっき6本の矢がミシッと嫌な音を出し、チェリリアちゃんが慌てて力を抜いたことに気付いた者は、何人くらいいただろうか……。

チェリリアちゃん、身体、鍛えすぎ!!

* *

「……では、男爵領が飢饉のため領民に餓死者が出る可能性があると?」

「は、はい……。近隣の領地も、うちほどではないにしても、不作であることは変わらず……。

なので、他領から食料を買い付けることもできず、そもそも価格が跳ね上がっており……。

更に、遠くの領地で買い付けても、輸送にかかる時間と費用、そして食糧不足の他領を通過する際に襲われ、奪われるのは必定。このままでは、領民達が……」

チェリリアちゃんの話を聞いて、暗い表情のみんな。

そう、それは、いつ自分達の領地に降りかかってもおかしくはないことなのである。

冷害、病害、虫害、日照りによる水不足、戦争による田畑の荒廃、その他諸々……。

よくあること。

仕方のないこと。

自分達には、どうしようもないこと……。

「では……」

そう言って、被っていた日除けの帽子を脱いで、逆さにしてテーブルの上に置いた、みっちゃん。

そして、自分が身に着けていた指輪とネックレスを外して、その中へ入れた。その帽子を、ずいっと私の方へと押し出して……。

「これで、ヤマノ領の船のチャーターと、陸路輸送の商隊と護衛を雇えないかしら? それと、レフィリア貿易からの、食料の購入を……」

そして、私も首からペンダントを外し、みっちゃんの帽子の中へ入れながら……。

「勿論、可能です。『ソサエティー』の仲間のためならば、船の運航計画が狂おうが、小麦や芋、とうもろこし等の納入予定が滅茶苦茶になろうが、大した問題ではありません」

「え……」

みっちゃんと私が、何を言っているのか分からない。

そんな顔で、口を開けたまま呆然としているチェリリアちゃん。

そして、当然ながら……。

かちゃ

かちゃかちゃ

じゃらり

しゅるん!

次々と装身具が外される音がして、それらがみっちゃんの帽子の中へ入れられる。

うん、この流れで、そうならないわけがない。

何しろ、ここにいるのは、誇り高き貴族の令嬢にして、友情で結ばれし仲間達。

我ら、『ソサエティー』の同志達!!

……そして、素敵な友情物語に憧れる、世間知らずの チョロいヒロイン(チョロイン) 達。

いくら貴族の娘が身に着けていたものとはいえ、所詮は子供の 装身具(アクセサリー) 。平民から見れば高価ではあるが、貴族から見れば、そう大した値が付くようなものではない。それも、中古品で、急ぎの投げ売りとなれば……。

しかし、地球でカットと研磨をやり直し、石座や台座を作り直せば、そこそこの価格にはなるだろう。

ま、元々、赤字は覚悟だけどね。これは、儲けるための作戦じゃないから。

これはあくまでもパフォーマンスであり、売名行為だ。『ソサエティー』が民衆の味方であり、『ソサエティー』にちょっかいを出す者は民衆の敵、という図式を国民に刷り込むための……。

そう、貴族や王族、大商人達が『ソサエティー』に手出ししたり、取り込んで利用しようとすると、すぐにその情報がリークされて、国中で非難が集中するように仕込むための……。

何しろ、民衆の味方である可愛い少女達と、それを利用しようとする汚い大人達だ。もし何かあった場合、情報を一般民衆に大々的にリークすれば、どうなることか……。

ふは。

ふはははははは!

「ふふふ。そー、 冴(さ) えてーるのだよ、私は!」

小さな声でそう言った私に、横からコレットちゃんが口を挟んだ。

「そぉ? 最低(さいてー) の詐欺師にしか見えないんだけどなぁ……」

うん、最近、コレットちゃんが駄洒落に開眼した。

そんなのに開眼しなくていいから!

異世界人の美少女なんだから、開眼するなら魔法とかにしてよ!!