作品タイトル不明
143 パーティー続きで体重ががが!
パーティーである。
前回のパーティーから1週間しか経っていないけど、私がこの国でやることといえば、情報収集と物産店の店番しかない。
物産店の方は先日ようやく開店して、お客さんもそこそこ来てくれる。
……勿論、偵察と品定め、そして私と話をするために貴族も来るけれど、下級貴族中心で、それもそんなに大勢来るわけじゃない。
何でも、貴族は自分でお店に買い物に行ったりはしないらしく、店の者がめぼしい商品を持ってお屋敷に行き、その中から選んで購入するらしい。
いや、勿論普通の食材とか消耗品とかは店で買うらしいけど、それはそういう担当の者が仕入れるのであって、貴族様御本人が街へ出掛けて店を廻る、というものじゃない。
つまり、自分で街中の小さなお店に行く、ということがプライドに反する、ってことらしい。
中には、そういうのをあまり気にせず来てくれたフットワークの軽い貴族もいるけれど、そういう人達は大半が下級貴族で、伯爵が数人混じっていた程度。
その人達とは色々と話して、お土産に日本製の『この世界にあってもおかしくはないけれど、かなり珍しいもの』をプレゼント。勿論、店に並べているものとは違う、非売品だ。世間体より、うちに自分で足を運ぶことを優先してくれたんだから、それくらいのお礼はするよ。
主(あるじ) の代わりに偵察に来た家臣の人とかには、お土産は無し。
他の貴族達には渡しているのに自分には貰えないらしいと気付いた家臣達が、『え、うちには?』って顔をしているけど、そんなのは知らない。わざわざ自宅を訪問してくれた貴族家当主に対するお礼の品なんだから、家臣を寄越した貴族には渡さないよ。
そういうわけで、アクセサリーやお酒、絹製品やお菓子等、この国の技術力や生産性の向上には繋がらない商品を少量販売する、ごくときたましか開店しない怠惰なお店がオープンしたわけだ。
勿論、仕入れや転売を目的とした購入はお断り。あくまでもここはアンテナショップであり、大量販売や利益目的の店では……、って、違う! アンテナショップじゃなくて、私がひとりなのに高級ホテル暮らしをしないという理由付けのための、単なる隠れ蓑に過ぎないんだった!
まぁ、そういうわけで、お店もオープンしたんだけど、大抵は閉まってる。今日も、1週間振りのパーティー出席なので、店は開けていない。いくらパーティーは夕方からとはいえ、女性は準備に時間がかかるのだ。直前まで店を開けていたりはしない。
そしてやってきた、陸軍系の伯爵家のパーティー。
いや、私としては海軍系の方がいいんだけど、海軍系ばかりに出ていると、ミッチェル侯爵様の立場が悪くなるらしいから、仕方ないんだよね。そして今日は、勿論ミッチェル侯爵様も御出席。
陸軍は、海軍が船で運ばないとうちの国には来られない。そしてここの船にとっては超長距離航海で、そんなに多くの兵士を運べるはずもない。
剣と槍と弓矢、そして幾ばくかのマスケット銃を装備した、母国から遠く離れて孤立した僅かな数の歩兵など、大した脅威ではない。なので、陸軍にはあんまり興味がないんだよなぁ……。
でも、まぁ、政府を動かすのは別に海軍系の貴族ばかりじゃない。陸軍系も取り込んでおいても、邪魔にはならないだろう。……ミッチェル侯爵様の顔も立てなきゃなんないし。
……で、ひとつ、困ったことがある。
最近、数日置きにパーティーに出ているんだけどね。
私、お酒を飲むわけにはいかないから……敵地でひとりなのに、酔っ払うわけにはいかないでしょ……、当然、会話の合間に飲むのはジュースで、あとは料理を食べまくるしかないんだけど。
スカートのホックがはめられなくなってきたんだよね、届かなくて……。ドレスも、何か、お腹周りがキツくなったような気が……。
ヤバい! ヤバ過ぎるううぅ!!
そして、なぜ胸回りはキツくならない! あああああああっっ!!
はぁはぁはぁ……。
ま、まぁ、今はそれは置いといて。
今日は、ミッチェル侯爵様のホームグラウンド、陸軍系の貴族が多いパーティーだ。侯爵様の顔を立てて、愛想を振りまいておこう。
……って、あれ? 何か、おかしなグループが……。
この国のパーティーは、うちの国と同じく、地球で言うところの『アメリカンスタイル』だ。日本式のように、最初にみんな揃って乾杯をしてからスタート、というのではなく、到着した者から飲み始めて、というスタート形式。だから、少し遅れてくる者もかなり多い。
なので、今到着した貴族がいても全然おかしくはないんだけど……、そのグループは、少し目立っている。
普通は、パーティー会場にはいるのは貴族家の当主ひとりか、妻か息子を伴っている程度である。それが、そのグループは貴族とその息子らしき16~17歳くらいの者に加えて、供の騎士らしき者を4~5名伴っている。
おそらく騎士達も貴族ではあるのだろうけれど、皆、かなり若い。多分爵位は低いか、もしかすると無爵の者達かも知れない。それだと、今日のパーティーの出席者としては 些(いささ) か格が低い。
あ、いや、そりゃ私も子爵だけど、私は別!
そして、それ以上に不自然なのは、騎士っぽい恰好の者達が帯剣していることだ。
警備の者達が他の部屋に控え、そして邸の外にも警備兵がおり、更に客達が連れてきた護衛達が別室でお酒抜きの飲食物を振る舞われている。なので、パーティー会場にいる貴族達が帯剣していたりはしない。狭い会場内では剣は邪魔になるし、武器の持ち込みは『主催者を信用していない』という意味となり、失礼な行為にあたる。
なのに、帯剣した者達を引き連れているということは、アレしか考えられない。
……この人達、イキリDQNだ!!
大した実力もないくせに、イキって偉ぶっているという、アレだ。
他の招待客の皆さんも何だか微妙な様子で、自然な態度のつもりなのに意識しているのがバレバレで、少し遠巻きにしている感じ。
うんうん、みんなに敬遠されて避けられているのを、『自分を恐れ、怖がっている』と勘違いしている、典型的なアレだよね。こういうのに対する方策は、これしかない。
……避けて、無視。近寄らない。
もし近寄ってきたら、逃げる。
うん、もう、これしかないよね。君子、危うきに近寄らず。
いや、『君子』って言う程御立派な者じゃないけどね。
……って、来た! こっちへ近付いてきたよ!
よし、料理コーナーへ逃げよう!
この国では、『料理の皿を手にしている者には話し掛けてはならない』というマナーは基本的なものなので、さすがにこれで話し掛けてくる者はいないだろう。このマナーを無視するというのはかなりの非礼行為なので、その場合には、ムッとした顔をしてその場を離れればいい。
特に、女性が男性からそういうことをされた場合は、敬意を払うべき相手だという扱いをしなかったということになり、平民扱いされたということで、手にしたグラスのお酒を浴びせかけても許されるくらいらしい。
うむ、料理コーナーにはついてこないな。やれやれ……。
それからも、私が料理の皿を置いて他の招待客と話していたら、いつの間にかすすっと近付いてくるイキリDQN達。その都度、話し掛けられる前にさっとその場を去って料理コーナーへと退避する私。何か、一種のゲームのようになってきたよ……。
と言うか、私、目を付けられて狙われてる? 国外利権目当てで、空気の読めない馬鹿が遠慮も配慮も無しで直接私に突っかかってきてるの? そして、主催者とか侯爵様とかはそれをブロックしてくれないわけ? 逃げ回る私の行動は他の招待客達にも丸分かりだと思うのに、援護してくれる人は皆無なの? みんな、女の子の危機より、面倒事に関わるのを避ける方を優先?
くそ、今日の出席者達は、もう信用しない! さっき宝石の取引について打診してきた伯爵、あの話は打ち切りだ!
……とか思ってイラついていたら、油断した!
いつの間にかイキリDQN親子に近付かれ、料理コーナーに向けて離脱しようとしたら、帯剣している連中に進路を塞がれていた。
そして、息子らしき方が私に向かって話し掛けてきた。
「ミツハ嬢、胸が無くて残念ですね!」
「「「「「「なっ…………」」」」」」
大きな声で私に掛けられた、その、あまりにもあんまりな言葉に、ホール中の人達が凍り付いた。
……勿論、私も。